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SaaSスタートアップ創業者ガイド vol.1-1

いわゆるSaaSをやる人もそうでない人も必読の「SaaSスタートアップ創業者ガイド」を読み直しています。 今現在「Scalebase」というサブスクリプション管理、デジタルトランスフォーメーションSaaSを開発している身としては、ZuoraのTien Tzuoがリードされているこの本を引用するのは気が引けますが、やっぱり至極学びになったり整理されるので、今回は前半部分をメモ。

読んだことない方は絶対読んだ方がいいです。何回も読むたびに解像度も上がっていくと思います(実体験)。

第1章 サブスクリプション経済:経常収益がすべてを変える理由

内容:商品中心から顧客中心の時代に完全に移行しているということ。
そのためには、ARRを中心とした新たな経営指標が必要であり、顧客から学び続け、改善し続ける姿勢が会社として、事業として必要。それを貫けばより大きな成長を実現できる。

顧客中心の時代へ(商品中心の時代の終わり)
献身的な顧客基盤の拡大、収益化こそがポイント。
顧客の好みを追跡し、各顧客のニーズに合わせた 商品を提案して、生涯続く顧客価値を作り出す。 取引重視から顧客重視へ。
結果、精算が済めば顧客と一緒に消えてしまう静的な商品ではなく、継続的なサービスを提供し、スマートで即応的な関係を構築できるようになる。
サブスクリプションモデルにより、先行コストの低い商品を提供して商品を改善し続け、 使用状況や行動の分析を通して顧客を知ること。

それから数十年が経ち、1980年代にOracle社のエンタープライズリソースプランニング (ERP)システムが誕生しましたが、これは問題を助長するだけでした。 彼らのシステムは事業の効率性—原材料、在庫、注文書、出荷、給与—の測定においては非常に優れていましたが、カスタマーエクスペリエンスの測定については非常にお粗末なものでした。 企業は測定できるものの管理に重点を置くようになり、組織面でも戦略面でも救いようがない程の商品重視の経営になりまし た。

90年代中頃になると、米国の企業はこの徹底的な生産性重視の姿勢により、あるものが犠牲にな っていることに気付きました。ベンダーと顧客の関係です。 顧客はこれまで、流通チャネルの最後の受け手であり、誰にも知られることなく企業が生産した商品を消費するだけの存在でした。 しかしある日、多くの顧客が初めて購入した商品をうまく使えずに困っていることがわかりました。 なぜわかったのでしょうか? 受付にクレームの電話が来るようになったのです。 この問題を企業はどうやって解決したのでしょうか? 顧客サービスの部署を立ち上げたのです。
いつもと同じ問題の解決方法で、企業はまたしても縦割りの組織を作り出しました。 市場サービス、テクニカルサポート回線、保証契約、保守グループなどの組織を立ち上げました。 顧客はようやく自分に向けた部門を用意されました。 ただし、その部門はサプライチェーンのはるか末端の搬出口を過ぎたところに据えられました。

新しい成長指標
・ARR(経常収益) = 既存の顧客から毎年 継続的に得られる収益
・チャーン(顧客離れ) = サブスクリプション契約を更新しない顧客の数(多くは収益で示される)
・新規年間契約額 ACV = 新規顧客や現在の契約をアップグレードまたは更新した顧客から生み出される収益
・成長効率性指標 GEI  = 成長費用/新規ACV
- GEIが1より大きい場合、獲得する金額以上の額を新規事業に投入しているということ。GEIが1より小さい場合、獲得する金額よりも支出が下回っているということ

第2章 成功には時間が必要

内容:大きく成功するには時間がかかる。 まず、軌道にのるまで2年。
辛抱強く時間をかけることを惜しまないことが必要。その覚悟があるかどうか?そして、ただ2年ぼーっとすることではない、絶え間ない努力と思考時間が絶対に必要。それを踏まえてなお、厳しい競争環境に果敢に挑戦できるか?を自身に問うこと。誰もが地獄のような1年を経験する。それは誰にでも絶対起きる、その時にこそ辛抱と専念が必要。そうしたら乗り越えられる。

軌道にのるまで2年は必要

1. 十分な顧客をつかんで推進力を得る、つまり最初のトラクションを獲得するまで、丸2年間の時間をかける覚悟がありますか?
12か月でも、 18か月でもなく、 24か月です。 2年間です。 そうです。6か月でも12か月でも不十分です。 適切な製品を用意するだけで9か月から12か月は かかります。 そして相当の収益を上げるまでにさらに6か月から12か月が必要です。

InstagramやWhatsApp、Pinterestは、たった12か月で爆発的な人気を得ることができました。しかし、繰り返しますが、「一夜にして成功をつかんだ」と言われる彼らも、開発と試行錯誤を幾年にもわたって重ねた結果、やっと成功を手にしたのです。 ただB2Bのソフトウェアやサービスでは、このような奇跡は期待できません。あなたは、最初のトラクションを獲得するためだけに24か月をかける余裕がありますか? 答えがノーであれば、止めたほうがいいでしょう。 Slack社は、2014年の1年で、年間経常収益(ARR)を0ドルから1,200万ドルに伸ばしたとお考えかもしれません。 でも待ってください。 Slack社は2014年1月1日に設立されたのではありません。

最初のトラクションの獲得まで12か月では足りません。 12か月だけでは、 多少の収益が上がるようになったとしても、会社を続けるために十分な収益を得られず、あきらめることになります。 本当のことを正直に言えば、たいていの人は経済的、個人的な理由などさまざまな理由で、実際に24か月をかけることができません。 当然です。 しかし、SaaSビジネスではそれだけの時間をかけなければ失敗するでしょう。
この世界で実行すべき最善のことだという自信が100%ないならば、テクノロジースタートアップを始めてお金を集めてはいけないということです。

誰もが地獄のような1年を経験します

しかし、地獄の年は後からやってきます。 たいていは、トラクションを獲得した後に来ます。 時には上述のCEOが経験したように会社の拡大後、またはそれ以前のこともあります。 勝利まで戦い続けられないほど、あらゆる点でただ苦しいばかりの1年です。 あなたは多方面からの攻撃にさらされています。
これは、特に深い洞察というわけではありませんが、ただわかってほしいことは、ゴールへ向かう過程で必ず起こることで、あなたが何か悪いことをしているわけではないのです。 あきらめないでやり通すしかありません。 SaaSのCEOや創設者たちと話すと、長い間活動してきたほとんどすべ ての人が地獄の1年を経験していました。 もし地獄の1年にいるのであれば、切り抜けられます。 誰もが経験したことです。苦しいときにあきらめずに頑張り続けると、活気が戻り、再び成長の速度が上がります。 それは (EchoSign社と同じように)大変な時期の翌年のまる1年かもしれません。いずれにしても、必ず起こることです。 良い顧客と適正な製品、仕事をきちんと行うチームがあり、そして100%専念して取り組み続けるのであれば、あなたも再び成長を見るでしょう。 辛抱と専念が重要です。
あなたが旅のどの段階にいようとも、私がスタートアップとフォーチュン500の企業の両方で学んだことの1つは、リスク調整すると、スタートアップはそれほど儲かるものではないということです。 スタートアップは、大企業の最高のチームよりも迅速というわけでもありません。 しかし、スタートアップでは、周りの世界がより良い場所になるような変革を起こして、毎日、その変化の様子を見ることが簡単にできます。 ただ、そこに至るまでには、まず辛抱の時間が必要であることを 忘れないでください。

第3章 収益1,000万ドルへの道を制覇する方法

 内容:ARRの規模で会社のフェーズは異なってくる。~100万ドル、100万ドル~300万ドル、300万ドル~1000万ドルと大きく分けることができる。アイデアを立証する、売れるプロダクトとして確立する、マーケットがあることを証明する、というステップ。それを経て1000万ドルを達成してやっと"会社"の仲間入りができる。

アイデアの立証(0ドルから100万ドルへ)

アイデアを立証する、まず売ること(含む、Sell before build)

そこで私たちは、すでに知っている会社を中心に多くの会社に連絡し、このアイデアを証明することにしました。 まずプロトタイプを構築し、 50社以上の潜在顧客と話しました。 実際、製品が完成する前に数社と契約を結びました(契約はもちろん製品が提供されることを条件にしていました)。
同様に、セールスフォース・ドットコムでは、いくつかの製品画面のスクリーンショットをWeb サイトに上げ、ベータ版の利用に招待しました。 その後、興味を持った人たちにデモを見せ、感想を聞きました。 2000年2月にリリースしたときにはすでに200社の顧客が製品を待っていました。

製品の立証(100万ドルから300万ドルへ)

最初の100万ドルを達成すれば「よし、アイデアは正しかった。これは売れる」と言える。そして、選択と集中を決めるフェーズ

あなたが本当に構築すべき製品は何でしょうか? アイデアを立証している間は、さまざまなアイデアをすべてテストしたかもしれません。しかし、今や選択し、優先順位をつけ、最初に構築する必要があるものと数年後に延期するものを決める時です。

マーケットの立証(300万ドルから1,000万ドルへ)

営業・マーケティングの拡大、ロードマップ実現に注力する時。一方で、市場の定義が非常に必要になってくる(投資家はそこを見ている)

しかし、このプロセスではあなたのマーケットを定義する必要もあります。 自分自身に問いかけ てみてください。あなたの選んだマーケットは本当に数十億ドルの市場ですか? 5億ドルの市場ですか? 1億ドルですか? 次のラウンドでもっと多くの資金を調達しようとする場合、この質問の答えを知っておかなければなりません。 シードラウンドやシリーズAラウンドで資金を得るときは、 すべてが希望と夢でよかったのです。しかし、ひとたび実ビジネスとなると、投資家はこのマーケットの規模が実際にどれほど大きいのかをより重視します。

1,000万ドル達成

やっと現実の会社になれました。

おめでとうございます。 年間経常収益が1,000万ドルになると、企業として生き残れる確率が高まります。 それ以前は、追加の資金を調達する前に資金が不足し、いつでも消滅してしまう可能性 があります。しかし、年間経常収益が1,000万ドルで、特に堅実な経常収益を確保しているのであれば、事業から撤退する必要はなくなります。 つまり、この段階から現実の会社に変わっているのです。

第4章 [あったらいいかもね]で満足していませんか?

内容:(ここが最も唸った内容。)
自社のニッチマーケットを見つけて、そこで勝ちきることが必要。「あったらいいかもね」では絶対に生き残れない。そのターゲットに対して「必要不可欠」と思わせないといけない。
そのために、誰がターゲットで、どういう課題で、どういうソリューションを提供するから必然性があるのかを考え続けること、またそこにクリアな回答を持つこと。
ニッチマーケット = ターゲット+顧客の課題+ソリューション。
ニッチマーケットを見つけるには、単に業種やターゲットを選ぶだけでなく、誰にフォーカスを当てるかが重要。 そしてそのフォーカスを当てたところこそが、顧客の課題とソリューションが交差するポイントになる。

もしも買い手が、あなたのソリューションを「必要不可欠」と見なしてくれなければ、わざわざそのソリューションのすばらしさを社内の人に説明したり、予算の承認を得たり、組織全体に導入しようとは思わないでしょう。
あなたが顧客から本当に必要とされる製品をつくりたいなら、以下の質問について考えてましょう。
・顧客がお金と時間を費やしてでも解決したいと考える、彼らにとっての大きな問題は何ですか?
・顧客の問題を解決するとき、あなたの会社と他社との差をどのように説明しますか?
・どう説明すれば見込み客に理解してもらえるでしょうか?
・あなたの会社を必要とする顧客と、必要としない顧客にはどのような違いがありますか?
・あなたの会社が顧客にもっとも金銭的価値をもたらすことができるのは、どの領域ですか?
・あなたの会社が成功事例や顧客からの推薦コメントを得ることのできる領域はどこですか?
・どのように「お金を売る」ことができますか?
「お金を売る」とは、あなたの製品によって、顧客の収益の増加、費用の削減、損失リスクの軽減、あるいは、コンプライアンスの遵守(罰金と法的リスクの回避)などを実現することです。 あなたの製品を購入すると、その費用よりもより多くの収益が得られることを示せれば、あなたの製品は「必要不可欠」と認めてもらえるようになります。
自身と自分のチームに問い続けてください。 あなたの製品を(「欲しい」のではなく)必要とするターゲットは誰ですか? なぜあなたの製品を購入するべきなのでしょう? それが他社より高くても買うべきなのはなぜですか? 最終的に、あなたではなく、顧客の成功をどのようにもたらしますか?

商品に自信があればあるほど、買い手に対して商品を押し付けるような売り方をやめるのは難しいものです。しかしあなたがそんな売り方を続けている限り、買い手の興味を引くどころか混乱さ せることにしかなりません。 だからシンプルに考えましょう。自分たちのニッチマーケットに注力し、常に「必要不可欠」になることを目指すのです。「あったらいいかもね」ではまず生き残ることはできないのですから。

今回はここまで。

アルプでは絶賛エンジニア募集中(セールスの方も)です!!



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伊藤浩樹(H.Ito)

モルガンスタンレー、ボストンコンサルティンググループを経て、2013年よりピクシブに入社、その後代表取締役社長兼CEOに就任。2018年8月にアルプ株式会社を創業。サブスクリプションビジネスの売上最大化・管理SaaS"Scalebase"を開発中。

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