ハゲの話

私は父譲りの若はげだった。20代前半から禿げてきた。しかも私は痩せていた。だから20代前半は暗黒だった。バーコード頭のやせっぽち20代前半を、何処のイケメンゲイが相手にしてくれようか。男のハゲが魅力に変わるのは、ある年代以降である。20代のハゲは戴けない。



それでカツラを被ったが、カツラはすぐばれる。それに高い。私はアートネイチャーを使ったが、一個が30万円ぐらいする。しかもハゲがどんどん進行するのでカツラも次々Lサイズに新調しなくてはならない。結局車一台ぐらいアートネイチャーに貢いでしまった。



そんな私に救世主が現れた。ミノキシジルとフィナステリドだ。私は毎日ミノキシジルを塗り、フィナステリドを飲んだ。すると、効果が現れた!何も無かった私の頭皮に、産毛らしきものが生えてきた。産毛はやがて禿げていた全体を覆った。私はついに、カツラを脱いだ。



以来うん十年、私はフィナステリドを飲み続けている。インド製のジェネリックだからそんなに高いものではない。個人輸入で取り寄せている。



だが最近私はそれをどうしようか考え始めている。確かに産毛は生えたが、産毛に留まるのだ。それ以上に伸びてくれない。床屋では、毎回周辺の禿げない部分と産毛部分に出来る曲線をどう隠すか難しい注文を突きつける。



しかし私ももう58だ。そろそろハゲが恥ずかしくない年頃になった。この産毛に、さようならを告げてもよいのでは無いか?そう迷いながらも今日も一箱注文した。さて、このフィナステリド、いつまで続いたものやら。

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