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あらかじめ決められた恋人たちへ@渋谷タワレコCUTUPSTUDIO

あら恋、2015年一発目のライブ。
オープニング〜「ヘブン」からスタートし、「前日」で終わるセット。アンコールは昨年の名古屋公演で好評だったというDUBセッションから「ラセン」に突入する怒濤の流れ。時間にして約1時間10分、昨年のFEVERでのイベントやキネマ倶楽部で披露されていた新曲は外され、「back」や「fly」も演奏せず。
セットリストだけで判断すると新鮮さに欠けるようにも感じる。だが、アレンジは細かく変更されており、そこには制作中だというニューアルバムを意識した試みが随所に見られる興味深いパフォーマンスだった。
具体的には、ユニット元来の魅力であり特徴であるDUBにもう一度立ち返ろうとしている点だ。「ヘブン」でもかなりの勢いで“トバし”ていたし、長尺の「テン」でも、音源よりも低音重視の濃厚なサウンドを響かせていた。劔さんが紡ぎ出す、這うようなフレーズもグッと深みが増していたように思う(ベースを変えたそうです)。アンコールのセッションはその最たるもので、ああいった即興性のあるグルーヴのなかから新曲が生まれていけば面白いことになりそう。

池永さんもライブの前に「なんか滅入ることばっかりだし、ライブで音楽で」とTwitterで前置きしていた通り、毎日何かしらのネガティブなニュースが聞こえてくる昨今である。自身の生活すらままならないのに果たして自分に何が出来るのだろうか?と苦悩するし、時には辛い気持ちも芽生えるものだ。それが人生と言えばそれまでなのだが、そうした感情の変遷に寄り添ってくれる音としてのあら恋の存在感は、やはり強い。答えを求めるのではなく、前に向く感情を後押しする。それは、長年インストユニットならではの手法で世間と対峙してきた池永さんの強さであり、優しさでもあると言えるだろう。彼らが原点たるDUBに回帰しようと模索している姿を観て、そんなインストゥルメンタルとしてのあら恋の魅力とメッセージを再確認した夜だった。


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