他人の不幸は蜜の味〜シャーデンフロイデ

程度の違いこそあれ、人はより良く生きたいと願っているのでは?と思っている。そのために、自分を知り、他者を知り、人間というものを知りたいのだろう。

今日、読書をしていて、劇団時代の恩師・石塚克彦の「人間を知っている」レベルの高さにあらためて驚いた。

石塚との付き合いは20年以上前なので、「脳科学的には」とか「認知科学的には」などと言われるずっと前のこと。

あらためて、劇団ふるさときゃらばんを率いて作・演出を担い、創立から数年で組織を躍進させたその根源となる彼の力に感銘を受けたのだ(こういう過去の体験が深みを増し感謝できるって幸せなことだと思う)。

彼は舞台演出の時、よく「他人の不幸は蜜の味なんだぜ」(←「…だぜ」は彼の口癖)と指導していた。

たとえば、小さな町の商店街のおばちゃん数人が、他人の噂話をしているシーンだ。

ミュージカルなので数人いるおばちゃん役が、全員本物のおばちゃん(ある程度歳を重ねている女性)であることはまずない。極端な場合、4人グループなら3人は20代だったりする。

そんな時、20代の彼女たちは人の噂話をしている演技ができない。普段は無自覚で他人の噂話を楽しんでいる自分たちであったとしても。いわゆるメタ認知をし無自覚を自覚的にし、素の自分と一旦切り離し、芸にまで落とし込むことができないのだ。

この「他人の不幸は蜜の味」、認知科学用語で「シャーデンフロイデ」と名付けられている。根源的な感情として脳に備わっているので、「恥ずかしい」とか「自分って人としてどうなの?」と悩まなくていいという。

まさに石塚の言う「他人の不幸は蜜の味」ではないか!

ネット上で思わず他人の不幸記事、たとえば大企業の不祥事とか、芸能人の不倫が発覚したとかに、脳は反応してしまい、クリックするという仕掛け。

この脳の反応に自覚的であれば、くだらないゴシップ記事を延々とサーフィンし続けることもなくなる。

話を石塚に戻すと、何十年の時を超えて、人間という生き物が避けられない反応をよく知っている人間のもとで20年近く修行させてもらったのは幸運だった。

ほかにも「マイ石塚名言集」はいろいろあるのでまたの機会に(笑)。

「自分を知る」のと同時に「人間というものを知る」という旅は、なんとも面白いものだ。

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