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ITIL4のコア書籍紹介④「Direct, Plan and Improve(方向付け、計画および改善)」(DPI)

今回は、ITサービスマネジメントのベストプラクティス・ガイダンスである「ITIL4」のコア書籍紹介第4弾「Direct, Plan and Improve(方向付け、計画および改善)」(DPI)です。
(すでにご紹介したITIL4書籍に関する記事はこちらからお読みいただけます。)

ITIL4 Direct, Plan and Improve(方向付け、計画および改善)とは?

ITサービスマネジメント領域で最も採用されているベスト・プラクティス・フレームワークであるITIL4のコア書籍のうち、「Create, Deliver & Support(作成、提供およびサポート)」(CDS)に続いて3番目に出版された3つの書籍のうちの一つが「Direct, Plan and Improve(方向付け、計画および改善)」(以下、DPI)です。
(同時期に発売された「Drive Stakeholder Value(利害関係者の価値を主導)」(DSV)の記事はこちら。「High Velocity IT(ハイベロシティIT)」(HVIT)は次回の記事でご紹介します。)

DPIはITIL4の資格体系の二つのトラックのうち、マネージングプロフェッショナルとストラテジックリーダーシップの二つのモジュール共通の内容になっているのが特徴です。(下記資格体系図参照)
各モジュールで研修内容が分かれているわけではなく、一度DPIの認定を受ければ、マネージングプロフェッショナル、ストラテジックリーダーシップ両方の認定要件の一つを満たすことができます。
日本語版書籍および日本語での研修コースが提供されています。(ITプレナーズ社の申込サイトはこちら)。

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コンテンツをざっくりご紹介

1.DPIの概要
DPIの目的は「プロダクトやサービスの管理を、現在のビジネス要件に合致させ、変革を推進し、継続的な改善文化を創造すること」であり、そのための手段として方向性を示し、計画を立て、改善活動に参画するために活用できる概念、原則、方法、テクニックを紹介しています。

サービスマネジメントに関わる全ての実務者を対象としており、読者とその組織が、
・ITILの従うべき原則と継続的改善のために効果的なアプローチを採用し、サービスマインドを発揮できるようになること
・組織の変革を成功させ、継続的な改善を組織のあらゆるレベルの行動に組み込むこと
を提供価値としています。

 2.DPIの章立て
主な章立てと各章に含まれる内容は以下のとおりです。
他のITIL4書籍と同様、今回も架空の会社のストーリーをベースとしてケーススタディが展開されていきます。

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DPIの3つのキーコンセプト

その1「ITIL continual improvement Model」
ITILの過去のバージョンでも活用されてきたITILの継続的改善モデルはITIL4でも重要なモデルですが、DPIでもこのモデルを用いて、各ステップで活用できるプラクティスを紹介しています。

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その2「ガバナンスとマネジメントの分離」
ITIL4は全編を通して、一般的に活用されているベストプラクティスやフレームワークを積極的に取り込んでいます。DPIはガバナンスとコントロールに関わる領域を扱っているので、ガバナンスのフレームワークであるCOBITの考え方が前提になっている部分も多いです。
COBITで紹介されている「ガバナンスとマネジメントの分離」の考え方はDPIを正しく理解するために不可欠となります。

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その3「Cascade」
ITIL4では、サービスの改善は全員の仕事であるとされており、組織の目標を個人レベルまで落とし込むことの大切さが述べられています。その際に活用できる「Cascade(カスケード)」という考え方が紹介されています。
組織の達成目標を部門、個人まで落とし、それをもとに評価をして改善につなげていく。ガバナンスとして実践すべき重要な要素がDPIの中でも繰り返し述べられています。

DPIを理解するためのポイント

次のポイントを押さえて読むとDPIの内容を理解しやすいでしょう。

①自分の所属する組織や顧客組織をイメージしながら読む
DPIはガバナンスに関わる内容が多いので、教科書として読むと平板な印象もあります。ご自身の組織や顧客の組織をイメージしながら読み進めることで、抽象的な概念を具体に落として明確に理解できるようになりますし、現在の組織に欠けていることも見えてきます。

②DPI の位置づけを理解する
DPIはITILv2『サービスマネジメント導入計画立案』、ITILv3『継続的サービス改善』の後継書籍であり、他のITIL4コア書籍を補完する内容になっているので、他の書籍を読んだ後に読むとより理解が進みます。

③ガバナンスとマネジメントを学ぶビジネス書として読む
DPIはガバナンスやマネジメントとしてなすべき「当たり前」のことが書かれているため、内容に目新しさはありませんが、ビジネス書として参考になることは非常に多く含まれています。組織のガバナンスやマネジメントに携わる方のガイドとして有用です。

当社のコンサルタントが考えたDPIの特徴

当社のコンサルタントがDPIを読んだ所感を元に、その特徴を挙げてみます。

1.サービスマネジメントに不可欠でありながら、日本ではフォーカスが当たりにくい領域についてしっかり語られている
現場主導のボトムアップ型のサービスマネジメントでは見過ごされがちな、
・ガバナンス、リスク、コンプライアンス(GRC)
・目標のカスケード、測定・レポーティング
・組織変革の管理
などのプラクティスが詳細に記述されています。
日本企業の弱い部分でもあるので、特にグローバルに展開する企業においては強化すべき領域だと改めて感じました。

2.内容に大幅なアップデートはないが、アジャイルな働き方やリーンの考え方が一部取り込まれた
そもそも大幅なアップデートの少ない領域ではありますが、Iterative(=反復的)な改善の考え方、サーバントリーダーシップ、バリューストリームマッピング等も取り込まれています。
また、アセスメントの手法、計画策定の手法、ITSMツールセットの選び方など、現場で役立つ具体的なプラクティスも多数紹介されています。
一方で、XLA™などの直近のサービスマネジメントのトレンドは取り込まれていないため、今後のアップデートに期待です。

3.土地勘のある方にとっても気付きは多い
当社はガバナンスの構築やマネジメントの改善を支援することが多いため、もともと土地勘のある領域ではありますが、それでも新たな気づきはありました。(以下はその一例です)
リスクマネジメントでは起こりそうなことのリスクだけでなく、やらないことのリスクも考える〔Chapter 2 Strategy and direction〕
・アセスメントのタイプ・手法には多くの種類があり、それぞれに長所・短所がある〔Chapter 3 Assessment and planning〕
・測定とレポートも継続的に見直すことが大切
・ネットプロモータースコアだけでなく、カスタマーエフォートスコアも有用〔Chapter 4 Measurement and reporting〕  など

おわりに

「Drive Stakeholder Value(利害関係者の価値を主導)」(DSV)に続いて、今回は「Direct, Plan and Improve(方向付け、計画および改善)」(DPI)についてお伝えしました。
DPIは、重要でありながらなかなかフォーカスが当たらないガバナンス領域の体系化されたプラクティスとして非常に有用です。
ここまで読んでいただいた方の参考になれば幸いです。
今後もITIL4のコア書籍について順次ご紹介していきますので、どうぞフォローしてくださいね。

当社IVEでは日々のコンサルティング活用の中でITIL4の適用も始めています。当社のサービスについてのお問い合わせ、提案依頼、協業のご相談等がございましたら、下記からお問い合わせください。

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以上

※本文中に記載されているフレームワーク、ベストプラクティス等に関する商標の情報はこちらをご参照ください。


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