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【完結】麦酒と地域を醸すひと・後編

北海道、ところどころ雪が降りました⛄
こんにちは、イトイグループ広報・深澤です、

さて、士別サムライブルワリーのヘッドブルワー・風間さんを掘り下げる本記事。
先日お送りした前編では、「日本一周しよう」と決意したところまでお話していましたね。
それでは早速続きをご覧ください!


相棒は自転車~風間健、旅に出る

唐突に日本一周を決意した風間さん。
実は理由がありました。
当時、鎌倉でシェアハウスに住んでいた風間さんでしたが、格安だった家賃が値上がりすることになり 退去を考え始めます。
「でも、これを理由にすると不協和音が…」
良くしてくれたシェアハウスの関係者さま方と嫌な最後を迎えたくないと思った風間さんはとっさにこう言ってしまいます。
「僕、日本一周することにしたんで出ていきます!」

…なぜそんなことを言ってしまったのか。
しかし「言ったからにはやってみよう。一周したら地元に帰ろう」
これまで数多の奇抜な経験をしてきただけあって、さすがの決断力です。

日本一周を開始するにあたりまず決めたのが、移動手段とスタート地点。
選んだ移動手段は「自転車」。
いわく、「車、バイクだと達成感が薄そうだし歩きだと時間がかかり過ぎるかなと思ったので、人力かつほど良いペースで周れそうだったのが自転車でした」だそうです。
スタート地点は、高校時代の同級生がいた秋田県。
(ここに自転車を送ればすぐスタートできるため)
そこから反時計回りで進んでいくことを決意します。

最低限の準備を整え、
皆に応援されながら 2017年11月、風間さんは旅立ちました。


出会いと再会~風間健、想い巡る

秋田からスタートした風間さんの日本一周。
開始月の末には熊本県にまで到達。
冬に自転車移動は厳しすぎるので、3月末までは熊本県の旅館で
住み込みバイトをして生計を立てていました。
少しの休憩(働いているけど)の中で頭をよぎるのは、
地元に戻ってからの生活のこと。
これまでにインプットしてきたものたちの中で特に思い出すのが
「クラフトビール」と「シェアハウス」(ここでやっとクラフトビールが出てきました)。

クラフトビールとの出会いは、東京で在籍していたカフェバーがクラフトビールの提供を始めたい、ということでお勉強のために足を運んだ専門店。
初めて「IPA」という種類を飲んで「ビールと全然違う!」と衝撃を受けました。
さらに、たまたま隣に座っていた紳士から「ビアフェス一緒に行かない?」と誘われ、二つ返事で同行。
その会場で、山梨県にあるブルワリーの「スコティッシュスモークエール」を飲み、どハマりし、以後旅先や専門店でクラフトビールを飲みまくるようになりました。

漠然と、この大好きな2つのものに携わりたいと考え始めます。

日本一周中の風間さん(当時26歳)

そうこうしているうちに、熊本での住み込みバイトも終了し旅を再開。
まだまだ長い…と思われた残りの旅路も、約2か月でGOAL。
ついに故郷である北海道名寄市に戻ってきました。


故郷での再出発~風間健、決意する

さて、旅の中で自分のやりたいことが見え始めた風間さん。
まず始めたのが、新規立ち上げされた居酒屋でのアルバイト。
「故郷とはいえ離れていた時期が長く、街のことを何も知らなかった。
まずは街の人を知ろうと思い、様々な人が集う居酒屋を選びました」
また、冬にはスキー場で観光客の市場調査を実施。徹底的に名寄市内外の人のニーズを知ろうとしました。
並行してゲストハウスの立ち上げに向けて準備を進めていた風間さんですが
札幌市でゲストハウスを営む知人に相談を続けたところ、利益などの壁を越えるのが現段階では厳しいという結論に至り、方向を少し転換。
飲食店の経営を目指すことになります。
が、そのままストレートに進まないのが風間健。笑
仕事の合間に訪れたとあるピザ屋にて、ある出会いがありました。
「美深で新しくブルワリーを始める予定。クラフトビールに詳しくて飲食業の経験がある人を探している。働いてみないか?」

こうして2019年4月、新設された美深白樺ブルワリーに入社しました。
アシスタントブルワーとして日々大好きなクラフトビールを作り、イベントでそれを手に取ってもらう…という喜びに満ち溢れた生活の中、あるイベントでの一言が風間さんの中に残っていました。
「美深までこのビールを飲みに行きたいけど、車で行くと帰れないし…」
そう言っていたのは、名寄市のお客様でした。
ここで、お客様の声と自分がやりたかったことがマッチします。
――じゃあ、自分が名寄でクラフトビールを飲める場所を作ろう。
こうして、ブルワーとして働きながらビアバーを開業することを決意しました。

幸いにも、物件はすぐに見つかりました。
会社員の給与で生活はしていけるし、店内の改装はおいおい店の売上を使ってやろう、と考えていたので、
椅子・グラス・ビールの用意のみで営業を開始しました。
始めた店は「モルトリップ」。
ビールの原料であるmaltと trip(旅)を組み合わせた店は、
「ビールを飲みに旅してくる店」を目指しました。
※ちなみに、現在も営業中。

開業から間もない頃の風間さん

幸いにも短期間で繁盛し始め、ブルワーと二足のわらじを履いていた風間さん。いわく、当時が一番寝ていなかったそうです…。そんな順風満帆(?)な風間さんでしたが、ほぼ同時期に逆風が吹き荒れました。


士別サムライブルワリーへ~風間健、醸す

2020年、今なお猛威をふるう新型コロナウイルスの流行により、
モルトリップは休業を余儀なくされます。
風間さんはその期間を、手をつけていなかったお店の改装に費やします。
水回り以外の改装を全て自分で行い、かかった期間は2年。
休業明けすぐに来店されるお客様に喜んでもらおうとコツコツ作業。
もちろん、日中は美深で働き続けました。
そんな中で、前編で書かせていただいたように志BETSホールディングス役員と出会い、士別サムライブルワリーで働くことになった風間さん。
鶴居村にて「Brasserie Knot(ブラッスリーノット)」というブルワリーを経営されている植竹大海さまをコンサルにお迎えし、日々醸造についてを教えていただきました。

2021年12月、サムライブルワリーで行われた火入れ式

その後、クラウドファンディングで多数のご支援をいただき、
2021年12月から本格的に醸造・販売を開始。
現在では士別市の道の駅や、道内外の多数の小売店・飲食店にてサムライブルワリーのクラフトビールを取り扱っていただいています。

当初、ずっと一人ぼっちでクラフトビールを仕込み、ラベルを貼り、瓶詰をし、事務作業をしていた風間さん。
時には6時間通しでラベル貼りをしたこともあるそうで「発狂しそうでした」とのこと(そりゃそうだよね…)。


今と、これから~風間健、明かす

――昼間はブルワリーで働き、夜には休む間もなく自身の店の営業って結構ハードだと思うんだけど、辛くない?
「まあ大変ではありますけど…僕、自分で作って提供して、お客様と話してっていう仕事スタイルが合ってるんですよね。なので、ビール職人って結構マッチしている。工場にいるだけじゃなく、イベントに出店してお客様と顔を合わせて販売するので。店でもそうですけど」

――今までの経験の集大成という感じ?
「そうかもしれない。最初は工場で作るだけの職業だったけど、その後は人と向き合う職業をたくさん経験したので、上手く掛け合わせている感じです」

――成人するまではあんまり人と関わりたくないのかなっていう印象だったけど、変化したきっかけってなんだったのでしょう?
「ある時ふと気付いたんですけど、僕食わず嫌いをめちゃくちゃしてたなと。これは昔、食べ物の好き嫌いが多かったのもそうですし、人間のこともそうだった。食べてみたら意外と美味しいし面白い。今では嫌いな食べ物もほとんどないですし、いろいろなタイプの方との会話も出来るようになりましたよ。笑」

――食わず嫌いを克服するきっかけになった放浪生活(?)だけど、批判的な意見も多かったのでは?
「多かったです。製菓学校出たのに、とか、フラフラしてる、とか。最初は気になりましたけど、東京に出てからは周りも自由に生きている人が多かったので、自分の生き方が肯定されるようになりました。家族も理解してくれていましたしね」

――色々乗り越えた風間さんですが、あなたにとってクラフトビールはどんな存在ですか?
「面白い出会いの真ん中にクラフトビールを、というコンセプトでモルトリップは運営していますね。真ん中っていうのは、お客様同士の間だったり僕とお客様の間だったり。なので、僕はコミュニケーションツールとしてとらえています」

――自身が作ったクラフトビールの中で一番お気に入りなのは?
「寵ですね。単純に味がとても良い。あとは、燻(いぶし)という燻製ビールはお客様からの評判が良かったです。意外性もありますし。ちなみに燻は、近隣の剣淵町にある『ゴトウくんせい』様とのコラボ商品です」

なお、今後は
・自治体や企業とのコラボ
・ビール工場とお客様との距離を縮める
といった点に重きを置きたいとのこと。
"作ったから売る"ではなく、"欲しいと思ってくれる人がいるから作る"というブルワリーにしていきたいそうです。


さて、2回に渡って風間さんのご紹介をさせていただきました。
が、まだまだ書ききれないエピソードがあります。
ぜひ、興味をお持ちの方はサムライブルワリーへ足をお運びください!
多分聞いたらなんでも喋ってくれます。笑

士別という地域を盛り上げるために始まったクラフトビール醸造事業。
いつか、士別の特産品となり、この地域を代表する存在になってほしい。
そして、そんな事業に飛び込んできた風間健という少し変わり者の青年。
クラフトビールを醸すことで、地域をも醸していく彼は、今日もお客様に美味しいビールをお届けすべく奮闘中です。

なお、士別サムライブルワリーやモルトリップに行ってみたい!という方。
アクセスは以下!お待ちしてます🍺
士別サムライブルワリー 〒095-0023 北海道士別市西3条10丁目220
モルトリップ 〒096-0014 北海道名寄市西4条南5丁目3−2

また、士別サムライブルワリーはECサイトも立ち上がりました。
遠方の方、ぜひ一度お試しくださいませ🍺
https://shibetsucb.official.ec/

⁡それでは、長らくお付き合いいただきありがとうございました!
次回更新をお楽しみに~👋

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