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官報公告と商業登記 ~「官報の発行に関する法律」の成立公布を受けて~

こんにちは。
伊藤塾の商法・会社法・商業登記法の教材作成者の杉山です。

「官報の発行に関する法律」(令和5年法律第85号。以下「本法」といいます。)が令和5年12月6日付けで成立し、昨日(令和5年12月13日)付けで公布されました。

令和5年12月13日官報

本法が施行されると、従来は紙の印刷物として発行されてきた官報が電子化され、インターネット上のウェブサイトへの掲載によって発行されることとなります。

現時点においても、紙の印刷物である官報をPDFデータ化してウェブサイトに掲載する「インターネット版官報」がありますが、あくまで官報本体は紙の印刷物です。しかし、本法が施行されると、ウェブサイトに掲載されたものが官報本体となり(本法5条)、紙の印刷物は補助的な位置付けのものとなります(本法10条)。

なお、本法は、原則として「公布の日から起算して1年6月を超えない範囲において政令で定める日」から施行されるものとされています(本法附則1条)。したがって、直近の令和6年度の司法書士試験の出題の範囲ではないものと考えられますので、その点にご注意ください。

今回は、本法の成立及び公布を受けて、商業登記における官報公告について少しお話をしたいと思います。

例えば、資本金の額の減少等、官報公告を含む債権者保護手続を要する会社法上の手続をする場合(会社449条2項等)、登記の申請書には、官報公告をしたことを証する書面を添付するものとされています(商登70条等)。そして、この場合の登記の申請書の添付書面欄には、例えば、「公告をしたことを証する書面 1通」と記載します。

官報公告をしたことを証する書面の具体的な内容としては、現在の商業登記実務においては、紙の印刷物である官報の原本となります。また、オンラインによる登記の申請の添付書面(情報)としては、インターネット版官報のPDFデータも認められています

将来において本法が施行された場合には、官報公告をしたことを証する書面として、具体的には、どのようなものを添付することとなるのでしょうか。

現時点においての推測ではありますが、例えば、以下の①から③までが想定されます。
ウェブサイトに掲載されているPDFデータをダウンロードしたもの
ウェブサイトに掲載されているPDFデータをプリントアウトしたもの
③ウェブサイトのURL
を明らかにしたもの

それでは、これらを添付書面とする場合には、登記の申請書の添付書面欄にどのような記載をすることとなるでしょうか。

上記①又は②であれば、現時点と同様に、「公告をしたことを証する書面 1通」と記載することとなるでしょう。

また、上記③であれば、会社法人等番号の記載によって登記事項証明書の添付の省略をする場合(商登19条の3)に準じて、例えば、次のように記載することが考えられます。
「公告をしたことを証する書面 添付省略(令和○年○月○日官報号外第○号第○頁)」
「公告をしたことを証する書面 添付省略(https://…………)」

いずれにせよ、本法の施行前には、民事局商事課から通達が発出されることとなりますので、その詳細は、その通達で明らかにされることとなります。

受験生の皆さんの中には、会社法上の一定の手続において官報公告をする必要があることは知っていても、実際に官報公告がどのようなものであるかを知らない方もいらっしゃるかもしれません。

この機会に、インターネット版官報を見て、官報公告のイメージを膨らませてみることも、会社法及び商業登記法の学習の一助となるかもしれません。



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