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僕の気になる彼女は(アツシVer.)【短編小説】1100文字

気になる子がいる。登校時のバスが同じ子だ。
たまたまバスで話す機会があって、そのまま一緒に学校まで歩くこともある。
バスで会うとなるべく彼女が座っている席の方に移動している。
その方が同じタイミングで降りて、学校まで一緒に歩けるから。
些細なきっかけを僕の意思で繋げているのだ。

学校までは自転車でも通えるが、バス通学をやめなかった。
これが彼女との唯一の接点だからだ。校舎に入るとほとんど会わない。クラスがある階が違うからだと思う。
バス代がかかるが、大した趣味もないから往復400円ぐらい、彼女に会えるのなら構わない。
その代わり、姉ちゃんが作ってくれた弁当がない日も、自分で残り物のおかずを詰めて弁当を持って行くことにしている。

今日も運よく一緒に学校まで歩くことができた。
「もうすぐ夏休みだね。瀬戸くんは何してるの?」
「バイトするんだ。市民プールの監視員。津田さんは?」
「私は毎日部活だよー。バドミントンってあんまり窓開けられないから夏は辛いよ。」
「え、体育館って夏はただでさえ暑いのに。なんで?」
「風が強いとシャトルに影響するんだ。でも、流石に少しは開けてる。じゃないと倒れちゃうもん。」
「そっかー。」
会話が途切れる。一緒に歩けることは嬉しいのだが、会話が続けられない。
彼女とだけではない。
話してくれたら聞くし、相槌も打てる。ちょっとは投げ返すこともできるが、相手がキャッチしてまた投げれるような球だとは限らない。
僕は彼女と歩けるだけで嬉しいのだけど、彼女はどう思っているのだろう。

「その市民プールって高校生も入れる?小学生ばっかりとか?」
!!!
「高校生もいるよ。流れるプールやちょっとしたスライダーもあるし。」
「部活帰りに行ってみようかな。駅から遠い?」
「駅からバス出てるよ!」
彼女が笑った。平常心を保とうとしたけれど、鍛えなれていない心には無理があったらしい。
僕たちは立ち止まってスマホを取り出した。

朝のホームルームが終わると木村が席までやってきた。
木村はクラスのムードメーカみたいなやつだ。お調子者ともいう。
「なぁ、1組の津田さんと知り合い?」
登校時の様子を見られていたんだろう。ん?津田さんのこと知っているのか?
「朝のバスが一緒なだけだよ。」
「へー。仲良さそうだったから。アイツ、このこと知ったらどうすっかなー。」
「なに、アイツって?」
「イズミだよ。髙橋イズミ。知ってる?隣のクラスのイケメン。」
「え、彼氏とか・・・?」
「違うけどさ。って、言うなよ。アイツも津田さん好きみたいだから。」

気づいたら木村は去っていて、1限目が始まろうとしていた。
隣のクラスにイケメンがいることは知っていたけど、津田さんと知り合いなのか?
木村、口軽すぎだろ。言うなよ。聞きたくなかったよ。
僕は否定したか?好きじゃないって・・・

この気持ちはどうすればいいんだよ。

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