見出し画像

近現代史作家と無呼吸

はじめに

※以下は、個人的体験に基づく見解であり、病気の正確性について保証するものではありません。睡眠時無呼吸症候群や強迫性障害の治療については、専門医に相談してください。特にオチはありません。

「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)という病気をご存知でしょうか。睡眠中、10秒以上の無呼吸が発生し、それが一時間のうち5回以上発生する症状の事をこう呼びます。多くの場合、いびきを伴うらしいです。


いびきだけでも家族などの同居人にとっては迷惑ですが、それ以上に本人にとって悪影響を及ぼすのがこの病気です。手元にあるパンフレットによれば、この病気によって引き起こされる症状は起床時の頭痛や日中の眠気、そして心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を引き起こす可能性も高まるというのです。

「いびき」とだけ聞くとなんだかコミカルな印象を受けますが、その実命を縮める可能性を示す危険な兆候の可能性があります。

私の場合ー強迫性障害の治療過程で

私は、数年前から「強迫性障害」という精神疾患の治療のため、メンタルクリニックに通っています。強迫性障害とは「強迫観念」と「脅迫行動」から成り立ちます。厚生労働省のウェブサイトによれば

<強迫性障害では、自分でもつまらないことだとわかっていても、そのことが頭から離れず、わかっていながら何度も同じ確認などを繰り返すなど、日常生活にも影響が出てきます。意志に反して頭に浮かんでしまって払いのけられない考えを強迫観念、ある行為をしないでいられないことを強迫行為といいます。たとえば、不潔に思い過剰に手を洗う、戸締りなどを何度も確認せずにはいられないなどがあります>

私もここに挙げられている典型的な症状である「鍵の確認」「手の洗いすぎ」を持っていました。出かける時は家中の鍵を使っていない窓まで確認し、それをさらに何度も繰り返すので電車に遅れることもありました。手を洗う時は「洗い忘れた場所はないか」と気になり、何度も何度も手洗いを繰り返しました。最長、一時間近く手を洗っていたこともあります。症状がひどい時は手洗いの時に母親に見ていてもらい、なんとか洗いすぎを防いでいたこともあります。

他にも、「道に物を落としたか気になって戻ってくる」「自転車で何か(誰か)を轢いてしまった気がして立ち止まってタイヤを確認する」など、数え上げればキリがない症状がいくつもありました。

もちろん、鍵の確認をすることは普通の人でも珍しくないでしょう。しかし、強迫性障害の場合は何度もドアノブを確認し、時には電車に乗った後不安でまた戻ってくるなど、生活に大きく支障をきたすケースもあります(ドアノブをガチャガチャと確認しすぎて、近所の人に泥棒だと思われないか、みたいな事もありました)。こちらの症状のつらさについては、こちらの漫画にわかりやすく描かれています。


こんな状態なので当然ながら一般的な社会生活を送るのが難しくなったり、大きなストレスでうつ状態や睡眠障害に陥ることもあります。私は、処女作を出版した2017年の3月以降が一番症状が一番ひどくてうつ状態になり、一日中寝転んだまま動けず、食事もほとんどできない日がしばらく続きました。

その後、二、三ヶ月して投薬治療によって症状は改善し、今はだいぶ良い状態で生活しています。もちろん、投薬は続けながら。

そして強迫性障害の治療続けてしばらく経ったある時、もう一つ困った事態に直面しました。「日中、異常に眠くなる」ということです。

その眠気は我慢できるようなものではなく、眠る時間も二、三時間から四、五時間と、相当な長時間になってしまうほどのものでした。ご多分にもれず睡眠薬を使っていた私は、最初薬が強すぎるか、不適切な薬を使っているせいではないかと思い、担当医に頼んでいくつかの睡眠薬試してみました。しかし、波はあれど、「日中の眠気」はほとんど改善しないままでした。

治療の苦労

そこである時、医師から「睡眠時無呼吸症候群かもしれない」と言われ、その検査をすることになりました。検査はまず自宅でできる簡易検査を行い、それではっきりしなければ1日入院で精密検査を行う、という段階があります。

しかし、私は幸いにも(?)入院する手間はかからずにすみました。検査の結果、「重度の睡眠時無呼吸症候群」だとわかったからです。精密検査するまでもない、ということです。ここから、私の治療が始まりました。

SASにはいくつかの治療法がありますが、一番効果がある(らしい)が「シーパップ」という装置を使った治療です。

睡眠時無呼吸症候群では何らかの理由で喉が塞がり、鼻から空気が吸いにくくなり、口をあけて呼吸してしまいます(この時にいびきが起こります)。そのせいで血中の酸素が不足し、質の良い睡眠がとれなくなってしまいます(太っている人がなることが多いらしいですが、もともと喉がせまい、など必ずしも肥満だけが原因ではないそうです)。そのため長時間寝たのに疲れがとれない、強い眠気に襲われる、などの症状が出てしまいます。

シーパップは、これを防ぐために鼻にマスクをし、呼吸が細くなるとマスクにホースで繋がれた機械から酸素を送り込むことで治療する機械です。睡眠時の呼吸データはオンラインで医師に送られ、次回の診療ではその数値をもとに状況の分析が行われます。自分で行うのはマスクの装着と、取り付けるゴムバンドの調節ぐらいです。

ただ、これが私の場合はなかなかうまくいきませんでした。なにせ、つけるのはこんなマスクです。

画像1

ゆるければうまく酸素が送れず、きつければ気持ち悪くて夜中に外してしまいます。また、花粉などで鼻の調子が悪ければ、取り付けることもできません。つけ心地そのものが気になり、眠る前にはずしてしまうこともよくあります。

私はこの治療を開始して一年ほど経つのですが、なかなか「よく眠れた」という日がありません。睡眠薬を使うと寝つきがよくはなるのですが、舌の力が抜けて喉が塞がりやすくなることもあるらしく、それが原因で治療がうまくいかない場合もあるそうです。寝つきはよくなるが深く眠れない、というジレンマに陥るのです。また、この装置は月に五千円ほどレンタル料がかかるため、出費としても侮れません。

未だに、起きたら朝食を食べ、歯を磨いて眠る、という人からみればどうしようもない生活が続いています。しかし一見自堕落に見える生活も、本人としては望んでやっているわけではありません。むしろ、非生産的で時間がもったいなくて、無駄な日々を過ごしている後悔でいっぱいです。それでも、襲ってくる眠気はとてもがまん出来るようなものではないのです。歩いているとふらつくような眠気では、読書すらままなりません。私は文章を書いて生活しているのですが、これではお金のない時にアルバイトもできません。なんらかの公的保護も受けられません。ですので、拙著に興味を持たれた方が、書籍やnoteを購入して頂ければ一番の励みになります。よろしくお願いします。

最後に、もしあなたご自身、もしくは周囲の方でよく眠そうにしているならば、「怠けている」と思い込んだり決めつけたりするのではなく、SASを疑ってみて下さい。ひょっとしたらこの病を患っているかも知れず、適切に治療できれば人生を大きく改善できるかもしれません。

拙著一覧




ご厚意は猫様のお世話代、資料購入費、生きる糧などに充てさせていただきます。よろしくお願いします。