ぼくの仕事のベース

ぼくが社会に出て最初に仕事をしたのは、石塚克彦という劇作家・演出家の元でだった(あの業界を「社会に出た」と言っていいのかどうかわからないが)。結局18年間、彼と仕事をした。

石塚は若いころ紆余曲折あった末に、「地域をつないでいたムラ芝居が風前の灯だ」「だからムラ芝居を復活させて全国巡演するのだ」ということになって劇団ふるさときゃらばんを創立した。

その辺りは石塚の死後出版された『ミュージカルへのまわり道』(農山漁村文化協会)に詳しい。

劇場に足を運ぶのは町や村の農家のおばちゃんや土建屋の社長、のちには大都市のサラリーマンといったいわゆる堅気の人々。彼らが劇場に身を置いた一時、大いに泣き笑いして明日への活力とするのだ。

そんな石塚の元で育ったぼくは、フツーの日本人が「ああ、わかる」「身につまされる」「リアルだ」という反応が返ってくるのが仕事だ、となったのだと思う。

ぼくの仕事の成果物を他人が見て、「芸術的だ」などと言おうものなら、ぼくは「まだまだだな」と深く反省し「次こそは」と再び動きはじめるのである。

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