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人類の「きぼう」が宇宙でレタスを育てている

JAXA  国際宇宙ステーション「きぼう」の
日本実験棟で世界初となる袋型培養槽技術による宇宙空間でのレタスの栽培実験を実施していることを皆さんは知っているでしょうか。

「Veggie」プロジェクトと呼ばれるこのプロジェクトは、宇宙ステーション(ISS)でNASA主導で進む植物栽培プロジェクトを指すんだそうです。

このプロジェクトは2014年に第1弾の「Veg-01」からはじまり「Veg-02」、「Veg-03」、「Veg-04」と順次進化してきており、主にケールやレタスなどの葉物野菜の栽培に注力しています。


宇宙飛行士が歓喜した宇宙レタス栽培


2021年10月22日付けで発表されたJAXAのプレスリリースによると、JAXA、竹中工務店、キリンホールディングス、千葉大学、東京理科大学は、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟内で、世界初となる宇宙での袋型培養槽技術によるレタス生育の実証実験を実施たということです。

宇宙でのいわゆる「地産地消」を目指して、新鮮な野菜を宇宙で育てられる未来へ向けた実験ともいえます。

「宇宙での食料生産」を目指す千葉大学の後藤英司教授らは、植物が一番育ちやすい環境を整えてあげる学問として「環境調節工学」を専門としてプロジェクトに参加をしています。

後藤教授が担当している最も新しいプロジェクトが宇宙での植物生産で、月面や国際宇宙ステーション(ISS)での植物工場の開発や、植物が宇宙でどのように育つかを調べています。

©︎竹中工務店
密閉した袋内で栽培されたレタス(収穫前の様子)

NASA、JAXA、SpaceXなどによる宇宙輸送の技術開発が進み、宇宙への長期滞在がより現実味を帯びてきました。その先にあるのが食料の調達問題だと言われています。

©︎竹中工務店
密閉した袋内で栽培されたレタス(地上に回収する前の様子)

実験は、2021年8月27日から10月13日までの48日間行われ、レタスの本葉を確認し、その後も順調な生育を続け、収穫に至ったということです。

宇宙飛行士と骨粗鬆症


これまでの宇宙飛行士に関する研究によると、宇宙で1ヶ月間過ごすと平均1%以上の骨量が減少することが分かっています。これは「骨減少症」として知られています。そのため、ISSに滞在する宇宙飛行士は、骨量を維持するために、一定の運動療法を行っています。

宇宙飛行士は、通常、ISSに6ヶ月以上滞在しているわけではありません。ところが、今後火星探査が現実のものとなると、往復の行程と探査を含め3年間にも及ぶミッションになります。そうなると、宇宙飛行士は骨減少症どころか「骨粗鬆症」になる可能性があります。

宇宙飛行士が十分な量のホルモンを摂取するには、毎日約380グラム、つまり約8カップのレタスを食べる必要があることになります。

安全性が確立されていないため、まだ試食はしていないとのことですが、他の多くの遺伝子組み換え植物と同様に、通常のレタスとよく似た味になると予想されています。

宇宙レタスへの懸念点


学術誌『Scientific Reports』に掲載された研究では、国際宇宙ステーション(ISS)の無重力環境を模倣した条件下で栽培されたレタスが、細菌に感染しやすいことが、デラウェア大学の研究者たちによって発表されました。

レタスはこれまで、ISSの水耕栽培室で3年以上栽培されており、宇宙飛行士の食料として期待がされていました。しかし、食中毒が発生することでミッションが頓挫してしまうことを研究者たちは懸念しています。

研究者たちは、ISSの無重力環境を模倣した条件下でレタスを栽培した。その結果、植物が呼吸するために葉や茎にある気孔は、バクテリアのようなストレス因子を感知すると、通常は植物を守るために閉じることを発見しました。

デラウェア大学バイオテクノロジー研究所のカリ・クニエル教授は「私たちは、宇宙で栽培される植物と、ヒトの病原体との相互作用を、よりよく理解する必要がある」と指摘しました。

月面農場や火星探査も視野に


©︎JAXA
100人規模の居住人口を想定した「月面農場」のイメージ画像

「きぼう」の袋型培養槽技術による宇宙空間でのレタスの栽培実験でさ、今後、この栽培方式の優位性を評価し、生育したレタスに食品衛生上の問題がないかの確認や、栽培後の培養液を分析し、環境制御・生命維持システムでの再利用処理の可能性の確認も実施される予定です。

将来的には、このような特長を備えた袋型培養槽技術を用いることで、惑星探査のための長期にわたる宇宙船内滞在時や、月面に農場を設営するなど、滞在施設での食料生産への活用が期待されています。

将来的な月面農場の開発を目指して設立された千葉大学の「宇宙園芸研究センター」の開所式で、東京理科大学、スペースシステム創造研究センター長木村真一教授は、「月、さらにその先の火星へと人類が活動圏を拡げていく際、ロケットはもちろんだが、そこに人が生き、暮らしていくことが重要だ。私たちは宇宙での居住について研究しており、食と居住は切っても切れない。ぜひ一緒に研究をしていきたい」と述べています。

宇宙でチンゲンサイも育っている


©︎ NASA
植物は64日間成長し、ISSで最も長い栽培期間となった

宇宙農業時代の到来?!をつげる様々な試みの中、レタスの他にもチンゲンサイの育成も研究されています。

宇宙飛行士のマイケル・ホプキンスさんは、4つの野菜生産システム実験(「Veggie」)を主導し、最後の2つの実験(「VEG-03K」と「VEG-03L」)で新しい宇宙作物“アマラ”マスタードと、“エクストラドワーフ”チンゲンサイの栽培テストを行い、栽培期間は64日間で、葉物野菜の栽培期間としてはISSで最長を記録することになりました。

チンゲンサイは長く栽培されたため、繁殖サイクルの一環として花が咲き、ホプキンスさんは、小さな絵筆を使って植物の花を受粉させるなどの努力もしました。

ひみつ道具待望論


というわけで今後、人類が宇宙を開拓して、
宇宙ステーションなどでも地球のような生活ができる日が来るかもしれません。

宇宙開拓といえば、のび太ですし、大長編ドラえもんです。

『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』は、藤子F不二雄氏によって執筆された「大長編ドラえもんシリーズ」の漫画作品で、その漫画を原作として作られた大長編ドラえもん映画の第2作です。初代は1981年に公開です。

ちなみに、『新・のび太の宇宙開拓史』 は2009年の公開です。

私は密かに『シン・のび太の宇宙開拓史』が出来ても良いほどの名作だと思っています。

各国や日本の宇宙技術が進化すれば、ドラえもんに描かれたような少し不思議なSF世界や、作者の藤子F不二雄氏に影響を与えた「スターウォーズ」のような世界もあまり遠くないのかもしれません。

「スターウォーズ」の有名すぎるオープニングの文言を拝借すると、

A long time ago in a galaxy far, far away....よろしく、「近い未来 はるかかなたの銀河系で…」というように、想像が広がります。

さて、前置きはさておいて、「のび太の日本誕生」という1989年の映画に話は移ります。その中のひみつ道具「畑のレストラン」というドラえもんの道具が登場します。

出典: ドラえもん ひみつ道具完全大図鑑

食べ物のない7万年前にタイムスリップしたのび太たちにドラえもんが出した道具がこの「畑のレストラン」という道具です。

この道具は缶詰に入っている料理の種のようなもので、種をまくと、丸型の大きなダイコンが育ちます。そのダイコンを割ると、中にはできたてホカホカの料理が入っているというとても魅力的な道具です。

メニューもバラエティーに富んでおり、カツ丼、スパゲティ、カレーライス、ステーキ、ラーメンから、ドラえもんの好物のどら焼きまでそろっていれという、いたれりつくせりさ満載の道具です。

ダイコンはあくまで料理の器のようで、食べない設定のようです。SDGsやサステナブルが話題の現代社会では、中身の料理だけを食べて器のダイコンを捨ててしまうのはもったいないと、当時以上に問題になってしまうかもしれません。

出典:デイリーポータルZ

とはいえ、何もないところに種をまいて育った実の中にはおいしい料理が詰まっているという藤子F不二雄先生の独自の発想とユーモアに感嘆してしまいます。

出典:デイリーポータルZ

「のび太の日本誕生」公開当時にバリバリの9歳でリアルタイムに映画をみた当時の少年も今や40代です。

宇宙レタスの話題に、ドラえもんの「畑のレストラン」のことを思い出すのでした。

あんなこといいな、できたらいいなと思わせてくれる研究が今も日本や世界のどこかで行われていると思うと少しだけワクワクするのでした。

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