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使者

剛毅な性格の円儀でも、麗和の死はさすがにこたえた。魂を抜かれたように床に臥する日々を送るばかりだった。ろくに物も食わなかったため、すっかり頬はやせこけ、瞼が骨に張り付いて、まるで別人の風貌になってしまった。

親王からの使いの者が円儀のもとを訪れたのは、そんな折のことだ。もはや金の使い道もない。偽の極楽鳥の羽のことなど知ったことではないと思い、追いかえしたのだが、何度も何度も使者を送ってくる。とにかく来てくれと騒ぐので、しぶしぶ重い腰をあげて、久しぶりに訪れると、親王は血相を変えて駆け寄ってきた。

いっそ本当のことを話してしまおうか。貴殿に差し上げた鳥の羽は、俺がでっちあげた贋物ですと伝えて、すべて終わりにしてしまおうか、と自暴自棄な考えが頭をよぎった。

しかし、この様子であれば、もしかしたらとっくに嘘は見破られていて、罰を与えるために俺を呼んだのかもしれない。麗和は俺が良いことをしたと言ったが、そんなのは欺瞞だ。俺は悪人だから、悪人らしく裁かれるのだ。

親王はいっさい言葉を発せず、ただ円儀の袂をつかんで、屋敷の奥に招き入れた。

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