コロナ体験記

昨日より悪寒発熱37.7℃。無汗にて太陽病傷寒と判断し麻黄湯3包内服。このとき抗原定性は陰性。今朝起きると熱は37.2度まで下がるも全身倦怠感強く、関節、筋肉の疼痛あり、再度検査すると陽性。咳酷く咽頭痛もあるため麻杏甘石湯と小柴胡湯を合方したが全身倦怠感さらに著しく、ただいねんと欲す(ただただ横になりたい)。熱は変わらないが、身体が芯から冷えている。少陰直中と弁証し、麻黄附子細辛湯で回陽救逆を図る。



回陽救逆の後布団に入ると自汗あり、脈浮弦。弦脈は私の普段の脈だから、浮と見てよし。つまり少陰から脱して太陽病中風に入ったと弁証。桂枝湯を3包服用。エキス漢方はこうした急性期には全て3包で服用する。



急性疾患の漢方治療は、急を要する。漫然としていてはいけない。証が転変するのを随時正確に見極め、それに沿った処方を服用する。



麻黄附子細辛湯3包服用したところ、激しい全身倦怠感と芯から冷える冷えは改善。熱は37.8℃に上昇。しかし先ほどの状態より体は楽。


大量の下痢便あるも、私は元から過敏性腸症候群で常に下痢気味故、コロナの消化器症状かどうか判断付かず。とりあえず腹はすっきりしたのでこれで様子を見る。



熱は37.9℃に上昇するも体は楽。おそらく、本来身体の免疫機構はこのぐらいの温度上昇を見込んでいたのが、麻杏甘石湯と小柴胡湯という冷性の薬で無理矢理37.2℃に下げられ、体力が虚脱したものと思われる。それを麻黄附子細辛湯で救ったのである。



38℃。しかし37.2℃に下げた時のようなつらさは無い。桂枝湯は辛温解表の薬で身体を温めるので、特に問題なしと判断、そのまま治療を続ける。



先ほど大量の下痢をしたのに、また腹満が出てきた。このまま下痢するならば、太陽与陽明合病者,必 自下利,葛 根湯主之であり、太陽と陽明の合病となる。このときは葛根湯を使えというのだが、まだ下痢しないので、様子を見る。



腹満が強くなってきた。太陰の症状とみて大建中湯で動かすべきか?しかし熱証に大熱の大建中湯を使うのはいかがなものか?熱は38度のままだが、朝に見られた咳と咽頭痛は非常に軽くなった。冷えはなくなり、やや顔が火照る。そうか、陽明病位の胃の実満に違いない。小承気湯の変法である麻子仁丸を使って下そう。



日頃発熱外来では、コロナの患者には固定した処方を一週間分与える。しかしこうして自分が感染してみると、コロナの証の転変は非常に早い。数時間ごとに病期が変わる。1週間同じ薬ではとても対応出来ていなかったのではないか。



多分ここを見ている人は何が何だかさっぱり分からないだろうが、ここに出てくる専門用語は傷寒論という漢方の感染症治療理論にある「六経弁証」という理論に沿っている。体表を邪が冒す太陽病期、高熱と腹満が続く陽明病期、熱感悪寒をくり返す(寒熱往来)少陽病期、消化器系の機能に障害が起きる太陰病期、循環動態に異常が生じる少陰病期、multiple organ failureで死に到る厥陰病期という6種のステージが感染症には存在するという理論だ。無論現実にはこの順にだけ進むわけでは無く、今日の私も一時太陽病期から突然少陰病期に陥った。このようなvariationはあるが、基本は上記の6ステージの何処に疾患が存在するかをきちんと診断出来れば傷寒という種類の感染症は治療出来るというのが傷寒論の理論だ。

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