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岡村靖幸@人間交差点2019

岡村ちゃんの得体の知れなさ、みたいなものが垣間見えたのが人間交差点でのパフォーマンスだった。絶賛ツアー中で、約3時間の濃密なDATEを決めているのに、この日に見せた表情はまったく違う。単なる短縮版でも、はじめての方にも優しい、といった“フェス仕様”でもなく、むしろコアな岡村ちゃんがむき出しにされる感じ。ア・チ・チ・チで気合のダンスからスタートするとか素敵そうじゃん。実際、素敵だった。

あれだけの歴を持ってる、ベテランと評してもおかしくはない岡村ちゃんだから、大人の風格を見せつけるようなパフォーマンスでもいいわけだけど、日暮れ時、天気も含めた会場の良好なグルーヴに敏感に反応して、そこでしか見せないようなエッジーな空間を創り上げていた。岡村ちゃんも明らかにテンションが上がっているのが伝わってくる。その意味で、会場との一体感はやっぱり大事だというのを実感。ヒップホップを中心にしつつ、異ジャンルのアーティストをブッキングし続けてきた人間交差点、及びRHYMESTER、そしてフェスを支えてきたファンの懐の深さがもたらした結果ではなかろうか。よく考えたら、NORIKIYOとPUSHIMと岡村ちゃんが揃ってるとか他のイベントではあり得ないものね。あ、FNCYで出演していたG.RINAの「聖書」カバーは官能的ダンストラックで良いですよ。

人間交差点というワードを縦横無尽にチョップしたブレイクビーツ的コール&レスポンスも最高に楽しかったし、少年サタデー、愛はおしゃれじゃない、ビバナミダといった近年のシングルもガツンとインパクトを残していて。キックとのコラボだった住所のサビメロをねじ込んだりと、サービス精神も旺盛。KREVAと大トリのRHYMESTERに挟まれた、普通だったら難しいタイムテーブルを、全開のアクションで乗りこなした姿は目に焼き付いている。もちろん開催中のツアー「セレブリティ」も鹿児島、サンプラと観たけれど、こちらも凄まじい内容。まだもう一公演観に行く予定があるので楽しみ。

去年は豪雨にあたってしまった人間交差点、今年は超快適だったし良いライブも多かった。RHYMESTER結成が89年、岡村ちゃん『家庭教師』が90年。宇多丸がMCで、ヒップホップが本来持ち合わせるべき切実、リアリティを獲得していた作品として『家庭教師』を紹介していたけれど、その切実さが30年越しにヒップホップヘッズとクロスする現場で体感できた、というのは、まさにこのフェスティバルの醍醐味だったのではないでしょうか。

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