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【作品紹介】僕の心のヤバイやつ:推理小説のようなラブコメ

普段は葬送のフリーレンに関する投稿をしていますが、今日は漫画「僕の心のヤバイやつ」の作品紹介を投稿します。



全体の感想

まず素直な感想としては、シンプルに面白かったです。


この作品の主な登場人物は、陰キャの中学生男子・市川京太郎と、同じクラスの美少女・山田杏奈で、内容としてはその二人の関係性を見守るラブコメになります。


私も陰キャの中学生男子だった時期があるので、市川が思い悩んでいる感覚がわかりますし、ラブコメ特有のエッチな場面にも、わりと素直な反応を見せる所に笑ってしまいました。


あとこの作品には、アンジャッシュのコントのような、人によって受け取り方が違うセリフが度々登場し、その認識のすれ違いに思わず笑ったりしました。


丁寧に設計された「わからない」

全体としてはコメディが多めの作品ではありますが、私が最も面白いと思ったのは、丁寧に設計された「わからない」部分です。


山田杏奈の心が「わからない」

まず作品を通して徹底されているのは、ヒロインの山田杏奈の心理描写、特に心の中の声が全く描かれないことです。


もちろん山田が自分の気持ちを、声に出して言う場面はありますし、山田自身が素直な性格なので、感情が表情に現れることもありますが、いわゆる他人には聞こえないモノローグとして、心情を描く場面は全くありません。


それ故に、特定の場面で山田がどう考えているかは、究極的には「わからない」ように設計されています。


なので私を含めた読者は、この時山田はどう思った、などの推理をしながら読み進めるようになりますし、それが楽しい漫画でもあります。


市川京太郎の行動が「わからない」

上記の山田とは対照的に、市川京太郎の心の声はモノローグで細かく描かれるため、市川の考えていることが「わからない」ということは少ないです。


ただ、心の中にヤバイやつを飼っている市川は、その心の声とは違った行動をよく実行します。


その行動については、後々市川なりに理由付けを行うこともありますが、多くの場合読者にはその行動が「わからない」です。


なので山田の心と動揺に、市川の行動についても、その理由を推理しながら読み進めていくのが楽しいです。


セリフだけでは「わからない」

またこの作品は、市川のモノローグが若干セリフ量としては多いですが、その他の会話などのセリフは、結構少ないです。


それ故に、セリフだけを追っていても真意や意味が「わからない」ようになっており、登場人物の身につけているものや、背景に描かれているものなどを手掛かりに、色々と推理する必要があります。


その伏線になっているものを探す楽しみも、この作品にはあると思います。


わかるけど「わからない」

上記にて、幾つかの「わからない」を紹介しましたが、少なくとも巷にあふれる推理小説よりも、「わからない」の難易度は低いです。


例えば山田の心は確かに「わからない」ですが、感情が素直に表情に現れるので、結構わかりやすいですし、市川の「わからない」行動も、思春期を経験した人にとってはわかりやすいものだとも言えます。


この「わからない」の難易度は、絶妙な難しさに設計されているので、初見の人も十分楽しめますし、繰り返し読む方にも新たな気づきが得られると思います。


上記で紹介した「わからない」が丁寧に設計されているので、本作品はタイトルの通り、推理小説のようなラブコメだと、個人的には感じました。



もちろん上記で紹介した以外にも、個性的なキャラクターや、登場人物間の絶妙な距離感など、魅力的な所はいっぱいありますので、もし未読の方は以下リンクから試し読みしてみることをオススメします。



長くなりましたが、最後まで読んで頂きありがとうございました。


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