キカイダー REBOOT

キカイダー REBOOT(邦画:2014年)
監督:下山天
原作:石ノ森章太郎
出演:入江甚儀
  :佐津川愛美
  :鶴見慎吾
  :原田龍二
  :高橋メアリージュン
 
機械が心を持つことは可能なのか。心を持った機械は人と共存できるのか、もしくは脅威となってしまうのか。数々の特撮ヒーローを生み出した石ノ森章太郎の作品の中でも、人工知能やロボットなどのこれからの未来を示唆する意欲作を、かつてのTV特撮シリーズをREBOOT(再起動)させた作品。
日本政府は国家プロジェクトとして高度なロボットを生産しようと計画。労働問題や危険な作業の解決として期待されていたが、その背後には国防大臣による軍事利用を目的にされた計画だった。計画の主任博士は平和利用を強く願っていたが事故死してしまう。その後博士の遺児である姉弟は自宅を特殊部隊に拉致されてしまう。そこに一人の青年が登場。彼は銃撃されてもダメージを負わず、キカイダーへと変身し特殊部隊をなぎ倒す。大型ロボットも現れて三人を襲うが、キカイダーはそれを退けて二人を救出。姉はキカイダーを拒否するが、脅威は彼らを逃さず、逃亡劇が始まる。キカイダーに搭載された良心回路は何を思うのか。
ストーリーは力技的なご都合展開を感じるが、感情を持たないはずのキカイダーの「人間を守る」というテーゼが悲しく見える。どんなに襲撃されても人間は殺害せず、最小限のダメージで無力化させている。壁際に追い詰めた敵の顔面を殴りつけようとしたが、寸でのところで思いとどまり、開放するなど人の情けを感じてしまう。役の俳優が表情を変えず演技しているので機械的に感じるが、その無表情で優しさを遵守する姿には悲哀がにじむ。姉弟を身を挺して守る姿は悲劇的。ボロボロになっても立ち上がってくる姿に石ノ森ヒーローの系譜を感じた。例のマスクのバイク乗りヒーローとかもそうだし。
特撮なので演技演出も大げさにして小さなお友だち向けかと思いきや、演技のしっかりした俳優が大多数で、ヒロインでもある姉役は演技が素晴らしい。キカイダーを拒否しつつも彼を心配する複雑な心境を表情で表しており、彼が窮地の際の悲痛な叫びは本当につらい。その姉と弟を行きがかり上助ける、原作では探偵だったが時代に合わせてネットジャーナリストは、いかにも軽薄だが決して悪人ではない人の良さを見せ最後まで彼らを助ける。ちょっと世間をお騒がせした人だが、演技は信頼できる。その他、大ボスの総理大臣はこの手の陰謀劇にお馴染みの俳優。うさん臭さがもう人間国宝級。ビジンダーは変身しないがエキセントリックで機械的な雰囲気をまとっているのでよし。残念なのは見せ場あるものの最後はストーリーに関わらない。主任博士は…、特に褒めるとこはない。
それでも観終わって不満点が出てくるもので、まずキカイダーの造形が自分好みではなかった。原作を踏襲して、これまた石ノ森章作品の再コミカライズを手掛ける漫画家村枝賢一がデザインしており、善を表す右半身の青に対して、悪を象徴する赤い左の対比が完成され過ぎているように見えた。機械としても生命としても不完全なキカイダーの造形を表していないように感じる。TV版の造形の方がチープかもしれんが不完全さをよく表現していたと思う。しかもそれほど強くない。人間や大型ロボには無双の強さを見せるが、主要な敵には結構ボコられている。格闘アクションは凝った演出があり、よく考えられているが、単調になりがちで飽きる。最後の手段を使っても同じようなアクションが続くので、何のためにやったの?と思わされる
そして一番の不満。オレの中では三大ダークヒーローの一角、ハカイダーにワルの美学を感じない。その誕生はコンプレックスから生まれたという時点でなんか違う。別にハカイダーは機械として頂点を極めようとしているわけではないんだがなぁ。あくまでもキカイダーを破壊するために行動する。そのために己の美学を貫き通すところがシビれるんだけどなぁ。デザインも現代的にアレンジされているが、ゴテゴテしていて余計な気がする。こう見ると石ノ森漫画やTV版のデザインは時代的ではあるがシンプルで説得力があったんだなと思い直す。
現代、実生活にAI技術を取り入れようと社会が動き始めている。ロボットは実用化されている技術もあり、昭和の時代に夢見たSF世界が現実になりつつある。ただ、人の心を介さない技術は必ず暴走し人も機械も破滅に向かうことになる。この作品でも人の心を機械取り入れる必要性を訴えていた。かつての巨匠たちもその点を危惧しながら作品を作り上げていたんだろうと思う。願わくば人と機械が共存できる未来であってほしい。
もしかして続編作るのかな、これ。

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