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崎山蒼志、全国ツアー“はたち・みずのかたち”を完走! 変化こそ成長――そう思わせる彼の姿勢が浮き彫りになった恵比寿LIQUIDROOM公演をレポート

※崎山蒼志さんのライブツアー「TOUR 2023“はたち・みずのかたち”」のオフィシャル用ライブレポートです。ショート版のほか完全版を作ったので、許可をいただきこちらに全文を。

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 6月16日(金)、東京・恵比寿LIQUIDROOMのライブにて、シンガーソングライター・崎山蒼志の全国ライブツアー「TOUR 2023“はたち・みずのかたち”」が千秋楽を迎えた。10代でメジャーデビューを果たし、20歳となってからは初の全国ツアーになった今回。4月~6月までの3ヶ月間、全11公演で構成され、前半の8公演は崎山のソロ弾き語りで、千秋楽を含む後半の東名阪3公演は、ドラムとベースを加えたバンド編成によるパフォーマンスとなった。

 2022年にメジャーセカンドアルバム『Face To Time Case』を、その後もデジタルシングル「A Song」「I Don’t Wanna Dance In This Squall」「覚えていたのに」と立て続けに配信し、2023年に入ってからも既存楽曲のオーケストラアレンジをリリースするなど、その勢いに現在の充実度を感じさせる崎山。7月19日は人気アニメ『呪術廻戦』「懐玉・玉折」のエンディングテーマとして新曲「燈(あかり)」のリリースが発表されており、20歳を迎えたタイミングでますますその注目度は増している。

 そんな中で敢行されたLIQUIDROOMでのライブ。開演前、BGMとして米バンド「Deerhoof(ディアフーフ)」によるオルタナ・サウンドが会場に流れ、そこからOTTOの「About You Now」につながると、崎山(Vo./Gu.)、有島コレスケ(Ba.)、高橋直希(Dr.)が登場。崎山が世に出るきっかけとなった代表曲「Samidare」のイントロが鳴り響くと、会場を埋め尽くしたオーディエンスから大きな歓声が上がった(この日の公演は、マスク付きという条件ながら声出しはOK)。

 崎山がMCで、「“みずのかたち”というツアータイトルは、新鮮で、常に違う形で出ていく“湧き水”に影響を受けた」と語っていたように、今回のライブは、変化を厭わず、貪欲に新たなサウンドを取り入れようとする彼の姿勢が強く伝わる内容であったと言える。もちろん、主軸になるのは崎山が掻き鳴らす乾いた質感のギターだが、特にこの日はバンド編成ということもあり、「過剰/異常」、「花火」、「逆行」といった楽曲は、USオルタナ~インディー・ロックと共振するエモーショナルさを強調したものとなっていた。一方で、テンポを落としてグルーヴィーに会場を染め上げた「嘘じゃない」、代名詞であるオベーションのギターを置き、ハンドマイクスタイルで歌唱した「Pale Pink」、オートチューンを駆使したエレクトロ・ダンス・ポップ「I Don‘t Wanna Dance in This Squall」など、フレキシブルに形を変えていく崎山の“声”を活かしたサウンドも大きなポイントであったと言えよう。

 また、中盤ではソロで未発表曲「Swim」を披露。水の音をSEとして全面的に配したこの楽曲は、なんと13歳のときに作曲したものだという。その心の奥底まで深く潜っていくような強い没入感はまるで“水の中”。これまで熱気に包まれていた会場を一変させた時間となった。

 ライブ終盤、人気曲である「潜水」では、バンド編成ならではのダイナミックな展開ののち、崎山が轟音のギターノイズを鳴り響かせ、最後はギターを放り投げるパフォーマンスも。そして本編ラストは、凶悪でトリッキーなダンスビートと強靭なバンドサウンドが奇跡的に融合した「水栓」で締めくくった。全17曲約75分、MCも最小限で駆け抜けた、まさに怒涛のステージ。崎山も、指がつったり、ギターの弦が切れたりするアクシデントに見舞われながらも、ときにはギターを持ちながら横転する派手なアクションも見せて力強く乗り切っていたのが印象的だった。

 オーディエンスからの熱い声援に応えて行われたアンコール。さきほどまで激情を露わにしていたとは思えない柔和な表情と穏やかな声色でグッズを紹介した崎山は、続けてニュー・アルバム『i 触れる SAD UFO』が8月9日にリリースされること、そして10月から東名阪クアトロライブツアー「燈火」が開催されることをサプライズで発表。また、ニューシングル「燈」を引っ提げた全国フリーライブの情報も解禁された。その後、初披露となるアルバム収録曲「いかれた夜を」、そして2時間近く立ちっぱなしのオーディエンスに向けて「足腰を本当にねぎらって」と優しい言葉をかけたあと、「My Beautiful Life」を演奏し、一度目のアンコールは終了した。それでも鳴り止まない拍手と歓声に感謝を伝えるべく、崎山は予定にはなかったダブルアンコールのためにひとりでステージへ。ここでは「ソフト」をパフォーマンスし、ついに90分超の公演は大団円を迎えた。

 十代を鮮やかに振り返るようでいて、これからの変化・進化にも大きな期待を寄せることができたこの日のLIQUIDROOM公演。7月19日にリリースされる「燈」を皮切りに、ニュー・アルバム、ライブツアーと大きなトピックが続く崎山蒼志から、2023年後半もやはり目が離せなくなりそうだ。(文:森樹)


01. Samidare     

02. 過剰/異常     

03. 通り雨、うつつのナラカ  

04. 嘘じゃない     

05. 幽けき      

06. 舟を漕ぐ     

07. Pale Pink     

08. I Don‘t Wanna Dance in This Squall 

09. Heaven     

10. Undulation     

11. 覚えていたのに    

12. Swim    

13. find fuse in youth   

14. 花火      

15. 逆行      

16. 潜水      

17. 水栓      


En1. いかれた夜を   

En2. My Beautiful Life

En3. ソフト


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