_オフサイドのいちでこっちまでボールもってこい

桜庭巧美になりたい

最近、「BE BLUES!~青になれ~」っていうマンガを読み直してた。

それについて語りたいから誰か聞いてほしい。聞いてるふりでもいいから。

あ、たいしてネタバレってほどの話はしないけど、そういうの気にする人は読むの控えた方がいいかも。一応言ったからな。

この作品は、週刊少年サンデー連載中の激アツサッカーマンガなんだけど、本当におもしろくて、既巻までは3回ほど読み直してる。好きな巻はもう繰り返し何度も読んでると思う。読んだことない人はマジで読んだ方がいい。

どんなストーリーか簡単に説明すると、主人公である一条龍は、将来プロ入り間違いなしと期待されるほどの天才サッカー少年だったんだけど、ある日事故で再起不能とも言われるような大ケガをしてしまう。リハビリを続け、中学生の頃にはなんとかサッカー復帰を果たすも、そこにかつての天才的なプレーの面影はなく、一条龍はそれでも、葛藤しながらも諦めずに夢に向かって努力し、仲間とともに成長していき、徐々にその才能を開花させていくっていう、もう王道のスポ魂もの。

ひとたび読み始めれば、主人公である一条龍のサッカーへのアツい想いに、努力に、才能に、成長に、思わず応援したくなってしまうのは間違いない。

ただ、個人的にいちばん好きなキャラは、そんな魅力全開の主人公ではない。主人公のライバルにして、後に高校ではチームメイトとなるもう一人の天才、超絶テクニシャンにして超問題児、桜庭巧美だ。

実際今回はこいつの話しかしない。いま桜庭の話以外はしたくないんだおれは。飲み会でよくわからん仕事の話とかしないでくれ。桜庭の話だけさせてくれ。

こいつがもう、ほんとに性格がめちゃくちゃ悪い。自分勝手で、わがままで、最悪なのだ。ひとたびボールを持てば、味方にパスはしないし、自分がいちばん上手く、いちばん偉いと思い込んでるし、チームプレーもあったもんじゃない。いつまでも一条龍を敵視しているし、何かとつっかかってくる。主人公の周りの主要キャラからもめちゃくちゃ嫌われてる。

あえてもう一度言うが、そんな桜庭が大好きでしょうがない。もう好きすぎてつらい。

過剰な自信と、その自信を支える本物の才能が愛しい。才能と対照的な性格の悪さや、周囲との摩擦、それでも己を貫き孤立する不器用さが、たまらない。

彼の自分勝手で、自己中心的で、承認欲求の塊を地でいくような姿に、発言に、それはもう憧れてしまった。もはやなりたい。桜庭に。そうだ。なりたいのだ。彼のように。

おれも「いくぜ雑魚ども…」「俺様を…尊敬しな!!」って言いながら超絶テクニックでディフェンスを抜き去りたい。「あいつが桜庭だ!!」ってモブに言わせたい。

そんな愛しの桜庭の特に好きなシーンは、28巻、選手権予選決勝、聖和台戦の後半。前半で体力を使い果たし、もうバテバテの桜庭が敵陣のゴール前で座り込んでしまう。桜庭贔屓の外人監督が「もうワンプレー見守ろう」とか悠長なことを言ってる中、桜庭は立ち上がり、ゴール前でひとり「ボールをよこせ」と言わんばかりに手をクイクイってするのだ。クイクイって。

自分でボールをもらいに動くわけでもなく、どう考えてもオフサイドの位置でボールを欲する桜庭に、主人公龍は「まさか…そこまで運んでこいってか!?」と桜庭のめちゃくちゃ身勝手な意図に気づく。周囲も「何様だ!」とぶちギレる中、「面白い!」とのたまう外人監督。わかる。

敵陣のゴール前で動かずワンプレーのためだけに力を蓄える桜庭。文句を言いながらもどうにかこうにかボールを桜庭のラインまで運ぶチームメイト。そこにようやく通る桜庭へのパス。潰しにかかる敵チームのディフェンス。

そして。

華麗なワンタッチでディフェンスを抜き去る桜庭。

29巻につづく。そこからはもう29巻を読んでくれ。

これがもう、桜庭ファンの自分にはたまらないシーンで、試合会場のほぼ全員が桜庭にぶち切れてる中、あいつならなんかやってくれると監督と主人公と、そして読者だけが信じてる。そうじゃないとたまり得ないフラストレーションと、起き得ないカタルシス。たまんねえ。おれも手をクイクイしてえ。

そしてその試合をきっかけに、しかし時間をかけて、大きく変わり始める桜庭。

自分がいちばん上手いと心から信じ込んでいた彼が、はじめて自分より上手いやつがいることを認めて、もっと上手くなるためにはどうすればいいかと監督に懇願する32巻の桜庭に熱くなるおれ。いやちょっと引っ込んでてくれおれ、いまいいとこだから。

あと、この32巻では特に印象的なんだけど、桜庭は飼っている犬と毎日サッカーをして遊んであげてる。優しい。惚れる。しかもその犬、桜庭のドリブルするボールを追いかけるのが大好きでめちゃくちゃ可愛い。超絶テクニックで転がされるボールを追いかける犬がバテると「終わりかクソ犬」とか悪態をつきつつ、「年取ったなァテメェ…」とかちょっと寂しさを漂わせる桜庭は本当に狂おしいほど愛しいから全人類に薦めていきたい。

もう、ほんとにおれは桜庭が好きすぎて桜庭になりたいのだ。

おれも仕事でミスったって、「てめーらが俺様の活かし方を、ミスったってことだな!あやうく自分の才能に疑い持つとこだったぜ」って言いたい。言わせてくれ。自分の才能だけ信じさせてくれ。

そして「俺様を…尊敬しろ!!」を口癖に生きていくから今後ともよろしくたのむ。

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