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【インタビュー01】GOOD TIME COFFEE(前編)カフェの運営を託されたデザイナー | 初代店長ナッパ誕生の経緯とお店づくりと産休までの濃密な時間

itonowaの入居者インタビューの1回目に登場するのは、GOOD TIME COFFEEの初代店長ナッパです。itonowaがオープンして5年目という区切りもあって、みんなにこれまでの事を振り返ってもらいながらインタビューをしました。前編では、準備段階からオープンして2年目ちょっとまでを書いています。カフェで働きたい方、お店の作り方に興味ある方、是非ご覧ください!

補足1 「ナッパ」は初代“店長”の愛称。

※itonowaは小さなお店が集まる複合施設。京都の島原エリアにあります。

・カフェの運営に参加した経緯

――:カフェを任されることになった“きっかけ”は何だったの?

タクマさんと食事をする機会があって、わたしが当時デザイナーとして勤めていた広告会社を辞めましたという報告をしたんですね。すると唐突にタクマさんから「カフェ開くかもなんだけど、ナッパ興味ない?」みたいな感じに言われて...でも突然すぎて、すぐに「やります!」とは言えませんでした。

補足2 「タクマさん」とはナッパの上司で、株式会社タクマデザイン 代表取締役 西山琢磨のこと

でも後になってだんだんと興味が出てきて、後日タクマデザインの仕事の領域だったり、itonowaというプロジェクトのことも含めてより詳しい話しを改めて聞いたんです。カフェ以外にまちづくりの要素も多分に含まれてそうだったので、すごく面白そうな感じもあって、2回目にして「私がやります!」って返答したのが始まりでした。

 ――:どこに「縁」があるかわからないよね。ところでデザイナー採用では無かったけれど未練は?

別に何とも無かったです。確かにカフェの店長としてタクマデザインに入社しましたけど、実際にはカフェが出来るまでの間、デザインのお手伝いもしてましたし、とにかくカフェの運営については、未知数なことが多く、そこは立ち上げてから考えていく感じで私も納得していました。

あと学生時代の課題で、長野県の下諏訪周遊プロジェクト「すわんぽ」という地域活性化のイベント企画をしたことがあって、タクマさんがそういうのを覚えてくれていて、itonowaのやることにハマるんじゃないかと誘ってくれたのも嬉しかったです。

――:タクマ氏にそんな感じで言われるとね、何となく師弟関係っぽいところもあるし。

補足3 itonowaの管理人は、株式会社タクマデザイン代表の西山琢磨を「タクマ氏」と呼ぶ。

師弟かどうかわかりませんが、タクマさんから誘われると(笑)

――:それで実際にナッパが動き出した時期って?

2015年の夏でした。オープンが10月に決まっていて、もう3ヶ月ぐらいしか無くて「えっ、ホントに大丈夫なの?」から始まったんです。itonowaに初めて来た時は、もう全体の工事も進んでました。

それでひと通りの説明を受けて「ここが厨房になるから」みたいな感じでしたね。ひょっとして飲食を経験された方だったら、あれこれ思うかもしれませんが、そもそも初心者なので、正直この厨房で出来ることをしよう…ぐらいしか考えられなかったです。

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――:その時のitonowa(改装中の現場)の印象って覚えてる?

静かな住宅街の一角だったので、立地条件的な心配はあったかもしれませんが、プロジェクトの中身やリノベーションプランの説明を受けていたので、特にこれといって悪い印象は無かったです。でも管理人さんが、ひげ面で強面だったような記憶はあります(笑)

――:それは否定しないけど…。じゃ次にオープン迄の準備のことを教えてくれない?

コンセプト決め

もうこの頃には図面は出来ていたんですが、お店の形態だったりコンセプトがまだ決まっていなかったので、まずはそこからでした。それでタクマさんと「コーヒースタンド」形式にすることに決めて、その中で出来ることを考えていきました。定期的に現場で店舗づくりの打ち合わせをしながら、並行してコーヒー(ハンドドリップ)の勉強とメニュー開発に取り組むための準備を始めました。

補足4  当初キッチンは一番奥に配置する設計。突然、管理人が表通りに面した方がオープンな感じがするという判断のもと玄関に変更。

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改修を担当した日暮手傳舎と日々打ち合わせ

・デザイン事務所ならではのアプローチ

――:メニュー開発秘話みたいなことは何かある?

元々“デザイン”が仕事だった私にとってカフェの運営は、未知なこと過ぎて、、、さっきメニュー開発とかって言っちゃいましたけど、実際はそれどころじゃなかったんです!本当に大変だったんだからー。コーヒーのことだってそんな知らなかったし。とにかくコーヒーのことを学ばないといけなかったから、ハンドドリップ教室に通うところから始めて。

あと出来る限りカフェ巡りして、今まで気にすることもなかった厨房を覗いてみたりもしてました。それで本当に少しずつですが、私たちが提供するコーヒーと合う“フード”って何だろう?って考えるようになって。最終的にタクマさんの「ホットサンドにしよう!」のひと言で決まった感じです。ドリップコーヒーとホットサンドを提供するコーヒースタンドですね。

他にはパンケーキとかワッフルなんてアイデアも出てたような気もします。最終的に“ホットサンド”をどう仕上げるか?は、わたしの役割だったので、具材の組み合わせだったり、パンのカットの方法とか焼き加減、盛り付けとか何度も何度も試しました。

でも実はオープン当初からの人気商品「カモネギサンド」は、かなり早い段階で仕上がっていたんです!まずは“美味しい”が一番なのは当然なのですが、デザインを完成させるイメージを意識したら、上手くハマってバランスよく出来上がった感覚?っていうんですかね、そんな感じでした。

白味噌香る、合鴨スモーク・ネギ・シメジのホットサンド

――:デザイン事務所がカフェを運営する事例は、僕も色々知っていたし期待感しかなかった。

そうですね。私たちの強みは、デザインも自分たちで出来ることなので、立地が多少悪くてもデザインで補えることもあるだろうと思ってました。でもオープン当初はやっぱり厳しかったです…。

――:苦戦した話しは後ほど聞くとして、その他にお店づくりで気をつけたことはあったのかな?

せっかくの機会なので、DIYというか自分たちでも壁を塗ったり棚を作ったりしながら、お店を仕上げたいと思っていて、実際に店内の壁はみんなで漆喰を塗りました!ちょっと大袈裟かもしれませんが、分担して作業を進めることでチーム力も上がったような気がしてます。

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・食材はなるべく地元の商店で賄う

itonowaプロジェクト自体が、地域と共にみたいな感じだったので、私たちも食材の調達は、出来る限り地域のお店にこだわりたいと考えていました。結果的にコーヒー豆はIWASHI(IWASHI COFFEE)さん、牛乳は石原(イシハラ牛乳)さん。石原さんは管理人さんの地元の同級生ですもんね。それからパンも近所の樋口(樋口金松堂)さんだし、野菜や果物は、はじめて参加した交流会で知り合った近藤(西喜商店)さんのお店だし、ご近所で協力してもらえるお店が見つかって本当に助かっています。

――:コーヒー豆は僕のお手柄だと思ってるけれど

それはどうかわかんないですけど…。でも本当にIWASHIさんには何から何まで教わりました。この出会いは私にとって凄く大きなものだったし、かけがえのない経験をさせていただきました。

補足5 当時「IWASHICOFFEE」はきんせ旅館に焙煎所を構える(2020年冬上京区に移転)itonowa管理人ときんせ旅館のオーナーが友達。

――:開店までには他にも苦労があったと思うけど、念願のオープン初日ってどんな感覚だったか覚えてる?

うーん、なんか色々な感情が混ざってましたかねー。もちろん嬉しかったですけど、不安もあったし、オープンの2日間はイベントやパーティーをしたので、めちゃくちゃ忙しかったし。でも皆さんの協力があってここまで来れたなぁという充実感はすごかったです!

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――:本当に怒涛のオープン2日間だった。でもここから“静かな”日々が始まるんだ...

そう、しばらくは暇でしたね。これは言っていいのかなぁー?暇過ぎて漫画とか読んだりもしてました。でもその分お店のことを整えることが出来たし、何ならitonowa全体のことも色々やってましたね。例えば「*字路雑貨店」さんと一緒に手書き看板を作ったり、クリスマスの飾りつけもハンドメイドでしたからね。あれはあれで楽しかったんですよ。管理人さんとは、会うことが多くなったので、この頃から距離が近くなったんですよね。

補足6 「*字路雑貨店」はitonowaの初期メンバー。雑貨店を営む紙・文具好き女子。2019年10月にitonowaを卒業(ご結婚)

――:何となく最初の頃は近寄りがたいって言ってたよね

どうだったかなぁ?でも管理人さんと遊んでばっかいられないので、店長としてお店を切り盛りしてくためにはどうすれば良いか?をずっと悩んでました。

・試行錯誤を繰り返しながら、やがてお店も安定

はじめのうちはイベント出店にも出来るだけ参加していましたし、GOODTIMECOFFEEでイベントや交流会も企画しました。特に1周年の時には、すごい人数のパーティー料理を作ったりもしたし、それなりに乗り越えてきたと思っています。

1周年パーティ

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あとご近所のおじいちゃん、おばぁちゃんが常連になって下さってお店の運営もこの頃から安定してきました。という矢先に2号店の計画が持ち上がってきたり、さらに私の妊娠も発覚…。

補足7 2017年11月に2号店「HAPPY BUNS」をオープン。HAPPY BUNSはコッペパン専門のベーカリーカフェ

――:この時は報告が重なって僕も驚いた!

子供を授かったので、無理することが出来ない時期もあって、みんなが2号店のオープン準備で忙しいのに、申し訳ないなぁと思ってましたが、そんな時でも色々な人にサポートしてもらえて感謝しかなかったです。

・そして結婚、産休へ

――:産休に入る前にitonowaで「フォトウェディング」もしたよね

次の店長探しなどで大変だったし、お腹も少しずつ大きくなっていたので、ドレス着れないかなぁと諦めていたら、小梅さんのご厚意で「フォトウェディング」が出来ました!自分の職場でブライダルの撮影が出来るなんて考えていなかったから、すごく嬉しかったです!!

補足8 「ヴィンテージウエディングドレス小梅」はitonowaの初期からのメンバー。レンタルのウェディングドレスを扱う(shop5)

――:“次期”店長を迎えるための準備を終えてひと区切り

その辺りはタクマさんに任せてましたが、以前アルバイトで働いてくれていた「おコメちゃん」に白羽の矢が立ち、GOOD TIME COFFEEに来てもらうことになりました。なので、イチからという感じでも無かったと思いますが、それでも急は急だったので、おコメちゃんは大変だっと思います。わたしへの“愚痴”なんかも含めて(中編)インタビューでご本人に聞いてください(笑)

補足9 「おコメちゃん」は2代目店長「コメ」のこと。

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――:次回予告の宣伝までしてくれてありがとう。ナッパには後編でも登場してもらうのでよろしく!

補足10 GOODTIMECOFFEEのインタビューは前・中・後編の3回を予定。中編は2代目店長“コメ”の奮闘記をお届けします。


・itonowa管理人の編集後記

ナッパはとにかく真面目でよく動く。今もそれは変わっていないし、何なら今はそれ以上かもしれない。でも唯一変わったとしたら、極度の人見知りから普通の人見知りに変わったことか。たぶん僕との距離もしばらくは詰まってなかったと思う。でもさすがに毎日会っていると何でも話してくれるようになる。中でも象徴のような出来事が婚姻届の証人を頼まれた時だった。照れくささもあったけど、なんか管理人冥利に尽きる気がした。2年数か月、初代店長として突っ走ってきた彼女が、産休&育休に入る最終日、僕なりに感謝の意を伝えた。なんか涙が出そうになった。と、思っていたら引継ぎだとか産休の手続だとかですぐにお店に現れた。おい!それはそれで困るだろ。


・店舗DATA

GOOD TIME COFFEE
-LIFESTYLE DESIGN COMMUNITY‐

ドリップ

住所:〒600-8364 京都市下京区突抜2-357
営業時間:10:00 – 18:00
定休日:年末年始
電話番号:075-202-7824
問合せ:cafe@takumadesign.com
web:https://goodtime.coffee/


インタビュアー / itonowa代表(管理人)



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