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名選手イチローは忘れ去られる

イチローの取り上げられ方は、見ていて悲しくなる。

メディアで語られるのは、「4000本ヒットを打ち、メジャーリーグのプレイヤーからも尊敬されるレジェンド・イチロー」であり、「しぶとくヒットを稼ぎ、スピードで相手を翻弄する名選手・イチロー」ではないからだ。

イチローが得た名声とか肩書きが、これでもかというくらい誇張され、じゃあイチローがどういうプレイヤーだったのかについてはほとんど語られない。レジェンド・イチローはこの先ずっとみんなの記憶に残るだろうが、名選手・イチローのことは忘れ去られてしまうのみだろう。

打撃の天才と言われ、いつも美しいヒットを繰り出していたかのように錯覚されているが、イチローの打ったヒットのうちの、じつに4分の1が内野安打だ。また、レーザービームとして名高い強肩も、もちろん一級品であるが、メジャーのスタッツでは最上級の点数を与えられているわけではない。

クリーンヒットを打つ能力だけなら、イチローを超えるプレイヤーはざらにいる。ただの当り損ないの打球を、俊足でヒットにしてしまうことや、広大な守備範囲と堅実さ、それに頑丈さがイチローの凄さだった。しかし、そういう実際のプレーや、一見地味なスタッツがまるで吟味されずに、ただ「レジェンド」として祭り上げられる。

イチローだけでなく、野茂英雄についても、同じことが言える。野茂といえば、「メジャーへの道を切り開いたパイオニア」という、それはとてもすごいことだが、あくまでもプレイヤーが副次的に得た名声ばかりが独り歩きし、実際に野茂が行っていたプレーについては語られない。

スピードは140キロ中盤だがスピンの効いたフォーシームと、フォークボールの切れ味、そしていっそ清々しいほどのコントロールの無さ。完膚なきまでに相手を抑えるか、四球でなすすべもなく自滅するか。メジャー123勝という肩書はもちろん素晴らしいが、強さと、びっくりするくらいの危うさを併せ持つアンビバレンツなプレースタイルに、なんとも言えない魅力を感じるのだ。

イチローは日米通算4000本安打を放ち、数多くのプレイヤーからのリスペクトを得ている。もちろん素晴らしいことだ。しかし、それはイチローの魅力のほんの一部分でしかないこともまた事実だ。私は、メディアで語られるようなレジェンド・イチローではなく、鋭い当りをとばしつつ、ときには泥臭くグラウンドを駆け回る、名選手としてのイチローが好きだ。

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