見出し画像

昆布漁 -知床-

7月末、知床半島を旅行した。北海道へ行くのは3度目だが、知床に行ったのははじめてである。

知床では、半島を挟んでウトロと羅臼の両方から知床岬までいくクルーズに乗った。ウトロと羅臼は色々と違う。

オホーツク海に面するウトロ側は比較的穏やな海に対して、羅臼側は太平洋に面する外洋のため荒れる。実際、羅臼側から出港するヒグマクルーズの午前便には乗船できたが、マッコウクジラやシャチを見る午後便のクルーズは高波のため欠航になってしまった。

ウトロ側では数多くの奇岩や滝、エメラルド色の海が見られた。ケイマフリやオジロワシなど固有種の鳥、営巣地もたくさんある。

DSCF0760 - コピー (2)

ウトロは観光色を感じるが、羅臼は漁師の小さな町という素朴さが印象に残った。コロナ禍中ではあるが7月の連休は混んでおり、ウトロ側の宿はほぼ満室に近く、羅臼側の民宿に2泊した。結果的に羅臼では、そこに暮らす人々の生活を垣間見ることができて良かった。

ヒグマクルーズに乗船した日の午前中は、たまたま昆布漁の解禁の日で、ボートに昆布を乗せた漁師さん達の姿がたくさんあった。

DSCF0982 - コピー (2)

私達が乗ったボートの船長さんは元漁師さんで、

「どうだ~、もうくたびれたのか? 俺の船と交換すっか?」

なんて会話が、現役漁師さんと交わされる。この船長さんがベテランの漁師さんで、地元では一目置かれていることがやりとりから伝わってくる。船長さんがそんな方だったから、ただの観光客である私達も昆布漁を間近で見学させてもらえたのだと思う。

DSCF0992 - コピー (2)

今年は昆布の太りが遅れ、この日は待ちに待った解禁だったようだ。よく見ると、漁師さんによって昆布の積み方が違く、個性が出ていて面白い。解禁日は午前中のみで漁を終えるが、翌日からは早朝から夕方までひたすら昆布を採り続けるそうだ。採った後は、番屋で昆布を一つ一つ丁寧に洗い、干す作業が待っている。休む間もない重労働ではあるが、漁を終えた漁師さん達のフルスピードで港へボートを飛ばす姿からは喜びが伝わってくる。

国産昆布の約9割は北海道産で、そのうち羅臼昆布は1-2%しか採れなく、希少な高級品と言われている。収穫から乾燥、熟成まで23の工程全部を手作業で行われるそうだ。
その果てしない手作業のスタートをこの日に偶然見られたことはとても貴重だった。

この地に生まれ、目の前に広がる自然と共に営む暮らし。自然環境の変化に伴う苦労や定住し続けることは決して楽なことではないだろう。とはいえ、しっかりと地に根を下ろし生きる姿は、あるがままを受け入れることの謙虚さや万物を慈しむ優しい心を感じた。自然から切り離された生活をする私にとって、彼らの太陽のような笑顔はきらきら映った。

DSCF0917 - コピー (2)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?