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すずめの戸締まり感想🚪🔑


⚠︎君の名は。・天気の子・すずめの戸締まりのネタバレあり

○事前知識
ネタバレを踏まないようにTLを薄目で見ていたので、事前知識は
・椅子が喋る
・とにかく芹澤が性癖に刺さる
この2つだけでした どちらも大正解〜◎

○芹澤〜〜!
本当によかったところばかりなのだけど、唯一よくないところを挙げるとしたら、重いテーマだし作り手のメッセージが伝わってくる作品なのに芹澤のキャラデザやら人物像やらがよすぎて観終わったあと芹澤の話しかできないところ 震災というテーマだから友達と感想話すときにどこまで突っ込んでいいのかと迷うというのもあるけど、三角関係になってる恋愛映画でも観たんか?ってくらい芹澤と草太について語ってたので楽しかったです あなたはどっちが好きですか??

芹澤、見た目はチャラいのに教職を取っているというギャップがいいですよね あと教員採用試験に現れなかった草太を案じて家を訪ねてきたり鈴芽を岩手まで車で乗せていってくれたりという面倒見のよさ!いい先生になりそう!でもわたしはチャラい人苦手なので稔さんの方が好きです(松村北斗違い)

○ストーリーへの全体的な感想
・世界観
夢の中で常世を見たこと、祝詞、タイムパラドックス(今作では椅子関連かな)が君の名は。と繋がっていて
人柱の要素が天気の子と繋がっていて、監督の世界観好きだなあと思いました
神道的な世界観なのかな?この分野の知識がないのでわからないんですけど現世と常世を媒介する職業が絡むお話大好きなので起源とか意味とかもうちょっと詳しくなりたい

・伏線がすごかった!
叔母との二人暮らし、真っ黒に塗り潰された絵日記、「人の生き死になんてただの運(ニュアンス)」という鈴芽の台詞、だんだん明らかになっていく断片から鈴芽の過去が予想できてしまう過程、胸が痛かった

あと、愛媛の民宿に泊まってたとき
鈴芽「寝起きが悪い人はどうすれば起きると思う?」
チカ「キスすればいいんよ」
みたいな台詞があってフラグじゃん〜♡最後には鈴芽がそうやって草太を助けるのね〜♡って思った
で、岩手に行って要石になった草太を見つけて、でもなかなか引き抜けないというシーン、わたしは内心ヤバTのハッピーウェディング前ソング状態(伝われ)でした、感動的なシーンなのにごめんな

・心理描写すごかった!
ぐっときたところたくさんあったけど特に取り上げるとしたら
幼少期に叔母に引き取られて引っ越してきたのに宮崎弁じゃないのは鈴芽なりの抵抗だと思うの、実は心当たりがある
わたし小学生のとき結構遠いところに引っ越ししたんだけど、本当に引っ越したくなくて納得できないままだったのと、引っ越し先の学校に馴染めなかったのもあって、今思い返すと若干強情に標準語を貫いてた 弟はすぐ方言に染まったのに自分はなかなかマスターできないなあとぼんやり思ってたんだけど、あとで自分の中で整理がついてから、あれはそれまで住んでいた土地とそこでの人間関係への執着から、この土地の人間になりたくないという抵抗だったんだと気付いてぞっとした 方言って自分がどこの人間なのかを表すものとして本当に象徴的なものだから
鈴芽もまだ受け入れられていないのかなと思った

○RADWIMPS!!
・10 years 10 songs
草太さん曰く、扉を閉めるためにはそこに住む人たちのことを想像する必要がある
岩手に辿り着き草太を助けた鈴芽が最後の扉を閉めるとき、3月11日朝の、たくさんの人たちが「行ってきます」とドアを開ける場面が連なっていくシーンがあって、でも「ただいま」はなくて
ここでRADが毎年3月11日に公開している曲たちが浮かんで泣いてしまった

『白日』
「ねぇ今すぐ飛び出してよ あの人の上に立ってよ 渡しそびれた『さよなら』は誰に運んでもらえばいい? 交わしかけの約束は誰と果たしたらいい?」

『空窓』
「喧嘩したまま別れた友や 家を出たきり帰らぬ兄や 言えないままのありがとうごめんが宙ぶらりんのまま今日まで来たよ」

『かくれんぼ』
「聞きたかった『ただいま』が私の中で今 何百何千とこだましているよ」

一貫して、あの日言えなかった、聞けなかった何気ない言葉と行き場のない思いを歌っている
映画館でもらった冊子に、新海さんがRADのこの被災地に向けた活動に影響を受けたと書いてあったんですよ もしかして「ただいま」を言えなかった人たちを思わせるあのシーンはこの曲たちから着想を得て……?と真偽はわからないですが個人的に思っています

・君の名は。サントラ
個人的胸熱ポイントなんですけど、君の名は。からRADにハマったので、君の名は。のサントラ(『糸守高校』)を使ってくれたのがうれしかった
当時サントラをかけながら勉強してたのですぐ気付いたよ(歌詞ありの曲だと意識が持っていかれて勉強が進まないタイプなのでサントラがちょうどよかった)
普通に映画のBGMとして流れたのではなく、鈴芽が見ていたテレビの天気予報のBGMとして使われていたので、メタ的?でお洒落な演出だなと思いました
高校生の鈴芽が2011年の回想で幼稚園生くらいだったので2022年の設定なのかな
だとしたら、君の名は。が公開されて数年経ち、テレビのBGMで使われている世界線、、

・新海作品とRADの共通点と相乗効果の話
新海作品って、世界の危機と恋が同じくらいの重大さとして話が進むじゃないですか
で、RADももとから恋のスケールがでかいんですよね たとえば

『有心論』
「誰も端っこで泣かないようにと君は地球を丸くしたんだろう? だから君に会えないと僕は隅っこを探して泣く泣く」

『ふたりごと』
「俺が木星人で君が火星人だろうと 君が言い張っても
僕は地球人だよ いやでも仮に木星人でも
たかが隣の星だろ?一生で一度のワープをここで使うよ」

新海作品の主題歌になるときは相乗効果でさらにスケールでかくドラマチックになってて大好き
君の前前前世から僕が君を探し始めちゃうのはいうまでもなく、
『カナタハルカ』の「でも恋は革命でも焦燥でも天変地異でもなく君だった」とか いいよね〜〜

○災害観の変化についての話
3作連続で災害がテーマだけど、災禍を美しく描いていることは共通していて、でも災害に対する切り口は全て異なっているなと思いました

君の名は。は、入れ替わりと時空のずれを使い、数年前に隕石で消えた街を救う話
天気の子は、災害を止めるか・陽菜を救うかという二択を突きつけられ陽菜を選ぶ話
すずめの戸締まりは、現在にある危機の解決が鈴芽の幼少期の被災経験に収斂していく話

監督のインタビューによると、君の名は。では災害をなかったことにしたという批判があり、それを踏まえて後の2作ができたらしく
どうしても瀧くんに感情移入してしまうから三葉たち助かってくれ〜って思いながら観てたけど、言われてみればそうか〜単に災害を防ぐのとなかったことにするのとでは意味合いが全然違うもんな、なかったことにしたいけどできない被災者の方々も観るんだもんな〜と思って 隕石という現実味の薄い災害を選んだことでそこのバランスを取ろうとしたんだとは思うけど

そこから天気の子では世界を変えてしまったという事実への比重が大きくなったのかな
(最後の再会のシーン、陽菜のもとへ向かう帆高はどう声をかけようと悩み、東京を水没させちゃったけどこの辺り昔は海だったんだし、この世界はもともと狂っていたんだしと若干正当化っぽく、陽菜だけでなく自分にも責任を感じさせないようなベクトルの考え方だったのが、会った瞬間、でも!と思い直し「僕たちは確かに世界を変えてしまった、でも僕たちは大丈夫だ」という結び)

今作では、新たな地震は防げたたけど東日本大地震とそれによりお母さんを亡くしたことは動かない事実としてあって、でも鈴芽の中では整理がついていなくて
平たく言えば、母がいなくなったことの受容=すずめの戸締まり、に焦点が絞られていたのかな
"受容"は平たく言い過ぎな気がするけどぴったりな言葉が見つからないな 再意味付け?
夢の中で、小さい鈴芽は常世で髪の長い女性(母だと思っていた)を探し求めて彷徨っていた(=母の死を受容できていない)
クライマックスで、その女性は未来の自分だったとわかる(未来の自分を求めている=生きたいということ?) 心配になるほど生への執着がなく死ぬのはこわくないと言っていた鈴芽が…………
こう考えると過去に対する心情が綺麗に、ポジティブに再意味付けされているなと思いました

ボーイミーツガールの物語だと男の子が救ってくれがちだけど、鈴芽が出会った人たちの力を借りつつも自分で過去に向き合って戸締まりをするのがすごくよかった、女の子が強い物語が好き
現在の危機はともかく過去の自分の心は自分で救うしかないもんね

総括として、3作の中で一番納得感のある終わり方だなという印象でした
3作を通して、監督の災害観?の変化というか、人智の及ばないものに向き合ったときの人間の在り方に対する考え方みたいなものが窺えて、観ているこちらもいろいろ考えたくなる作品だなと思いました おもしろかった!!

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