キングオブコント2022

そもそも準決勝の段階から、ビスケットブラザーズには追い風が吹いていた。

準決勝の1日目を運良く鑑賞できたのだが、準決勝の舞台となった新宿文化センター(大ホール)は1800人キャパ。お笑いライブをやるにしてはかなり大きなサイズである。そこで発生したのが、ホールの反響が良すぎて、セリフが聞き取りづらい場面が何箇所かあったことだ。

特に、声が細かったり甲高かったり、繊細なやり取りをするコンビやトリオは苦戦を強いられた印象があり、蛙亭、ザ・マミィなども、そうした音響的な不運が結果を左右した面は否めない。

一方でビスケットブラザーズは、ふたりとも地声が太く、大きい。ホールでもしっかりとその声が届くため、迫力満点であった。実際、1日目のウケ量で言えばビスブラはトップクラスで、その勢いが決勝まで持続したところはあるだろう。また、ネタのタイプとしても、そういった勢いと迫力がキャラクターの面白さに相乗効果を与えるものであったのは、決勝で披露された2本を見た方にはわかっていただけるのではないか。

ビスブラは、身体的特徴を存分に活かしたキャラクターや設定のファンタジー加减がまず素晴らしい。さらに、つながっているのかいないのかわからない絶妙なセリフの掛け合いも大きな武器である。「国とは関係のない公務員」、「プロ野球チップスを集めている」くだり、そして無意味な「ダイスケゴール」を挟み込む大胆さなど、そのフレーズがちゃんと「画」の面白さに繋がるのが最高。個人的には岸和田出身の運パラさん(=キングオブコントが好きすぎて、誰よりも早く情報を収集することからついた原田のあだ名。運営の原田さんの略)の持つお祭り感が存分に発揮されるネタ「おまつり」が大好きなので、このビックウェーブに乗っかってテレビでも披露されてほしい。

ま、賛否両論は出るタイプのコンビとネタであろう。「好き嫌いはあれど、全員の総意として空気階段かな」という去年が異常なのだ。

ファイナル進出のや団、コットンは2本目も抜群に面白かった。

や団の1本目はこれまでにテレビでも披露されている言わば既存ネタだったので新鮮味はなかったものの、ちょっとホラーな展開は今回の中では突出していた。2本目も人間の悲哀と狡猾さと暴力性が3人の掛け合いからバランス良く出ていて、リアリティという言葉が展開の異様さを後押ししていた。

コットンの2本目、タバコネタは、初見のときから最高に好きなネタのひとつ。タバコを吸う所作の数々が何より素晴らしい。1本目もそうだが、きょんの演技力と、どう考えてもエリート街道を歩いてきた西村の、年齢を重ねてちょっと肩の力が抜けてきた塩梅が良い融合を果たしているのではないだろうか。

ネルソンズ、かが屋、最高の人間あたりは、いつどこが優勝を獲得してもおかしくないのではないか。和田まんじゅうは、キャラクターそのものが完璧なので、ほかの2人との関係性に幅が出たらもっと面白くなりそう。かが屋は2本目に用意されていた占い師のネタが好き。ベリーショートの素晴らしい活用法である。かが屋のようなコントはありそうで他にはないので、いつもKOCでは見ていたい。

最高の人間は、今回のネタが吉住と岡野それぞれのピンネタ(良いところ)を合体させた感がすごかったので、それが「最高の人間」用になったら手がつけられないのでは。

マンゲキ組3組のうち、ロコディとニッポンの社長は順位・点数上はわりと残念な結果に。ロコディは兎くんが面白いので延々見てられる。最近はテレビにも良く出ているので、キャラが浸透すればするほどウケが伸びていくはずなので未来は明るい。

ニッポンの社長も、準決勝では爆ハネだった暗転と効果音が敬遠されてか点数は伸びず。ケツのフォルムと表情、あと持ち前のバイオレンス要素をどう活かすかで苦悩する辻クラシックが目に浮かぶ。ケツをコントロールする辻、という構図から一歩抜け出したらはっきりと進化しそう。ケツが審判に、辻クラシックがトラキチに扮するネタはほっこり安心するので好き。

クロコップ、いぬの2組で言えば、遊戯王を下敷きにしたクロコップが決勝進出でかなり知名度も好感度も上がって人気が出そう。いぬは準決勝のときから悲鳴があがっていて、枠としたら「どぶろっく」枠なんだろうけど、実際の「行為」をメインに置かれると「ライブ」向きで「テレビショー」からはかけ離れてしまう気がする。

準決勝敗退組では「サルゴリラ」と「ななまがり」が好きでした。

ということで今年もKOCは楽しかったです。ちなみにビスケットブラザーズの出囃子はアクアの「Cartoon Heroes」です。

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