林いつり

飽き性ですが頑張ります。 アイコンは娘(当時三歳)の傑作です。

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中2女子のカナダ滞在記 2

空港を出発したケイトさんのセダンは、空を走るような長い橋を渡り、ぐんぐんと進んでいく。車窓から見える景色は何もかもが日本と違っていて、私は息をするのも忘れるほどに食い入るように外を眺めていた。 まず当然ながら車線が違い、車は左側通行である日本と違い右側を走っていく。車の作りもそれに合わせて違い、車に乗り込むときに左側の前方に進むと座席にハンドルがあったのでびっくりした。いつもは運転する母が座っている位置に自分が座っているのが不思議でならない。 そして標識はこれも当たり前だ

    • ファミリーRPG2

      「わぁぁ・・・」 「・・・・・・」 「うわあぁぁ・・・わー!!」 「ね、生えてるでしょ?」 「生えてるー!!」 洗面所の鏡を前に、ナツは黒目がちの目をまん丸にしてキラキラ輝かせていた。怖がりな性格なので泣き出すかと思ったけれど、むしろ嬉しそうにニコニコしている。大きく開いた目をよく見るとほぼ黒い黒目の中にうっすらと縦型の瞳孔が見える。そして起きた時には気付かなかったが、階下に降りている最中彼女の尻周りで何かが蠢いているので失礼して覗いてみると、茶色い毛を主体に先だけ黒い、長

      • ファミリーRPG1

        その日は朝から奇妙な事が起きた。 いや、奇妙、では済まないほどの事が。目が覚めたはずなのに目の前の光景がまさに夢のようで信じられず、私は目を擦ったり頭を振ってみたりした。でも、信じられないその光景は一切変わらない。 隣ですやすやと眠っているもうすぐ7歳になる愛娘、ナツの頭に、犬や猫のような三角の耳が付いている。心地の良い寝息と共に、ふかふかの薄茶色の毛が細かく生えたその耳はぴくぴくと動いている。なんだこれは。 呆然と見つめたまま固まっていると、ふかふかの耳が一際大きくバタ

        • 中2女子のカナダ滞在記 1

           外国の匂いがする。  降り立ったバンクーバー国際空港のロビーで、中学2年生の私は絶望して立ち尽くしていた。周りを見渡すと、白い肌に高い鼻、当たり前のように行き交うめちゃくちゃ早い英語の会話。同行者である塾講師の椎名先生と、初対面の他のクラスの女の子以外、ぱっと見たところ日本人は見当たらない。どうしてこうなったんだ。  話は1ヶ月ほど前に遡る。中学生になる直前、兄弟も皆通った馴染みの英語塾に通うようになり、幸い相性が良かったのか成績もまぁまぁ良かった。毎週水曜の夜、少し面

        中2女子のカナダ滞在記 2

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        • 中2女子のカナダ滞在期
          2本
        • ファミリーRPG
          2本

        記事

          おいでませ北陸新幹線

          「2024年3月16日、北陸新幹線敦賀→金沢間開通!!」 そんなCMが流れるようになって数年、ようやくその日がやってきました。 「こーんな辺鄙な県に新幹線なんて通して、誰も乗らんし来んって!」と多くの県民が呟いていた(私もその一人だった)というのに、実際この日が近づき、街が活気に溢れてくると自然と「ちょっくら・・・見にだけ行ってくるか。」なんて心境になるから、人間の心なんて案外ちょろいもんだと思う。 数日前から、お祭り好きの私はソワソワしていて、行きたいな、ブルーインパル

          おいでませ北陸新幹線

          ものすごく久しぶりに

          16歳の頃、手にしたばかりの携帯電話(スマホも無かった頃です)を使って、当時全盛期だった「モバゲー」というSNSの前身的なゲームコミュニティサイトで小説の投稿をしていました。 その頃書いていて一番人気の出た作品が、「私はここー!!」という、神様の暇つぶしで透明人間にされた女の子が、唯一彼女が見えるクラスメイトの男の子の家に世話になるという学園モノファンタジー。 学校の授業中、勉強そっちのけでノートの隅に書き溜めたものを、帰宅後携帯電話でポチポチ打ち込み、サイトに投稿してい

          ものすごく久しぶりに