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13時間目 誘発!怒りの村民

このお話は100%フィクションです。
(1時間目から読んでみたい方はこちら

ここに、国から認められていない集落があった。
小さな島に築かれた、その村の名前は「うさん村

この村にタツオ学院という寺子屋を作った者がいた。

ここでは嘘つき学という学問を教えている。
この世の中が嘘で回っている事実を認め、正しく嘘と向き合うことにより、悪意のある嘘に騙し騙される事がないようにという教えである。

・主な登場人物

※前回、上杉雲双の率いる討伐軍と、すぐにスワルが指揮をとるゲリラ隠とん兵がついに激突した。一時は隠とん兵が優位の状況であったが、単騎で突入して来た上杉の武力に為す術は無く窮地に追い込まれてしまった。前回のあらすじはこちら

スワル達が時間を稼いでいる間に、アカシとジローは村民デモを誘発することが出来るのか?


それでは本編をどうぞ




コンコンッ

ナメック・ジロー:「はぁはぁ、ヒノキダ先生!」

ヒノキダ・ゲンコク「誰じゃ?おぉ、タツオ先生のところの生徒さん!どうしだんじゃ?」


ナメック・ジロー:「大事なお話があります。今、アカシさんが村民の皆さんを呼びにいっておりますので少々お時間を下さい」


コンコンッ

メザメノ・アカシ:「ヒノキダ先生、お久しぶりです。今日は大切な話がありまして、失礼させて頂きます」



ザワザワ


村民:「おい、皆んな呼び出していったいどうしたんだ?」

メザメノ・アカシ:「時間がないので挨拶はこの程度で、村民の皆様にお集まり頂いたのは、タナカ・シリゾウ村長の出した隠者討伐令(いんじゃとうばつれい)の話です」

ヒノキダ・ゲンコク「隠者討伐令?我々は何も知らされておらんぞ」

メザメノ・アカシ:「そうですか…。では、タナカ村長が公費で隠者の森奥地に築いた、おしりんハウスについて皆様は御存知ですか?」



ザワザワ


ヒノキダ・ゲンコク:「おしりんハウスじゃと?ワシは知らんが…。ここに居る者は誰も知らない様じゃな。それは何かの証拠でもあるのか?」


ナメック・ジロー:「これが、役場で見つかった建設に関わる証拠資料のコピーです。建設を委託した会社は村外の企業で、タナカ村長のサインもあります」

ヒノキダ・ゲンコク:「どれどれ…う〜む。どうやら本物の様じゃな、今度、タナカ村長に会った時にワシが話をしてみるかのぅ」


村民:「これが本当なら次の選挙はタナカ村長には投票しないわ」


メザメノ・アカシ:「ところが、そんなのんびりした事を言ってもいられないのです。皆様は で〜ぶランニングという人工知能の話を聞いた事がありますか?」

ヒノキダ・ゲンコク:「で〜ぶランニング?知らんな、いったい何じゃそれは?」


メザメノ・アカシ:「では手短にお話ししましょう」


「上の①〜③の絵を見て下さい」
※で〜ぶランニングについて知っているコアな人は飛ばしてね♪

①は私が作り上げた人工知能「で〜ぶランニング」です。この装置は、うさん商業地域で最も巨大なビル「バナナ社」の地下深くで稼働しております。
②はこの「で〜ぶランニング」の内部です。ミクロレベルの小さな相撲取り型の因子がランニングマシーンの上を走ることによって自家発電を可能にしました。この小さな力士たちは、分裂や合体を繰り返し数を増やす事も減らす事も自由自在です。記憶を司る機能もあるために、どんどん知識が蓄積されていきます。
③うさん島の全体マップですが、紫のエリア内は既に「で〜ぶランニング」の監視下に置かれております。つまり電気が通っているところは、小さな力士たちが行ったり来たりでき、情報を「で〜ぶランニング」本体に伝達しているのです。

メザメノ・アカシ:「しかし、数ヶ月前にあってはならない事が起こったのです!そう、あり得ないバグが発生したのです」

「全て均一の筈の相撲取り型 因子の中に、一人横綱因子が発生したのです」
「この 夜黒龍 と呼ばれる一人横綱因子はランニングしないどころか、他の力士たちを締め上げては服従させ一団を築いたのです!そう、私の方程式には無い展開」

ヒノキダ・ゲンコク:「まさか、村がそんな物によって管理されていたなんて…ワシは知らんかった」


ザワザワ

メザメノ・アカシ:「知らないのも無理はありません、で〜ぶランニング自体は非常によくできた人工知能で、今も我々の生活を支え続けています。村の混乱を防ぐ為に、これは機密情報としてバナナ社のカケヨ社長と開発者の私しか知らない筈なのですから…。ところが先日、例のバグ因子の夜黒龍が役場に出没したのです。そう、呼び出したのが村長秘書のシタ・タカで、夜黒龍を作って人工知能内に侵入させた張本人なのです!」

ヒノキダ・ゲンコク:「しかし、シタ・タカ君は善人として知られ、我々村民達のことを一番に考えてくれている」

ナメック・ジロー:「シタ・タカは夜黒龍との密会をタツオ学院の生徒達に目撃され、生徒達に在らぬ罪を着せて留置場に拘留しました」

ヒノキダ・ゲンコク:「あの好青年のシタ・タカ君がそんなことを…。とても信じられん」


ザワザワ


メザメノ・アカシ:「やはり寝耳に水な事ばかり、なかなか信じてはもらえませんよね。では、一枚の写真をみて頂きたい」


※前回、撮影した写真


メザメノ・アカシ:「これは先程、隠者の森北西で捉えた決定的瞬間です。村長と一緒に写っているのが、ほころび組と呼ばれる美女軍団です。そして、背後の建物が公費を不正に使って建てた通称おしりんハウスなのです!」


ヒノキダ・ゲンコク「これは…酷い!」


パリーン!(お皿の割れた音)

ホウ・マン:「ね、姉さん!!この写真に写っているのは私の姉さんです!」

ヒノキダ・ゲンコク:「なに?どういうことじゃ?」

ホウ・マン:「こ、この写真の一番手前に写っている女性は、妖麗(ヨウ・レイ)という私の姉です。先月、うさん村に移ってきたのですが仕事を探しておりまして…。シタ・タカさんが良い仕事を紹介してくれるという話になったので、私も安心しておりました。まさか、こんなところに住まわされているなんて!酷い!!」


メザメノ・アカシ:「おそらくはシタ・タカに騙された様ですね。タナカ村長の好みだったのでしょう。あの厳重な建物では簡単に外にも出れませんし、出たところで隠者の森奥深く…。今回の隠者討伐令は、このおしりんハウスの発覚を恐れて周辺に暮らす隠者を排除する為のもの。全てはタナカ村長と、それを利用しようしたシタ・タカの企てで間違い無さそうです。そして、村の心臓ともいえる で〜ぶランニングまでも手中に収めようとしている。村を乗っ取る気なのか!!」


ヒノキダ・ゲンコク:「ゆ、許せん!!!!!」

※誤解があってはいけないので補足、ゲンコク氏はイヤらしい顔をしているのではありません。怒りに震えているのです!


村民たち:「おい、これはもう許せない!!皆んなで役場に押しかけよう!!武器になる物を持って、うさん大橋に集合だ」

「おおー!!」



※一方、隠者の森うさん川周辺では


上杉 雲双が猛威を振るっていた…


上杉 雲双:「すぐにスワルはどこじゃぁぁ!」


隠とん兵:「スワル!どうする、これじゃ俺たちは…」


すぐにスワル:「ワシらはただ運命を受け入れる事しか残されておらん…。身をひそめ、嵐が過ぎるのを待つのじゃ。ひと時の夢、幻の如くなり♪(アカシよ、我々の戦いは終わった。あとはお主にかかっておるぞ)」



タッタッタ

討伐軍 連絡係:「上杉様!伝令です!役場から一報がありました。なんと村役場が…村民のデモ隊に包囲されました!!!」


「ギロッ!!」


討伐軍 連絡係:「ひぇ〜切らないで!」

上杉 雲双:「なんじゃと!!詳しく話せ!」




隠とん兵:「あれ?討伐軍と上杉が引き返していくぞ!」

すぐにスワル:「アカシ達がやりおったわい!よし、負傷者を集めろ!」

隠とん兵:「連れてきたぞ!」

負傷隠とん兵:「お〜い!はやく何とかしてくれー」


すぐにスワル:「アカシが開発したスカっぺ細胞入りの瞬間接着剤じゃ!ほれ」


ヌリヌリ

↓ 

負傷隠とん兵:「ありゃ?」

ヌリヌリ

負傷隠とん兵:「おろっ?」

すぐにスワル:「よし!討伐軍をもう少し足止めするぞ!いくぞ!」

隠とん兵:「ヒャッホー!」


-ナレーション-

アカシとジローは村民デモの誘発に成功した。しかし、上杉率いる討伐軍が役場に引き返した。討伐軍の到着までにタナカ村長と黒幕シタ・タカを捕らえることはできるのか。

-つづく-

・登場人物紹介

タナカ・シリゾウ

かつての大物政治家。環境問題に着手するなど政治家として手腕を発揮して一大派閥を築いたが、エイドリアン事件(収賄)で失墜し、政界を追われた。未開の地に移住者を募り、うさん村を創設。カケヨ、タツオ、スワルの3人の恩師で教育者でもあった。シタ・タカが側近になってから様子がおかしくなった。公費で隠者の森奥地に「おしりんハウス」を建て村民から非難を浴びる渦中の人物。

シタ・タカ

少年時代に、うさん村の暗算boys選手権の決勝で天才アカシに破れ恨みをもつことに。表向きは善人そのもので村民からも慕われていた。
何でも数字に置き換える癖があり「褐色のデータマン」の異名を持つ。
抽象的な事が大嫌いで、隠者の森に潜む思想家達を忌み嫌っている。シリゾウに隠者討伐令を持ちかけたり、人工知能「で〜ぶランニング」内で猛威を振るうバグ因子、「夜黒龍」を作り出して潜入させた黒幕。うさん村を乗っ取ることを企てている。


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