秋萩帖1280

いわきりなおとの国宝漫遊記 第10回「秋萩帖、伝小野道風筆」の巻

仮名の歴史伝える書跡 
国宝「秋萩帖」伝小野道風筆  東京国立博物館蔵 

 漫画家いわきりなおとさんが、平安時代の能書家(書の名人)、小野道風筆と伝わる秋萩帖(東京国立博物館蔵)を紹介します。
   ×   ×   
 約1100件の国宝のうち、書跡は227件で2割を占めます。つまり国宝鑑賞をしていると、たくさんの書に出合うことになります。最初は違いがあまり分かりませんでしたが、たくさん見ているうちに分かるようになり、今では書跡を見るのが大好きになりました。

 平仮名の先祖といえる草仮名で書かれた秋萩帖は、色替わりの20枚の紙を継いだ全長842・4センチの巻物です。和歌48首と中国の書家、王羲之の手紙の写しが書かれています。
 その中でも始まりの第1紙が小野道風筆とされています。花札に、傘を差した貴族の男性とカエルの絵柄があり、その人物が小野道風です。
 全て漢字で書く中国の書と違い、日本の書は漢字も仮名も使います。仮名を使うと紙面に余白が生まれ、文字の配置も大切になります。
 文字の美しさはもちろん、配置、墨の濃淡、線の太い細いでリズム感を生み出す小野道風の優雅な書は、「和様」と呼ばれる日本的な書のスタイルの先駆けとなりました。
 秋萩帖は、今日まで書道家の手本として人気があり、江戸時代後期の僧で書家である良寛は秋萩帖の拓本(写し)を持ち歩いていたことが知られています。
 書道史、日本語史、日本文学史の上でも重要で、平仮名が生まれる過渡期の歴史ロマンが感じられる、素晴らしい文化財だと思います。(談)

(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠) 
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