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日焼け止めの紫外線吸収剤ってどう肌に悪いの?ノンケミカルって何??

紫外線ケアのつよおい味方、日焼け止め。最近「ノンケミカル処方」って見かけるけど、成分表はケミカルっぽいカタカナがずらり…。ネットでは「紫外線吸収剤」がお肌に良くない!と言う情報もあるけれど、それもなんだかよくわからない…ノンケミカルとはいったい?紫外線吸収剤とは??

そんななんだか良くわからない化粧品の成分が、なんとなくちょっと知ってる成分になる。そんなnoteです。

■はじめに

▷紫外線吸収剤とは?
お肌の表面上で化学反応を起こして紫外線を吸収し、熱や赤外線などのエネルギーに変えて放出することで、紫外線が細胞に吸収されるのを防ぐ成分のこと
▷UVケア製品のノンケミカル処方とは?
お肌の表面上で化学変化を起こさない、「紫外線散乱剤」のみを使用してUV効果を得る処方のこと。

紫外線吸収剤も紫外線散乱剤も、どちらもメリットデメリットがある成分です。肌質や体質、環境やその日の生活状況に応じて適切なものを使い分けることで、お肌に余分な刺激を与えずに、快適に過ごすことができます。

日焼け止めには、紫外線吸収剤か紫外線散乱剤、または、その両方ともが配合されています。近年では、吸収剤が起こす化学反応による肌荒れやアレルギー反応を避けるため、化学反応を起こさない散乱剤のみを使用した日焼け止めを好む方も増えてきました。しかし、吸収剤だけでなく、錯乱剤も体質や肌質によってはお肌に合わない場合もあります。


■紫外線吸収剤のはたらきと、メリット&デメリット

吸収剤は、お肌の表面上で化学反応を起こして紫外線を吸収し、熱や赤外線などのエネルギーに変えて放出することで、細胞に紫外線が吸収されてメラニンが作り出されるのを防ぎます。熱を放出すると言っても、お肌に熱さを感じるレベルではありません。しかし、お肌の状態によっては、放出される時の熱や、化学反応そのもの、化学反応で変化してしまった物質などで、肌荒れや肌トラブルを起こしてしまうこともあるようです。

吸収剤が紫外線を吸収して化学反応を起こした時に、吸収剤の分子構造が壊れてまうことがあります。壊れてしまうと防御効果が低下してしまうので、こまめな塗り直しが必要なのです。また、壊れて変化してしまった物質は、肌荒れやアレルギー反応を起こしてしまう可能性があります。そのため日本では、決められた吸収剤のみを使用できる決まりになって居ます。


■主な紫外線吸収剤

紫外線吸収剤は、化学反応によって強力に紫外線を防止し、白浮きせず、滑らかで塗り心地が良く、汗や水に強いので、真夏の海水浴などのレジャー時に最適です。SPF30や50などの、高効果の日焼け止めには吸収剤と散乱剤の両方が配合されていることが多いです。

▷t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン

(医薬部外品名称:4-tert-ブチル-4′-メトキシジベンゾイルメタン)くもりりの日や室内にも届くUVAを吸収するUVA吸収剤。アボベンゾンとも呼ばれる

▷メトキシケイヒ酸エチルヘキシル

(旧称:メトキシケイヒ酸オクチル、医薬部外品名称:パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル)短時間でも肌が赤くなったりするサンバーンを引き起こすUVBを吸収するUVB吸収剤。オクチノキセート、オクティノクセイト(Octinoxate)とも呼ばれている。

▷ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル

曇りの日や室内にも届くUVAを吸収するUVA吸収剤。UVAは、太陽からとどく紫外線の90%を占めている。

▷オクトクリレン

(2―シアノ―3,3―ジフェニルプロパ―2―エン酸2―エチルヘキシルエステル)サンバーンを引き起こすUVBを吸収するUVB吸収剤。UVBは皮膚の細胞を傷つけ、皮膚ガンになる可能性をもたらします。

▷オキシベンゾン-3

(医薬部外品名称:オキシベンゾン)UVAもUVBも吸収できる紫外線吸収剤。


■紫外線散乱剤のはたらきと、メリット&デメリット

錯乱剤は単純で、お肌の表面を粒子で覆い物理的に紫外線を反射・散乱させることで、細胞に紫外線が吸収されてメラニンが作り出されるのを防ぎます。なので、UVAもUVB、ブルーライトにも効果があります。化学変化を起こさないので、お肌への負担が少ないと言われています。

散乱剤は主に白色顔料で粉体のため、皮脂を吸収しやすく乾燥を感じたりすることもあるようです。また、白の顔料でもあるので塗った際に白浮きしやすく、粉体なので、汗で流れ落ちやすい成分でもあります。しかし、白浮きを軽減させるために別の散乱剤と混ぜ合わせたり、ナノ化させた粒子を使用したり、乾燥でのカサつきを軽減させるコーティング加工を施したり、シリコーンなどでコーティング処理し撥水性を高めたり、などの様々な工夫がされていることもあります。

散乱剤に多く使われている、酸化チタンや酸化亜鉛をナノ化した成分は、皮膚から吸収されてしまうと悪影響を及ぼす可能性がある、と懸念されましたが、これらのナノ粒子はお肌に吸収できるほど小さくないので問題ないとされています。また、吸引によっての被害も、ナノ化酸化チタンを製造している工場で働いている方への懸念であり、化粧品として使用する場合は問題ないとされています。(*1)しかし、ファンデーションなどの粉より細かいため、毛穴やシワ、お肌のキメの溝に入りやすくなっています。毛穴の黒ずみや肌荒れの原因にならないように、使用後は丁寧なクレンジングを心がけた方が良さそうです。

■主な紫外線散乱剤

紫外線散乱剤は、化学反応を起こさないため化学反応や反応時に起こる刺激もなく、成分が変化しないので、付けたての時と同じ効果が続きます。しかし汗や水に弱いため、水辺のレジャーや、汗をかいてしまうシーンには向いて居ないと言えます。

▷酸化チタン

酸化亜鉛と比べて、反射率やカバー力、安全性が高く、ファンデーションにも使われている成分。シリカや水酸化AIなどで酸化チタンをコーティング処理し、白浮きを軽減させたり、撥水性を高めることもある。

▷酸化亜鉛

酸化チタンに比べて、皮膜力は弱いものの、白くなりにくいため酸化チタンと一緒に使用されることも多くある。酸化亜鉛も、ファンデーションなどにも使われている成分。

▷酸化セリウム

(INCI:Cerium Oxide)セリアとも呼ばれる、希土類酸化物(レアアース)のひとつ。近年、紫外線散乱剤としても使われ始めた。酸化チタンのように白浮きせず、比較的高めの紫外線防止効果を発揮できるそうです。日焼け止めのほか、サングラスなどのUV加工に使用されている。(*2)


■ハワイで使用禁止になった紫外線吸収剤

オキシベンゾンとオクチノキサートを使用した日焼け止めを塗ったまま海で泳いだり、洗い流した際に下水道を通過し海中に溶け出してしまうと、化学物質が水中に溶け、サンゴの生体に影響を与えてしまっている可能性がある。という研究が2015年に発表され、2018年5月アメリカ・ハワイ州で、オキシベンゾンと、オクチノキサートが配合された日焼け止めの販売、配布を2021年1月1日以降禁止する法案が可決されました。(*3)

オキシベンゾンは、現在日本では、あまり使われていない紫外線吸収剤です。「オクチノキサート」はあまり聞き・見慣れない成分な気もしますが、これはメトキシケイヒ酸エチルヘキシルのことで、これは、日本でとてもよく使われている紫外線吸収剤です。

また、ノンケミカル成分である、酸化チタンや酸化亜鉛も、ナノ化してある場合はサンゴに影響があると考えられているそうです。(*4)


■オキシベンゾンは環境ホルモン?!

環境ホルモンとは、いろいろな生体の代謝や成長、生殖になどに必要なホルモンの働きを狂わせてしまう物質のこと。科学的には、内分泌かく乱物質と言います。

オキシベンゾンの中でも、オキシベンゾン-2(ベンゾフェノン-2)は内分泌かく乱剤である疑いがあります。現在の日本の日焼け止めにはほとんど使用されて居ない成分ではありますが、もし利用する製品に配合されている場合は、オキシベンゾン-3やオキシベンゾン-1などであっても念のため避けた方が良い成分と言えます。(*5)


■日焼け止めを選ぶポイント

通常、SPF30程度あれば十分に紫外線予防できると言われています。吸収剤の有無だけでなく、その日の天気や予定、肌質や体質も加味して、その日にぴったりの日焼け止めを選ぶこと、きちんと塗りなおすこと、そして、しっかり落とすことが大切です。

▷吸収剤と散乱剤のメリット&デメリットで使い分ける

▷予定によって使い分ける

そのシーンでも、2~3時間ごとに塗りなおすのが良いとされています。(*6)

▷家で過ごす日の日焼け止め
主に室内で過ごし、少しお買い物やゴミ捨てに出る程度の外出であれば、SPF15〜20/PA++くらいがちょうど良いです。水仕事の後に、塗り直しを忘れずに。

▷通勤やお散歩、少し外に出る日の日焼け止め
通勤時やランチ、お散歩や少し遠出くまでお買い物に行く場合はPF20〜30/PA++〜+++が良さそうです。朝の通勤で汗をかいてしまったら、ランチに出る前に塗り直した方が良さそう。

▷1日外で過ごす日の日焼け止め
日差しの強い季節に、海やプール、公園やテーマパークなど1日外で日差しを浴びる日はSPF50/PA+++〜++++だと安心。トイレなどのタイミングで日焼け止めの塗り直しも忘れずに。


■最後に

「ノンケミカル」と「紫外線吸収剤」、そして日焼け止めと成分について、なんとなくちょっと知ってる成分になったでしょうか。ハワイ旅行の予定のある方は、2021年以降は持ち込めるのか?なども気になりますね。

吸収剤も散乱剤も、どちらも全ての肌質に合うと言い切れません。成分を知るのも大切ですが、お肌と合うかはもっと大事。初めて使うスキンケアなどは、テストしてから使用するよう、心がけましょ。

■いとしはだとは

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参考文献

*1:日本化粧品連合会「化粧品のナノテクノロジー安全性情報」2018年9月https://www.jcia.org/user/common/download/approach/nanomaterial/180903.pdf(最終閲覧日:2019/6/18)
*2:渡部 敬二郎, 粂井 貴行, 殷 澍, 佐藤 次雄「形状を制御した酸化セリウムの特徴とメイクアップ化粧品への応用」日本化粧品技術者会誌,2014年,48巻1号,p11-18(最終閲覧日:2019/6/19)
*3:ELAINA ZACHOS,ERIC ROSEN「What sunscreens are best for you—and the planet?<https://www.nationalgeographic.com/travel/features/sunscreen-destroying-coral-reefs-alternatives-travel-spd/>NATIONALGEOGRAPHIC,2019年5月(最終閲覧日:2019/6/19)
*4:Julia Belluz「Hawaii is banning sunscreens that kill coral reefs」<https://www.vox.com/2018/7/2/17525496/hawaii-banning-sunscreen>VOX,2018年7月(最終閲覧日:2019/6/19)
*5:平成29年度第1回EXTEND2016化学物質の内分泌かく乱作用に関する検討会「化学物質の内分泌かく乱作用に関連する報告の信頼性評価について(案) 」2017年9月,p19-33(最終閲覧日:2019/6/18)
*6:日本化粧品連合会「紫外線防止の基本」<https://www.jcia.org/user/public/uv/prevent>(最終閲覧日:2019/6/19)

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