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「きみの小説、読んでいないけれど」

 〇月〇日

 久し振りに大学時代の友だちに会った。小説に興味のある人間だった。だからたまに会う。ネットに書いている私の小説のURLをメールで送ったりしていた。
「きみの小説、読んでいないけれど」
 開口一番、彼は言った。
 事実だから事実を言っただけなのだろう。小説に興味があるが、私の小説には興味がないのだろう。他意はないのだろう。
 こういう人にはたくさん会ってきた。

 つらいものです。
 
〇月〇日
 
 名曲喫茶に行った。店内には所狭しとアナログ・レコードが並んでいたが、かかっていた音源はCDだった。音質で、そういうことはわかるものなのだ。
 ブースの奥をのぞいてみたら、やっぱりそうだった。

 普段足を運ばない地域に行ったので、見かけた中古レコードショップに入った。狭い。レコードがぎっしり。よくあるタイプのマニアックな店である。店内で音楽が鳴っている。パチッ。パチッと針が盤面を弾く音が聞こえる。あ。アナログ・レコードだと思った。
 (レコ―ドにノイズが出ると舌打ちしたくなるものだが)ああ、ノイズもいいものだな、と私は初めて思った。

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