阿修羅1280

いわきりなおとの国宝漫遊記 第8回「天平の美少年  阿修羅像」の巻

仏女に人気、天平の美少年 阿修羅像  奈良市・興福寺蔵
 漫画家いわきりなおとさんが、奈良市の興福寺が所蔵する国宝阿修羅像を紹介します。
   ×   ×
 広島カープを応援する「カープ女子」や日本刀が好きな「刀剣女子」が近頃
話題ですが、「国宝阿修羅展」が開かれた2009年ごろから、仏像が大好きな女子、略して「仏女」が注目されています。

 数ある仏像の中でも、仏女の人気が高いのが興福寺の阿修羅像です。仏様には偉い順に「如来、菩薩、明王、天部」があり、阿修羅は一番下の天部に位置づけられています。一番偉いとされる如来様を差し置いて、なぜ人気なのでしょう。
 まず仏女が阿修羅像に対してよく使う褒め言葉に「イケメン」があります。
 如来のモデルは、修行が終わり悟りを開いた頃のお釈迦様です。大仏様を思い出してください。体形はふくよかで質素な服装、髪形はパンチパーマのような螺髪。そして悟り切った表情。穏やかな大人の魅力です。
 対して阿修羅像はスマートで、おしゃれに結った髪形。アクセサリーを身にまとい、なんとも言えない思い悩んだ表情は、「天平の美少年」と称されています。
 6本の腕に3面の顔というロックスターみたいなお姿もカッコいい。
 阿修羅とは、もともとインドの悪魔アスラを仏教に取り込んだもの。阿修羅像の表情は、戦っていた頃をざんげしているとの見方もあります。

 その物憂げな表情は、見る角度だけでなく、年齢や心境といった見る者の環境によっても変わります。寂しそうにも、悲しそうにも、うれしそうにも見えます。
 見る者の気持ちに寄り添ってくれる優しさが、仏女の気持ちを捉えて放さないのです。

(談 いわきりなおと/記事編集 共同通信 近藤誠) 
__________________________________
※いわきりなおとの国宝漫遊記は共同通信加盟新聞にて連載中です。
最新回は掲載新聞にてお読みできます。
掲載新聞は、秋田魁新報、新潟日報、静岡新報、上毛新聞、神戸新聞、中國新聞、山陰中央新報、高知新聞、西日本新聞、宮崎日日新聞、熊本日日新聞、琉球新報、福島民友新聞、東京新聞、大分合同新聞、デーリー東北、室蘭民報です。(2017,12-01現在)
よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?