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Balance and Harmony(次期教育振興基本計画についての所感)

次期教育振興基本計画が中央教育審議会から答申される。

令和5年3月8日、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会から「次期教育振興基本計画」が答申されました。この答申に基づいて国の教育施策の方向性が示されることになります。国の指針が示され、都道府県及び市区町村の設置する学校や私立学校、大学等の高等教育機関にまで及ぶ大きな方向性が示されたわけです。
具体的に学校教育の現場に施策として降りてくるには少し時間がかかるわけですが、教育の現場はLIVEを前提にしているので、通達が下りてくるまでは関係ないという姿勢はよくないでしょう。学校現場の先生方(特に管理職層)が内容を読み込んで、自校ではどのような可能性があるかを深く探求的に考えていくことが求められると思います。児童生徒にも探求学習を求めているわけですからね。教員側が行政からの指示を待っている姿勢では教育の効果は上がらないことは自明です。

計画の基本的な方向性は?

次期教育振興基本計画の中で5つの基本的な方向性が示されています。

①グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成
②誰一人取り残さず、全ての人の可能性を引き出す共生社会の実現に向けた教育の推進 
③地域や家庭で共に学び支え合う社会の実現に向けた教育の推進
④教育デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
⑤計画の実効性確保のための基盤整備・対話

この5つの基本的な方向性について、納得ができないという人は多くないでしょう。人口減少社会において、社会の維持発展と一人一人を大切にした教育、地域とのコラボレーションによる教育展開、ICT機器活用の更なる推進など、現代社会の課題を解決するための教育施策の方向性が示されていることは間違いありません。
昨今報道でも取り上げられている「教職志望者の減少」や「家庭の経済状況に応じた教育格差」そして「ウクライナ・ロシア情勢」についても触れられています。この答申を受け、所管する文部科学省だけでなく、新設される子ども家庭庁や内閣府、厚生労働省などの施策も具体的に展開されていくことになると思います。
もう一度熟読して、具体的な施策としてどのように展開されるか注目していきたいと思っています。

「Balance and Harmony」??

上記のように概ね現在社会の課題に即した指針になっているのは間違いないのですが、答申の本文中や概要版に散見される「ウェルビーイング」について、違和感を覚えてしまいます。
それは、ウェルビーイングが個人の感覚的な視座であること、教育現場においてそこで働く教職員がウェルビーイングの状態にないことが想像できるからです。相変わらず教職員の精神疾患罹患による病気休職は減る兆しはないですし、ガラパゴス化し対応すべき教育ニーズ(本当に学校教育のニーズ?)が増大し、教職を目指すものの数は減少の一途を辿っています。自治体によっては教員採用試験を前倒しする自治体も増えてきました。個人の幸せを願う視点は理解できますが、社会全体が感じる幸せの基準は誰がどのように設定するのでしょうか?現在も「報道の自由」がニュースで取り上げられていますが、プロパガンダとも言える報道の在り方の中で社会の幸せが意図的に作られてしまっていく懸念もあります。
最も「?」だったのは、「日本発の調和と協調(Balance and Harmony)に基づくウェルビー イングを発信」という文言でした。自分の勉強不足かもしれないのですが、この文言に対して、一体何を求めているのか理解に苦しんでいます。
実業家の堀江貴文氏(ホリエモン)の著書である「すべての教育は「洗脳」である」の内容を思い出しました。また第2次世界大戦における沖縄戦での学徒動員や鹿児島県知覧を中心とした特攻隊の歴史などを思い起こした時に「調和」や「協調」という言葉が必ずしも、個人や社会のウェルビーイングに結びつかない可能性があるのではないかと勘繰ってしまします。
教育は国の根幹を成すということは古くから言われていることです。今回の答申はこれからの国の在り方を示すということに他なりません。
一人一人の違いが認められるからこそ、響きあうHarmonyになることを願うばかりです。



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