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「だって君だって孤独じゃん」


最近は本ばかり読んでいるので、できるだけ言葉のない音楽をよく聴いている。もうすでに言葉は追っているのだから、それ以外の歌詞などの言葉が入ってくると混乱してなかなかページが進まない。
元来、集中力のない人間なので、本を読むときはできるだけ環境を整えてやりたい。
主に聴いているのは、ジャズかピアノインスト。
ジャズを聴いていると、「自分がこんな洒落た音楽聴いていいはずがないな」と捻くれてしまうが、やっぱり聴いていると心地良い。
永遠に続くような希望、人間の熱さ、みたいなものが時々感じられる。
なんかロックもジャズも大して変わんないな。とか思う。
結局は人間臭い音楽が好きなんだ。


個人的に歌もの以外をこんなに長い時間聴くことがなかったので、人生で初めての体験だったとも言える。

歌詞というものに救われて生きてきた、ということは胸を張って言える。
あの藤原基央の言葉がなければ生きていないかもな、と思ったりもする。
けれども最近は歌詞に依存することが少なくなった。
それは自立とも言えるし、悪い意味で大人になったからと言えるかもしれない。
つい1、2年前までは高校生だったくせに、ここ1、2年で考え方は大きく変わった。それが顕著に出る場面が多くなった。

まず、人と会うのがしんどくなった。
高校生の頃、特に2年生くらいまでは結構友達が多かった。
多分それは自分があの時ほど捻くれてなかったから、という理由と、そのときはまだ人間全体がうっすらと好きだったからという理由がある。

もう今はどっちもダメだ。取り返しがつかなくなってしまった程に捻くれているし、人間はうっすらと全員嫌いだ。
褒めてくれる人も、貶してくる人間も、静かな無視をしてくる人間も。
全て信頼できない色眼鏡がいつの間にか僕の目にはかけられてしまっている。その色眼鏡はきっとバンドをやってきて裏切られたり、話の合わない人間と関わることが多かったから育てられたものだったと思う。
僕がここまで捻くれてしまったのは、はっきり言って不可抗力だった。
何度人生を繰り返してもこうなってたと思う。


あー今ちらっとインスタを見てたら友達のカップルのストーリーが流れてきた。あまりにも、死にたい

バイトでは毎回レジを打つ。
こんな捻くれた自分を隠してレジを打つ。
客は全員、僕が音楽をやっていることや物書きをしていることを知らない。
客が求めているのは僕の周りくどい言い回しなんかではなく、商品そのものでしかない。
接客業はグロテスクだ。まるで店員側を人間じゃないものように、客は扱ってくる。それでも僕は、結構接客態度が良い方だとは思う。
何度か店長や先輩に褒めたれたこともあるし、対応したお客様がわざわざ店に電話して感謝を僕宛に伝えてくださることもあった。(あの時のお婆さん、元気だろうか。)
その接客態度の良さは、生まれつきの「愛されたい欲求」くるものだし、言ってしまえば客に媚びているようなものである。
さして褒められるようなことでもない。本当に人が好きで良い接客をしているわけではないのだから。


時々、ギターケースを抱えた客がくる。
ひとえにギターを持っている客って言っても、いろんな人がいる。
楽しそうに友達と笑っているJK、店員への態度は悪いが何処か憎めない爺さん。何か垢抜けていない男子大学生。

あとは、目が死んだ、いかにもなバンドマン。
偉そうな顔で世界を睨んでいる、店員への態度は決して悪くない、そんなバンドマン。
世界で一番孤独そうな顔をしたやつ。

なあ、俺もバンドやっているんだよ、ってそういうやつを見ると言いたくなる。
その苦しみわかるよって。自分の曲が受け入れられないショックとか、自分の想いを作品に昇華できない苦しみとか。

もしかしたらそいつはめちゃくちゃ売れててメジャーデビュー寸前のバンドマンだったかもしれない。時代に流されたしょうもないラブソングを作るようなやつだったかもしれない。

それでも重いエフェクターボードを抱えて、死んだ目で世界を見ている君にどうしても声をかけたくなった。


「レシートのお返しです。ありがとうございました。」

機械的に、マニュアル化された文章を僕は放った。
自分の言葉ではなく、社会の言葉で。

すると君は「ありがとうございます」と、これまた社会の言葉で出来たレシートを受け取った。

俺はミッシェルが好きでチバが死んだ時はめちゃくちゃ泣いたよ。
ゆらゆら帝国のアルバムだと、空洞ですが一番好きだよ。

もしかしたらそんな話ができたかもしれない。
きっと君は今レジを打っている人間が、寝る前にFishmansを聴いているだなんて決して思わなかったと思う。

まあそんなことを考える暇もなく、次から次へと客はやってくる。
割と僕が勤めている店舗は忙しい部類に入る。


あの時のバンドマンがした死んだ目に、時々自分を重ねる。
きっとあのくらいの目は僕も時々していると思う。
世界に一人取り残され、全員が自分を無視してきたとき、他人に向ける目だ。ひどく光がなく、絶望に塗られている。

それくらい芸術に身を投じようとする人間は孤独だ。

それなりに知名度もあり、賞賛も多い音楽家の僕の友達も、やはり冬の寒空のような孤独を抱えて生きている。
そんな中でも、粘り強く音楽活動を楽しんでいる。
言の葉を、音の葉を紡ぎ、さまざまな雑音の中で美しい一音を探しているのだと思う。

俺はそいつのことを心の底から尊敬している。
また、その孤独を抱えている奴らと、僕はいつまでも音楽を楽しみたいと思っている。


何よりも孤独を抱き締める奴らの曲は美しい。

それは曲だけじゃなく言葉や、他の芸術にも当てはまる。


せっかく化け物みたいな孤独を抱えているんだから、芸術にしないと損だよな、なんて友達と話す。
その友達の笑顔が美しい。
俺も君みたいに、君と肩を並べるほど評価はされたいなと思う。

それだけが、唯一僕が音楽をやる上で、「売れたい」と思う理由だ。
それ以外、本当に売れたいとは思わない。



支離滅裂な文章になってしまった。そろそろ文章の練習でもしたい。

君はいつも俺の歌詞や言葉を褒めてくれるけど、やっぱりまだまだだよ。
あと俺は、君の少し不器用でまっすぐな歌詞がとても好きだよ。










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