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2021年映画ベスト10

2021年も今日で終わりということで、今年観た映画の中からベスト10を選んでみました。

2021年に映画館で観た新作映画は41本。旧作を含めて初見は55本。今年は2020年よりは映画を観るのに苦労しなかったけど、映画祭など通常公開以外の上映に足を運ぶ機会がけっこう減ったような気が。

  1. ソウルメイト 七月と安生

  2. すばらしき世界

  3. フリー・ガイ

  4. さんかく窓の外側は夜

  5. ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

  6. 砕け散るところを見せてあげる

  7. 少年の君

  8. マトリックス レザレクションズ

  9. JUNK HEAD

  10. 唐人街探偵 東京MISSION

少し前に比べると、わりと普通の映画をベストに選ぶようになったかな、という実感です。それでもクセは強いですがw アニメもそれなりに観ているのに、年間ベストにぜんぜん入ってこないというのは、自分自身の好みの変化を感じます。

あとはMCUがフェイズ4に入り、いろいろ新機軸を試しているのか、どれも興味深いものの年間ベストに入るほどグッと来なかった、というので、MCU作品が久々にベスト10に入っていません。ただこれは、年末に例の作品が公開されていれば違ったのかも。

では以下で、それぞれに簡単なコメントを。

1. ソウルメイト 七月と安生

新作の『少年の君』と合わせて公開された、デレク・ツァン監督の旧作。自分は初見なのと、日本での一般公開は今回が初めてということでランクイン。1人の男性を巡る女性2人の物語というメロドラマ的設定からは予想もつかない、複雑な味わいが素晴らしい。語られる物語と人間の実存の関係、といったメタ的な領域にまで入ってくるとは。日本のノベルゲー好きの人あたりにもグッとくる作品じゃないかな。

2. すばらしき世界

刑務所を出所した元ヤクザの男が社会復帰を目指す姿を通して、貧困や格差、無意識の差別といった現在の日本社会の問題を浮き彫りにしていく作品。とにかく細部まで徹底的に考え抜かれていてスキがない。特にラストの展開には震えました。この映画を観た後しばらくは、TVのCMで役所広司を見かけるたびに「あぁ、無事に就職できたんだ。良かったねぇ」という不思議な感慨を覚えていましたw

3. フリー・ガイ

オープンワールドゲームのモブキャラが自我に目覚めて、プレイヤーキャラと同じように行動を始めるというコメディ。さすがライアン・レイノルズはこの手の最新オタクネタをよく分かっていて、とにかくゲームの内側(ゲーム内世界のルール)と外側(大作ゲームの開発現場)のディテールが良くできてる。特にタイカ・ワイティティ演じる悪徳社長は大笑い。ただ、「人間性とは何か?」というところまで踏み込める物語を、ラストの展開で口当たりの良いラブコメに留めてしまったのはもったいない。あと、ゲーム世界を舞台にすることで「世界の果て」を実写映像化してみせたのは、ウテナ者としては胸熱。

4. さんかく窓の外側は夜

霊が見える志尊淳が、心霊探偵事務所で働くことに。BLコミックの実写映画化だそうだけど、原作は未読。1本の映画として観た場合、細部のディテールが徹底的に詰められていて、登場人物のちょっとしたクセにまできちんと物語的な背景がある、緻密な構成に驚いた。岡田将生の非人間的な感じ、平手友梨奈の尖った感じなど、キャストも絶妙。北川景子の出番には流石にビックリしたけどw クライマックスの異空間が地下室にただ縄を張り巡らしただけだったりするところは、もっとがんばりましょう。

5. ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

危うくMCUから追放されかけたジェームズ・ガン監督を拾った先が、ヴィランの五分の魂を描く『スーサイド・スクワッド』というのはさすがに出来過ぎ。この組み合わせがハマらないわけがない。完全リブートのフリをしながら、きっちりとデヴィッド・エアー版の続編になっているのが素晴らしい。そして、しれっと巨大怪獣モノだったりするところも最高。さりげなくゲスト出演しているタイカ・ワイティティが、いちばん泣かせるキャラなのもスゴイ。

6. 砕け散るところを見せてあげる

竹宮ゆゆこ先生の小説を映画化。原作は未読だが、おそらく原作は複雑な構成になっているんだろうな、という展開を再現するところは、正直あまり上手くいっていない気が。でもそんなことを抜きにしても、地方都市を舞台にした青春サスペンスドラマとして素晴らしい正義感の強い主人公を演じる中川大志と、いじめられているヒロインの石井杏奈が激ハマり。ちょこっと登場する清原果耶も良いけど、映画の後半に満を持して登場するあの人は、分かっていてもインパクト満点。地方ロケの雰囲気も素晴らしく、引き込まれる

7. 少年の君

受験戦争真っ只中の中国の進学校で、いじめのターゲットにされたヒロイン。彼女が街の不良の青年と出会ったことで、2人の関係は思わぬ方向へと発展して……。こういう派手な要素のない映画が、口コミでちゃんと大ヒットする中国の映画市場はあなどれない。『ソウルメイト』に続いて女子高生役を難なく演じる周冬雨(チョウ・ドンユイ)がスゴイ。単なる青春恋愛モノに留まらない、複雑に発展していくドラマも素晴らしいのだけど……。映画の最後で主人公たちが登場して「現在の中国ではいじめ対策法が整備されており、この物語のような事件は起こりません」とか言わされてるのは、正直うーんといった感じ。このへんは今の中国エンタメでの最大の問題だよなぁ。

8. マトリックス レザレクションズ

公開前はリブート? リメイク? と言われていた本作も、蓋を開けてみれば『マトリックス レボリューションズ』から直接続く、その後の物語になっていた。『レボリューションズ』はゲームの『マトリックス オンライン』につなげるため、意図的に物語の解決をぶん投げていたと思うのだけど、今回は(こちらのWikiでの同作のストーリーを見る限り)『マトリックス オンライン』の物語を引き継いで、シリーズをもう一回映画のストーリーとして決着させるために作られたんじゃないかと思う。プログラムやイカロボの一部までネオの影響を受けて「目覚めて」いる世界は、個人的にシビれた。『レボリューションズ』で意味ありげに出てきた少女(の女優さん)が成長してちゃんとキーパーソンになっているのも素晴らしい。1作目の「映像革命」といったものとは無縁だけど、昔懐かしい顔ぶれのその後の話が聞ける同窓会として、自分はめちゃくちゃエンジョイしました。

9. JUNK HEAD

2021年はアニメもけっこう観た。細田守監督によるディズニー版『美女と野獣』のオマージュに見せかけた『劇場版ウテナ』の変奏曲や、完結したことに意味がある『シン・エヴァ』よりも、(ほぼ)個人制作で地道に作られた人形アニメの本作がいちばんインパクトがあった。単に手間がかかかっているとかだけではなく、独特のオフビートなユーモアのある世界観そのものが魅力的。物語が半ばで止まっていることだけが残念なので、ぜひ続きが観たい。

10. 唐人街探偵 東京MISSION

オレはなにしろ2018年の映画ベスト10に、中国映画週間で観た『唐人街探偵 NEW YORK MISSION』を挙げていたぐらいなので、本作の日本公開をとにかく待望していた。映画自体の出来はミステリとしてもギャグ映画としても『NY MISSION』が上だけど、見慣れた景色で展開される豪華日本人キャストによるコテコテギャグの乱れ打ちは、やっぱり最高だよ! 特にオレは本作をTOHOシネマズ新宿で観ていたので、現地の周辺でバリバリロケしてるのにビビった。ちゃんとお金さえかければ、こんな映画を日本で撮れるんだから、ハリウッド映画もMCUも、もっとバンバンロケしてくれよ!


ベスト10外で印象的だったのは、原田眞人監督による『ラストサムライ』への返歌『燃えよ剣』、怪獣プロレス映画はストーリーなんかまったくなくても怪獣バトルの見せ方だけに凝ればなんとかなると証明した『ゴジラvsコング』、暴力的なまでに強引なストーリー展開が往年の香港映画のようで痛快だった中国CGアニメ『ナタ転生』、日本映画の未来を指し示した『ベイビーわるきゅーれ』あたりでしょうか。

旧作の特集上映ですが、PFFでタイのナワポン・タムロンラタナリット監督特集を観られたのも良かったです。『マリー・イズ・ハッピー』『ダイ・トゥモロー』『メイタウィー』あたりはぜひ一般公開をお願いしたいです。

それでは2022年も面白い映画が観られますように。
みなさん、よいお年を!


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