飢餓の村で考えたこと 65.66

注意:ここに書いている体験は76年77年のことです。日本でいうと戦後すぐの時代を書いたようなもので現在のバングラデシュとは全く状況が違います。

交渉した人から買うべし

 

日本では値札があるので値段と品物の必要を考えて購入していた。しかしバングラではどのようにしたらいいのか分からない。そこで初めの頃は例えばきゅうりを買うんだったら4~5人から値段を聞いて回って、一番安い人に最後の値段交渉をして購入するという手順で買っていた。

しかしただ安く売ってくれる人を探して購入するのがNGOの駐在員として相応しいのだろうかとの疑問を感じつつも、そうでないやり方を見つけることができなかった。ベンガル社会に慣れてくるとどうしたらいいのかが分かってきた。

最初に値段交渉した人から買うのが自分たちに相応しい方法だと思うようになった。相手がどんな人でも相場を知っていればこちらの考えている値段にしてもらうことができる。最初に交渉した人から買うことが見えない信頼関係を作ることにつながるように思える。

 

値切り方テクニック

 

村人の値切り方テクニックを見て学んだことがある。私はダッカへのショミティの納品に時々同行した。納品が終わっての帰り道で会員の女性は買い物をする場合がある。

ビニールサンダルは村よりダッカの方が安い。一緒に行った会員女性が気に入ったサンダルの値段を店のおじさんに聞いた。「14タカ(お金の単位)だよ。」彼女は「それ頂戴」と言って品物を受け取る。

彼女は小声で「いとバイ(伊東兄ちゃん)2タカ貸して」といったので貸してあげると、自分の持っていた10タカと合わせて12タカをおじさんに払った。おじさんは12タカを見て「2タカ足りないよ」ともぞもぞ言っている。

彼女はサンダルを持って速足でどんどん歩いていく。私はおじさんが足らないと言っていることが気になって行くのを躊躇っていると「いとバイ早く行くよ」と彼女たちが急がせたので彼女たちに付いて行った。

後から彼女に聞くとこれも値切りテクニックの一つだという。ポイントは店主のおじさんにその値段でいいのかどうかを判断する時間の余裕を与えないということらしい。

もしその値段では売らないのだったら、かならず追いかけて来て取り返すはずなのだ。面白そうなので私も何回か試して成功したのだった。この方法だと交渉の必要性がないのもいい。


 

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