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ネヴァーエンド・ワンダーランド(1)

都会の真夜中はいつだって明るい。
それはこの街に住む人間なら当たり前に知っていること。
どこに行っても人の騒めきや、エンジン音を轟かせた後をついてくる。等間隔で並んだLEDの街灯が己を照らす。
虫の鳴き声が静かに聞こえるような、そんな寂れた夜はやって来ない。誰かの息さえ感じないような、真っ暗さは何処にも。
けれど夜が深いと感じるのは何故なのだろう。
上を見れば、いつだって煌びやかに彩られたネオンで明るい空がある。いつだって見るのは明るい濃紺だ。星のささやかな明るささえ、混じって見えないような。中心地へ行けば建物の間隔の狭さに息苦しさを感じる。
けれど、それが実は嫌ではない。
高田馬場や渋谷の駅前はごみ溜めばかりで、はっきり言って汚いの一言に尽きる。
視線を僅かにあげれば、眩しさで目が眩む。終電過ぎまで賑やかで明るくて、まるでここはワンダーランドだ。
けれどそんなの、実はまやかしだ。
何時迄も誰かの話し声やバイクの飛ばす音が街に響いている。時折、部屋の時計の音が聞こえる時が唯一の都会の静けさだろうか。

それが、私に安堵を与える。

私、野上伽奈はずっとそう。
ひとり、
一人、
独り。
……孤独。
私がいっとう大事なもの。

#小説 #ネヴァーエンドワンダーランド

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