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連比から高校数学の分数式へ

有限事象の確率は、事象という有限集合に含まれている要素の個数を基準として、その有限集合の中で条件を満たす要素の個数が占める割合のことです。

簡単にいうと、確率という割合を高校数学で扱います。確率分布の分野では、標本比率を考えたりと、確率と比率は結びついてきます。

このnote記事では、算数で学習する連比を、数学の文字を使った文数式として表すことを説明しています。

分数の式で表すことができると、文字式についての計算をすることで、学習に幅が出てきます。

三角比の正弦定理などは、まさに連比を分数式の形で表したものになります。

数学の抽象的な記号だけを使って話を進めると難しそうな感じになるので、具体的な例を通して説明をしていきます。


連比とは

1:2:3 というように、3個以上の0でない実数について比を考えるときに、連比を使います。

ここで、高校数学を学習するときに、意識しておきたいこととして、「等しい」という関係があります。

数と数が等しい、集合と集合が等しいなど、「等しい」といっても、様々な「等しい」ことについての定義があります。

連比を理解する上で、連比が等しいということを押さえることが大切になります。


【2つの連比が等しい例】

$$
1:2:3=2:4:6
$$


ここで、等しいということを表す「=」の左右に書いている連比を見比べます。

左の連比の1番目に書いている「1」を2倍すると、右の連比の1番目の「2」です。

2番目の数字についても見てみます。左の2番目の2を2倍すると右の2番目の「4」です。

左の3番目の3についても、2倍すると右の3番目の「6」です。このように、同じ番目について、左の連比の数を2倍すると右の連比の数となっています。

つまり、左の連比の□番目の数に、一定の数を掛けると、右の連比の□番目になるという関係になっています。

この一定の数が、今の例では、2倍の2ということです。

ここで、左の連比の□番目の数を、右の連比の□番目の数で割り、その値を分数で表します。

$$
1\div 2=\displaystyle\frac{1}{2}
$$

$$
2\div 4=\displaystyle\frac{1}{2}
$$

$$
3\div 6=\displaystyle\frac{1}{2}
$$

分子と分母を約分して、これ以上の約分ができない形で書くと、すべて1/2となっています。

この1/2を比率といいます。この比率を使って、連比を分数式で表すことで、分子と分母の値について、さらに細かく議論ができるようになります。

連比から分数式へ

$${1\div 2=\frac{1}{2}}$$ というように、先ほど計算した割り算を分数の形で表すようにします。

$${1\div 2,\,2\div 4,\,3 ÷ 6}$$ を分数で表します。

$$
\displaystyle\frac{1}{2}=\frac{2}{4}=\frac{3}{6}=\,\text{比率}
$$

左の連比の□番目の数を、右の連比の□番目の数で割ったときの値が、一定の数になっているというのが、2つの連比が等しいということの定義です。

この一定の数が、比率です。割り算をするときに、0で割ることができないので、連比を文字で考えるときには、どの文字も値が0にならないことに注意です。

連比から文字を使った文数式へ

$${a:b:c = d:e:f}$$ という文字を使った連比の比率を $${k}$$ とします。

ただし、dとeとfは、どれも0でないとします。先ほどの例と同じく、左の□番目を右の□番目で割るという割り算を分数で表します。

$$
\displaystyle\frac{a}{d}=\frac{b}{e}=\frac{c}{f}=k
$$

$${a:b:c = d:e:f}$$ という連比が等しいという定義から、それぞれの分数式が等しいということになります。

このように表すと、実数についての等式の性質から、分母をはらうと、次のようになります。

「$${a = dk,\, b = ek,\, c = fk}$$」です。この等式を使って、さらに式変形を進めたりもできるので便利です。

逆も成立するか

数学では、何かを導いたときに、ゴールから逆に出発点まで辿り着けるかを議論することも考えます。

「$${a = dk,\, b = ek,\, c = fk}$$ (ただし、$${d}$$ と $${e}$$ と $${f}$$ は $${0}$$ でない)」ということから、連比が等しいということまでを逆に辿ることができます。

高校の化学や物理では、文字を使った等式が書いていて、いきなり連比が等しいのでという説明になることもあります。

そのため、この等式から連比までを自由に行き来できるようになっておくと良いかと思います。では、等式の性質を使って、戻りの道を辿ってみます。

「$${a = dk,\, b = ek,\, c = fk}$$」のそれぞれの等式について、両辺を $${d,\,e,\,f}$$ で割り、分数の形で書きます。

$${\displaystyle\frac{a}{d} = k,\, \frac{b}{e} = k,\, \frac{c}{f} = k}$$ となります。


連比が等しいということは、同じ番目の比率が等しいということでした。$${a:b:c = d:e:f}$$ ということです。

確かに連比の形までの戻りができました。分数式と連比が出てくる高校数学1の内容に、三角比の正弦定理があります。


【三角比の正弦定理】
三角形ABCが与えられたとき、

$$
\displaystyle\frac{a}{\sin \text{A}} = \frac{b}{\sin \text{B}} =\frac{c}{\sin \text{C}}
$$

が一定値となり、その一定値は三角形ABCの外接円の半径Rの $${2}$$ 倍となる。

$${a}$$ は辺BCの長さで、$${b}$$ は辺CAの長さ、$${c}$$ は辺ABの長さです。AとBとCはそれぞれ、三角形ABCの頂点A、B、Cの内角の大きさを表しています。

ここで、分数式の値が一定値ということは、連比の形で表すことができます。

$$
a:b:c=\sin \text{A}\,:\,\sin \text{B}\,:\sin \text{C}
$$

この連比が等しいということと、分数式が等しいという書き換えは、よく使われるので、把握をしておくと良いかと思います。

この定理の証明については、こちらのブログ記事で解説をしています。

それでは、失礼します。


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