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多目的トイレの写真を撮ることは簡単ではない

CivicTech & GovTech Advent Calendar 2023 3日目の記事です。
今日は、一般社団法人イトナブ石巻のPenが担当します。
私は、宮城県石巻市において、多目的トイレの情報をWebマップにする「みんなのトイレマップ」というサイトを長い間制作に取り組んできました。そして嬉しいことに、今年の夏に「みんなのトイレマップ」を正式にリリースすることが出来ました。
このみんなのトイレマップは、石巻市内の140を超える箇所の多目的トイレの情報を載せております。基になった冊子の情報からもう一度再調査を行って、Web版にはさらに、多目的トイレの縦横の寸法や多目的トイレのドアの幅や、ドアが固定できるかの有無、そして多目的トイレ内の写真として、全体部分、便器の部分、手洗い場、多目的トイレのドア、そして建物の入口が写真によって分かるようになっています。こうした情報を身体に障害がある方や、出先のお手洗いに不安を抱えている方に向けて発信し、当事者は事前に、お手洗いに関して調べて確認することで、どんな方であっても街に出掛けられるツールになればと思い、このプロジェクトに取り組んでいます。

どうして多目的トイレを可視化するのか

もしかしますと、11月25日に行われたCodeforJapanSummitでも、セッションを行うことができたので、印象に残っている方もおられるかもしれません。https://youtu.be/X-YDISsWks0?si=pqR4wesJYYkXJrbh

このみんなのトイレマップの目的は、あくまで多目的トイレを可視化することだけです。たとえば場所によっては、ここ車椅子の方に厳しくないかと思うことも、一個人として思うことはあります。しかし、その点を口に出すことはこのプロジェクトの目的から離れてしまうことになるでしょう。私自身も、障害を抱える一人として感じている点ですが、社会における相互理解において、弱いからと行ってすべてを理解してもらえるとは思うべきではないと思っています。確かに障害を抱えていれば、社会の支障は生じ、各自は大変な思いをしています。しかしだからといって、いつもあわせて貰うだけでは、障害者の社会への参画は進まないと私は思っています。それで、みんなのトイレマップのように、可視化することにより、選択肢を増やすことによって、当人や介護者が自分に行けそうなところを選ぶことによって、相互に理解が生まれて、結果誰もが暮らせる街になったらよいと考えていました。

可視化すること、ましてやお手洗いの写真をWebに載せることは簡単ではない

上記に書いた志に基づいて、このプロジェクトを進めているのですが、実際に多目的トイレを可視化するために、調査をし、写真をWebに載せたいと思っても、実はハードルが高いところもあります。この点に関しては、先日のサミットのセッションで少し扱いましたが、実はもっと話したい部分がありました。
もちろん、文面で再調査の依頼をし、お電話(私は言語も障害があるので電話リレーサービスを使います)で依頼を促すのですが、簡単に許可をくださる店舗や施設はあります。一方で、きちんと手順を踏まないと許可がもらえないケースも多々あり、どんなケースがあって、どのようにお願いしたかをまとめてみました。

ケース1:決定権はオーナーにある

コンビニといった、小さな店舗においてよくあるパターンですが、店舗の店長様にプロジェクトについて説明し、許可を得ようとしても、店長には決定権がなく、全てオーナーの判断になってしまうというケースです。
この場合は、私はオーナーが店舗に来るお時間を伺い(大抵、早朝か深夜)その時間にもう一度電話をし、1からプロジェクトの説明をして、許可を取るようにしました。

ケース2:店長よりもエリアマネージャー

チェーン店においては、店長を管理するエリアマネージャーを置くお店があり、エリアマネージャーの許可がないと、何も出来ないケースがありました。
この場合は、エリアマネージャーの連絡先を聞き、個別にアポを取ってプロジェクトを説明していました。加えて、疑問だったのは同じ市内なのに、エリアマネージャーが何人もおられるケースがあり、「エリア」って思いたくもなりましたが、その都度説明をし許可を取るようにしていました。

ケース3:「本部に聞いて」

店長であっても、多目的トイレを可視化し、Webに写真を載せることをご自分で決めることが出来ないと、「本部に聞いてください」と言われます。店舗によって、本部の連絡先は教えてはもらえません。
こういう時は、そのチェーン店の公式サイトのお問い合わせフォオームから問い合わせをします。問い合わせをしますと、広報の方が対応してくださり、許可の有無を教えてくださいます。

ケース4:「お客様がいない時間に撮影してください」

店舗によっては、多目的トイレの情報を提供することや写真を撮ることへの許可をくださるのですが、万が一お客様が写ってしまうことを不安に覚えられるところもありました。
忘れもしません。冬の朝一番に撮影しに行ったことを。品だししている店内の中を多目的トイレまで案内されて、無事に調査することが出来ました。良い思い出です。

ケース5:公共施設は役所に申請

公共施設や、公園の多目的トイレは行政が管理しています。それで無許可で進めることがないように、担当の部署に行き、プロジェクトについて説明します。その後必要な書類を出すように指示を受け、作成し申請すると許可を得ることができます。

ケース6:「とりあえず、あることだけ、載せて欲しい」

これが、一番困るケースです。みんなのトイレマップの目的は、多目的トイレを可視化することで成り立つところもあります。とりあえず、多目的トイレがあるだけでは、車椅子ユーザーの方が一人で行ったときに、本当に使用できるのかが不安になります。それでこのケースはNGとさせていただきました。

なぜ多目的トイレを設置するのですか?

今になってみれば、笑って流せる思い出でありますが、最中は本当に苦しむ日々もありました。昨年は、一人暮らしを始めた時期でもあって、自分に置きかえて考え、もし自分に「あなたの家のトイレ写真撮らせてください」と言われたらどう思うかも考え、置きかえて考えたときに、難色を示してしまうのも、理解することができました。この記事には書けませんが、電話口でショッキングなことも何度か言われたりもしています。全ての方が障害がある方に理解を示すことは難しいときもあります。しかし私は改めて次の点を問いたいです。
「何の為に多目的トイレ設置しているのですか?」
多目的トイレとすれば良いという話ではなく、多目的トイレを利用する人も来て欲しいと思ってもらえるような社会になっていけばいいなと私は思っています。冒頭で「相互理解」について触れていますが、障害者も健常者も自分を通すのではなく、お互いにお互いのことを理解し合うことが大切なのかも知れません。本日12月3日は国際障害者ディです。障害がある方も含めて社会において弱いとされている方々に、周りが理解を示し合うことによって多様社会が作られることを望んでいます。

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