NY心霊捜査官

NY心霊捜査官(2014年:アメリカ)
監督:スコット・デリクソン
制作:ジェリー・ブラッカイマー
配給:スクリーンジェムズ
出演:エリック・バナ
  :エドガー・ラミレス
  :オリヴィア・マン
  :ショーン・ハリス
 
アメリカニューヨーク市警の元刑事、ラルフ・サーキの実録を元に制作された、悪霊を感知する力を持ってしまった刑事が悪霊と対峙する心霊サイコホラー。
主人公の刑事は女性や子供に対しての犯罪者には制裁を加えすぎてしまう荒っぽい刑事。赤ん坊が犠牲になった現場から直行したのはイラク戦争帰りの元兵士が妻にDVを加えた現場。逮捕はしたが、その翌日は動物園で母親が子供をライオン舎の濠に投げ込んだという事件が発生。発見された母親は獣のように必死に地面を掘り返して、口から泡を吹きだしながらジム・モリソンのドアーズの歌詞の一節を連呼していた。そしてそのライオン舎の中には黒パーカーのフードをかぶった男がいた。奴は刑事を挑発するかのようにおびき寄せ窮地に陥らせる。逮捕された母親の後見人であるイエズス会の司祭は刑事に何かあれば連絡をくれと言づける。そして事件は怪奇な方向へと進み始める。なぜ黒パーカーの男は犯罪の現場に現れるのか。なぜ刑事を挑発するかのように表れるのか。
不気味な未知の存在が人に取り憑いて忍び寄るように害悪を成していくのが恐ろしい。特に画面は暗さを基調として、絶えず雨が降っているため陰鬱な気分をかき乱してくれる。そして意味不明な文字や字幕もなく聞き取りにくい騒音や呟きが更に不安にさせてくれる。その根源が黒パーカーのフードをかぶった男。神出鬼没に表れ、狙った人物を狂気に堕とし込み、反撃してくるものは怪力と妖しい力で葬り去ってしまう。刑事は司祭の協力を得て、その正体を追っていく。
エリック・バナが怒れる正義感にあふれた刑事を熱演。DV犯罪を憎み、犯罪者を容赦なく追い詰める。過去には母が犠牲になりそうな窮地を助けて強盗を殺してしまったり、幼児を狙った犯罪者を捕まえた時は殴りまくって過殺している。怒りの表情がどこか悲しげでもあり、本当にDVを憎んでいるという雰囲気が十分。確かこの人、過去には怒りで変身する緑色怪力ミュータントやってたな。だからこの役をキャスティングされたのかなと妄想。そんな彼には特殊な能力があり、事件になりそうな事案や通報に飛び込んでいく。作中ではレーダーと揶揄されていたが、悪霊の声や姿を知覚できる能力を持っている。そのため彼しか見えない、聞こえないという存在が彼を悩ます。そして自分の怒りっぽさを後悔しており、特に仕事にかまけて妻と娘をないがしろにしていることも悔やんでいる。当初は未知の存在に直面して戸惑っていたが、ラストでは立ち向かっていく姿がカッコよかった。
その彼に協力する司祭もなかなか面白いキャラクター。聖職者ではあるが煙草をふかし、アルコールも呑む。薬物中毒者だった過去もあり、深い仲になった女性に悪魔が取り憑いたことで悪魔祓い、エクソシストとして悪霊と対決する専門家となる。取り憑いた人物に悪魔祓いをし始めると、ラテン語で聖書の一節をまくしたて、十字架を掲げて対峙するシーンは迫力があった。ラテン語には字幕がないので更に必死さを表現していた。
そんな二人が最後に警察署の取調室で悪魔祓いを行うクライマックスは圧巻。窓ガラスを風雨が突き破り、身体中呪いの言葉を刻み付けた犯人が血走った眼で抵抗し、時には欺瞞を見せて二人と争う。派手な格闘や立ち廻りはないのだが、悪魔の声に耳を傾けてはならないと言いながら、その悪魔の声に心をかき乱されるシーンは恐怖を感じた。確か昔の名作もそんなこと言ってたなと思い出した。それに何かのドキュメンタリーで実在のエクソシストを観たが、同じように悪魔と言葉で戦っていた。本当かどうかは分からないが、人が人智の枠外にあるものとコンタクトをとるのは危険を伴うものだと実感できる。
このストーリーは実話をもとに制作されており、主人公であるラルフ・サーキは本当の元警官の悪魔学者。常に霊験あらたかな十字架と聖水を携行し、今もアメリカで悪魔祓いを行っているという。残念ながら自分は実証的唯物主義傾向のある人間だが、やっぱりホラーは面白いと思うので、ネタとしては興味深いなと感じてしまう罰当たりです。

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