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14時間目 シタ・タカ包囲網と新たなる火種

このお話は100%フィクションです。
(1時間目からお付き合い頂ける方はこちら、シナリオモードからはこちら

ここに、国から認められていない集落があった。

小さな島に築かれた、その村の名前は「うさん村

この村にタツオ学院という寺子屋を作った者がいた。

ここでは嘘つき学という学問を教えている。
この世の中が嘘で回っている事実を認め、正しく嘘と向き合うことにより、悪意のある嘘に騙し騙される事がないようにという教えである。


・主な登場人物


※前回、ナメック・ジローとメザメノ・アカシは、タナカ村長が不当に公費で建てた「おしりんハウス」の証拠をもとに、村民たちを説得して「村民デモ」の誘発に成功した。行政軍を率いる上杉雲双にも「村民デモ」の一報が入ったが、隠者討伐令により隠者の森の奥深くまで進行した軍隊は、再奮起した隠とん兵の妨害などもあり、引き返すのに時間が掛かっていた。前回のあらすじはこちら



それでは本編をどうぞ

ワァーワァー!!

村民:「タナカ・シリゾウとシタ・タカ出てこい!隠者の森に建てた おしりんハウスについて説明しろ!!」

村民;「そうだ!そうだ!」


タナカシリゾウ:「シタ・タカ!どういうことだ。計画は問題なく進んでいると申しておったろう!なぜ村民どもが我がハウスの事を知っているんだ」


シタ・タカ:「お言葉ですが村長、昨日おしりんハウスに向かう途中で誰かに尾行されておりませんでしたか?」


タナカ・シリゾウ:「ワシが警戒を怠るはずがなかろう。お主、ワシのせいにするつもりか!」

シタ・タカ:「いえ、滅相もございません…(チッこのポンコツめ!どこでヘマをやらかした!)」


ヒノキダ・ゲンコク:「こうなれば、力づくでも引っ張り出すぞ!皆んな、突撃じゃ!」


村民:「いくぞー!」

ワァーワァー


タナカ・シリゾウ:「上杉のノロマはまだ戻って来んのか、何をやっておるのじゃ!警察署長を解任するぞ。おい、やめろ!入ってくるんじゃない!扉を閉めろ」

役人:「よし、村民どもが入れないように扉を塞げ、鍵を閉めろ!」


ヒノキダ・ゲンコク:「扉を塞ぎおったか…皆、下がって目を閉じておれ!」

村民:「おい、もしかして治療用の技をここでやるのか!」

ヒノキダ・ゲンコク:「ハァァァァァ!波動砲七変幻(はどうほう しちへんげ)!」


ピカッ

ドガァァァァアアアアアアアン!







役人:「と、扉を破壊しやがった…」


シタ・タカ:「ま、まさか。チッこれでは上杉が戻る前に捕まってしまう!」


村民:「シリゾウとシタ・タカを取り押さえろー!!」

ワァーワァー


役人:「ひぃー!お助けください!!逃げろー」

タナカ・シリゾウ:「この狭い役場では隠れていても時間の問題、シタ・タカ!なんとかしろ!」

シタ・タカ:「止む終えん…」

シタ・タカ:   「タナカ村長がいたぞぉぉ!!」


ドンッ!(シタ・タカの回し蹴り)




タナカ・シリゾウ:「えっ?シタ・タカ!貴様!」



村民:「タナカ村長がいたぞ!!捕らえろ!」

タナカ・シリゾウ:「まて、待ってくれ!これには訳が、やめてー!!」

村民:「よし捕獲!!残るはシタ・タカだ、探せ!」

シタ・タカ:「ふぅ、あぶねぇ。隠し通路を作っておいて正解だったな。今回は間一髪だった、バカ村長をおとりに使わなければ捕まっていた…。村民どもめ覚えていろ!」




ナメック・ジロー:「いないか、まずい。シタ・タカめ、村長をおとりに使って上手く逃げたか…」




こうして村全体を揺るがした大騒動は、村長タナカ・シリゾウの捕縛と側近シタ・タカの逃亡という形で幕を閉じたのである…。


一方、この頃メザメノ・アカシは、うさん警察署の留置場にタツオ達の救出に向かっていた。

メザメノ・アカシ:「今なら留置場の刑務官も少ないはず、急がねば!」





※うさん警察署 留置場 女収容所


ウマミ・スー:「ど、どうしよう。なんで私がこんな所に入っちゃったんだろ…。お父さんとお母さんに何て言えばいいの。ねぇ誰か助けて」


女囚人:「あんた!さっきから うっさいわよ。あれ?随分と育ちの良さそうな御嬢さんだこと」

ウマミ・スー:「あなたは?私は、無実の罪でここに入れられてしまったの!助けてよ!」

女囚人:「アンタに何があったのか何て知らないわよ!大体、直ぐに人にすがるところを見ると、アンタ自分のことばっかり考えるタイプでしょ」

ウマミ・スー:「まぁ確かに…。タツオ先生を裏切ったことは悪く思ってるわ…」

女囚人:「ほら、思い当たる節があるでしょ。まぁでも過ちを認めただけマシってものね。私の名前はヤミノ・ウマコ、キナ臭島で暮らすヤミ陰陽師(おんみょうじ)よ」

ウマミ・スー:「ヤミ陰陽師?」


ヤミノ・ウマコ:「あんた、うさん村に住んでてヤミ陰陽師を知らないの?もぐりでしょ。私たちは、うさん村ヤミ陰陽師といって昔からこの地で暮らし呪術によって村を動かしていたのよ」

ウマミ・スー:「呪術?占いみたいなもの?この村にそんな時代があったなんて知らなかったわ」

ヤミノ・ウマコ:「あなた本当に何も知らない御嬢さんだこと。そんなに古い話しじゃないのよ。最近までは我々ヤミノ一族が大きな力を持っていたのよ。あの忌まわしき会社が出来るまでは…」

ウマミ・スー:「忌まわしき会社って、もしかしてカケヨ社長のバナナ社のこと?」

ヤミノ・ウマコ:「あら、バナナ社のことは知っているのね。あの会社の作り出したハイテク機器の数々によって、私達は権力も仕事も全て奪われたのよ」

ウマミ・スー:「それってユーフォン(スマホ)やモッスブック(PC)のことね!今は一人一台持っていて正確な天気予報も毎日チェック出来るわ」

ヤミノ・ウマコ:「そう、雨乞いなども我々の重要な仕事だったのに…。元々私達が住んでいた場所は、あの会社が出来て商業地域として急速に発展したの、そして私達は居場所を失いキナ臭島に落ち延びたという訳よ」

ウマミ・スー:「あなた達の怨みは相当なものがありそうね。何だか気の毒ね」

ヤミノ・ウマコ:「私達の苦しみはそれだけでは終わらなかったわ。元々キナ臭島にはカマクサ一族という先住民族が住んでいたの。このカマクサ一族が後から来た私達を追い出そうと攻撃を仕掛けてきたのよ!」

ウマミ・スー:「カマクサ一族?」

ヤミノ・ウマコ:「本当に何も知らないのね!カマクサ一族というのは、うさん村で草刈りを生業として細々と暮らしていた部族だったの。商業地域の発展によって刈る草が無くなったのと、全身に植物のタトゥーを施した独特の風貌が災いして村の皆んなから疎外されていったのよ」

※カマクサ一族


「彼らは隠れカマシタンと呼ばれ、キナ臭島に移り住んだの。その中で、ひとりの神童が生まれたの。カマクサ・ムシローという青年が一族を束ねるようになったのよ」

※中央、カマクサ・ムシロー


「彼は島の狂気と呼ばれ、比較的おっとりしていたカマクサ一族が過激化していったのよ。私達ヤミノ一族への攻撃を支持したのもこの男よ。そう、私達ヤミノ一族が滅ぶのは時間の問題で細々と暮らしていた…。ところがある日、私の姉のヤミノ・ペイメイに神が舞い降りたのよ!」

※中央がウマコの姉、ヤミノ・ペイメイ


「彼女の呪術の力は絶代で、弱体化していたヤミ陰陽師たちも彼女の力を拠りどころに結束が深まったの。以来ペイメイは神格化されたって訳」

ウマミ・スー:「なんだか複雑な話ねぇ。」

ヤミノ・ウマコ:「狭いキナ臭島で、ムシロー率いるカマクサ一族と、ペイメイ率いるヤミ陰陽師の対立が激化していった訳なの…。そんな最中、ひとりの旅人がキナ臭島を訪れたの」

ウマミ・スー:「旅人?」

ヤミノ・ウマコ:「そう、ギターと呼ばれる西洋楽器を持った彼の名はチェリー・サワタ。部族同士が争っている真っ只中で、彼の名曲ゲリのレディオを歌い出したの。すると次第に彼の奏でる骨太サウンドに魅了され、両部族が武器を捨ててヘッドバンキング(頭を縦に振ってリズムに乗る)を始めたのよ!」

※チェリー・サワタのイメージ




ウマミ・スー:「音楽の力が争いを止めたって事ね。ゲリのレディオは神曲ね!」

ヤミノ・ウマコ:「そう!怒りや憎しみは音楽で表現して、争うことよりも楽しく生きようという雰囲気がキナ臭島を包んだのよ。それだけじゃないわ、チェリー・サワタは両部族の党首に楽器を教え、サワタ・テンプル・パイロッツという3ピース(サワタ、ムシロー、ペイメイの3人)バンドを結成したのよ!」

ウマミ・スー:「サワタ・テンプル・パイロッツ?聞いたことあるわ。同じ学院生のユカノ・モプコという子がファンなのよ」

ヤミノ・ウマコ:「サワタ・テンプル・パイロッツは世界ツアーを企画する程の人気バンドになったわ。ところが数ヶ月前に、バンドリーダーのチェリー・サワタが隠者の森 野外ライブの後で失踪してしまったの…。キナ臭島のシンボル的な存在のチェリー・サワタを失い、ムシローとペイメイは音楽を忘れ、うさん商業地域を取り戻そうと武力による奪還計画を練り始めたの」

ウマミ・スー:「商業地域の奪還計画?た、大変。カケヨ社長に知らせなきゃ!」

ヤミノ・ウマコ:「残念ながら、もう遅いと思うわ。計画通りなら明日には商業地域を襲うはずよ。それに、アナタには知らせる手立ても無いでしょう。私は明るくて楽しかったキナ臭島に戻って欲しくて、チェリー・サワタを探しに隠者の森を訪れていたの。その最中、おしりんハウスと呼ばれる建物を発見してしまい、シタ・タカという男に罪をでっち上げられて留置場に拘留された訳よ」



ギーッ!バタン









いつもタツオ:「スー!急げ!脱出するぞ」

ウマミ・スー:「タツオ先生!!!ごめんなさい、私とんでも無い事をしてしまって…」

イチモツ・コタロー:「スー!話している暇はないぞ。警察署が混乱している内に早く!」

メザメノ・アカシ:「急げ!刑務官たちの睡眠薬の効き目が切れてしまう。早くいこう」

ウマミ・スー:「ウマコさんも一緒に逃げましょう!」




-ナレーション-

村民のデモによってシリゾウは捕縛され、隠者討伐令も失敗に終わった。黒幕シタ・タカを逃してしまったが、タツオとタツオ学院生の奪還に成功したのだ。ジローの計略は見事に的中したと言って良いだろう…。しかし、あらたに浮上したキナ臭島と商業地域をめぐる争いはどうなってしまうのであろか。謎は深まるばかりである。

-つづく-



・今回のあとがき(久しぶり)

このところ「うさん村」の世界にドップリ浸かってしまって、いつもタツオ本体からの発信は途絶えていたな。誰か読んでる人がいるのかも定かでは無いこの物語も、勝手ながらいよいよ大詰めを迎えそうである。完全なる自己満足型の「嘘つき養成講座」は、全くといって良いほどに講座を行なっていない(苦笑)

始めた頃は、沢山の人に読んでもらおうと意気込んで1話完結型で作っていたのだが…どんどん自分の世界に入り込んでしまった。9時間目あたりから、シナリオ的な要素が強くなっていったので、始めて読む人には取っ付き辛くなってしまったかもね。

それでも、自分が一番たのしんでやれている事が嬉しいし、もしも一人でも好きになって読んでくれている人がいるのならばそれでいいかな(あながちマジで)

この世に存在した、超レアな物語はアナタのものだよってことで。


最後まで読んでくれてありがとう!
もう少しだけ、この空想上の村に付き合ってもらいたい。このつづき15時間目はこちら

では、また!

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