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岸田首相爆発物襲撃事件 「ローンオフェンダー」か? 被選挙権をめぐる問題 動機の解明は問題ではない マスコミは”タブー”なき真実の追及を!

 和歌山県で15日に発生した岸田文雄首相への爆発物襲撃事件の現場で取り押さえられた男は、今のところ背景にある組織や団体の影はうかがえない。

  警察当局は、昨年の安倍晋三元首相銃撃事件から、「ローンオフェンダー」(単独の攻撃者)とよばれる者からの事件を警戒していた。

  松野博一官房長官も17日の会見で、今回の事件について、

 「いわゆるローンオフェンダーによる違法行為の発生は懸念されるところだ」

(1)

 と言及する。

  元警視庁公安部の捜査官で、一般社団法人「日本カウンターインテリジェンス協会」の稲村悠代表理事によれば、海外で起きる銃乱射事件の多くは、ローンオフェンダーに当てはまるという(2)。

  こういうデータがある。無差別殺傷事件を起こした52人を調査した、2013年の法務省法務局総合研究所の報告によると、事件を起こした51人が男性で、犯行時に39歳以下が37人を占めた。

  月収が20万円を超えたのは3人だけ。親しい友人がいたのも3人だけだった。また、大半が自身の境遇にいらだちを抱えていたとも(3)。

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被選挙権をめぐる問題

 

 事件で逮捕された犯人は、被選挙権の年齢制限に不満を持っていたという。被年齢選挙権の年齢要件の引き下げを訴える動きは各地でみられる。

  日本の被選挙権年齢は25歳や30歳。一方、国立国会図書館の資料などによると、議会下院の被選挙権年齢はイギリスやフランスなどで18歳。また世界の6割以上の国で21歳から立候補できる(4)。

  今回の統一地方選挙をめぐっては、被選挙権年齢引き下げを求める若者らが国への違憲訴訟提訴を見越し、”あえて”立候補の届出を出す動きが相次ぐ。

  若者の政治参加を促す団体の代表の能條桃子さん(25)は神奈川県知事選挙に立候補届を出し、年齢を理由に不受理になった。今後、統一地方選挙で同様に不受理になった仲間らと、国を相手に集団訴訟を起こす予定だという(5)。

  能條さんらの

 「立候補年齢を引き下げるためのプロジェクト」

 は18日、事件を受けて声明を発表。

 「現時点で被疑者の動機や目的は不明で、拙速に立候補年齢の引き下げと犯行とを結びつけることはあってはならないが、どんな主張であっても、実現のために暴力的な手段が用いられることには断固として反対する」

(6)

 とした。

動機の解明は問題ではない


  犯罪が起きると、刑事ドラマだけでなく、マスメディアも容疑者の「動機」について、盛んに追及する。しかしながら、動機の解明ほど、”無意味”なものはない。

  社会学の用語に「動機の語彙」というものがある。アメリカの社会学者チャールズ・ライト・ミルズによって提起された。これによると、動機とは、人間の心の内側にあるものではなく、他者とのコミュニケーションのなかで語られるものとする(7)。

  どんな社会にも、動機に関するさまざまな「類型的な語彙」がある。人々は、それらのすでにできあがっている語彙を用いて、他人や自分自身の行為を解釈し、説明し、その行為を理解しようとする(8)。

  しかし実際には、人間の心のなかは見えないし、複雑であり、そもそもつねに明確な動機に基づいて行動するとも限らない。結果、”やった本人がどう考えているか”よりも、”周囲が納得できる”動機が語れるのだ(9)。

マスコミは”タブー”なき真実の追及を!

 

 気になるのは容疑者に以下の言動だ。

  容疑者は判決を不服として大阪高裁に控訴した際は、昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件を踏まえ「既存政治家は統一教会の組織票で当選している」と選挙制度や現状の政治に対する不満を訴えていた。

(10)

  しかしながら、筆者など、長年、「メディア研究」に身を置いてきた人間にとっては自民党と統一教会との関係など、”当たり前”の話しだ。

  さらにいえば、最近はジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏の性加害スキャンダルが国際的な問題となっている。それにもかかわらず、既存メディアは一切、触れようとはしない。

  さらに問題なのは、日本外国特派員協会で”勇気ある”告発をした岡本カウアンさんに、インターネット上で”心無い”中傷が溢れていることだ。

  問題なのは、統一教会といいジャニーズといい、”その程度”の問題が「タブー」としてまかり通ってしまう、日本のメデャア環境の実態だ。

  奇しくも、昨今、ChatGPTの”是非”が話題となっている。しかし、現状、”タブーだらけの”日本のマスゴミよりもAIの方が信用できることは間違いないようだ。


(1) 山田祐一郎・宮畑譲「こちら特報部 「ローンオフェンダーか」東京新聞、2023年4月18日朝刊、24項

(2)山田祐一郎・宮畑譲、2023年4月18日朝刊、25項

(3) 山田祐一郎・宮畑譲、2023年4月18日朝刊、25項

(4) 西日本新聞「被選挙権年齢巡り各地で訴え」2023年4月19日付朝刊、3項

(5)西日本新聞、2023年4月19日

(6) 西日本新聞、2023年4月19日

(7)ミルズ、C.W.(1971)田中義久訳「状況化された行為と動機の語彙」(C.W.ミルズ、I.L.ホロビッツ編、青井和夫ほか監訳『権力・政治・民衆』みすず書房)、p.345

(8) 川端亮「新宗教」伊藤公雄・松本満[編]「はじめて出会う 社会学はカルチャー・スタディ」有斐閣アルマ、2006年

(9)津田正太郎「ネットを支配する「シニシズム」「冷笑主義」という魔物の正体」現代ビジネス、2019年12月1日、https://gendai.media/articles/-/68782?imp=0

(10) 産経新聞「木村容疑者、現行政治に不満か 「統一教会の組織票で当選」と訴訟で主張」Yahoo!ニュース、2023年4月13日、https://news.yahoo.co.jp/articles/368287b35d76b207b94f0acd73b0f639552a23db

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