漢方は素人に分かるか

さっきの話の続き。



西洋医学でも「分かったようなことを振り回す」患者は多いが、これが漢方になると、更に手が負えなくなる。「私の症状には何とか湯が合うのでそれを出してください」という患者には、私はわざと中医学弁証をずらっと並べて、「貴方の弁証はこうですから処方は違います」という。



私は中医学も日本漢方も30年以上勉強したが、未だに自分でそれが分かったとは思っていない。そもそも中医学にしろ日本漢方にしろちょっとほじくると矛盾だらけで、私が分からないという以上に長い歴史の中の雑多な知識の寄せ集めであって、統一した理解などは確立していないのだ。中医学は日本漢方より見かけ体系的なので、中医学を学びだして数年の若い連中はさも難しい中医学用語を振り回してそれで患者が治せると思い込むが、本当はそんなことは無い。中医学というのはあくまでイロハに過ぎない。



30年勉強してきた私がこう考えているのに、ネットで自分の症状を調べて「私には半夏厚朴湯が合っています」とか言うのは、まさにおへそが茶を沸かす類である。そう言う患者は、私は慇懃無礼にお帰り戴いている。「あなたは私より中医学がよく分かっておられるようですから、自分で薬局で買ってください」と言って帰して、その後には塩を撒いておく。2度と来るなということだ。



30年勉強しながら臨床をやってきた私が「結局これはよく分からない」というものを、ネットを漁って分かると思うな、馬鹿。

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