kiiroi kado

いわさきようこ: 本に纏わること(本作りや絵本の読み聞かせ等)やお菓子作りが好き。ブッ…

kiiroi kado

いわさきようこ: 本に纏わること(本作りや絵本の読み聞かせ等)やお菓子作りが好き。ブックマンション@吉祥寺の棚主をやらせて頂いています(屋号: tanabota books)。旅行と梅酒が好き。一児の母。

最近の記事

「言葉」がない風景(2)

Dくんの姿は、当時の私の姿そのものに映った。朝、家を出て学校に到着し、帰宅するまではずっと日本語が聞こえてくる。周囲は色々と自分を気にしてはくれるけれど、もうお腹いっぱいなのだ。「勘弁してよ、ちょっと休ませて」と心が悲鳴を上げている。「それでもこのプリントが終われば、僕は家に帰ることができる、だから僕はさっさとこれを片付けているんだ、、」。そんなふうに彼の姿は言っているようにみえた。 あの時の自分の姿と重なり、私はいたたまれなくなった。隣に座らずに彼を一人にした方がよいだろ

    • 「言葉」がない風景 (1)

      先月末から、外国籍の子供への学習支援ボランティアをはじめた。 特に理由があったわけではない。たまたま友人とお茶をしていた際、「Iさん(私)は昔、海外に住んでいたんだよね? 外国で暮らすってどんな感じ? 言葉はどのくらいで覚えたの?」と聞かれた。話を聞くと、彼女は近所の方の紹介で4月から公民館で週に1回、外国人の子供達を相手に日本語学習のボランティアをしているという。 Bさん(友人)とは小学校の読み聞かせボランティアで知り合った。Bさんは日本語を教える資格を所持しているわけで

      • ブックマンションでの一年 <後編>

        選書と棚づくり選書という言葉を聞いて、馴染みを感じる方はいるだろうか? 普通はあまりないかと思う。私は小学校の読み聞かせボランティアを5年程やっており、聞いたことはあったが、「つまり本選びだよね?」くらいにしか思っていなかった。私が所属するボランティアには、学年ごとに合った絵本を選び、その組み合わせや時間配分などを考えてくれる選書担当がおり、お任せしてきた。そんな私が「選書の奥深さ」を考える機会が訪れた。 9月、ブックマンションでTV取材を受けた。私のような初心者棚主でよい

        • ブックマンションでの一年 <前編>

          早いもので、私がブックマンションの棚主になってからもうすぐ一年になる。コロナ禍中で新しいことをはじめる。今ある暮らしの中からの引き算ではなく、多少なりともコストが発生し、エネルギーがかかることをする。というのは、もしかしたら「やらなくてもいいこと」なのかもしれない。がしかし、逆に言えば、それは自分の心にとても忠実で、本質を突いたアクションだったと思う。 コスト面で言えば、毎月発生している棚利用料に対して、採算はとれていない。それは棚主になる前から了解していたことである。利益

        「言葉」がない風景(2)

          失敗からみえる風景

          昨年末から友人や知り合い限定にお菓子屋さんを始めた。 中学生の頃から焼菓子を作るのが好きで、友人の誕生日にプレゼントしたり、人に会うとき「おやつにどうぞ」とお土産代わりに渡させてもらってきた。「美味しい」と笑顔が見られるのが何より嬉しくて、細々だが素人菓子を作り続けている。 自分の体力もキャパシティも分かっているので大量には作れない。種類も少ない。また毎回同じようにも作れない。が、知り合いに限定にするのであれば、「そんな肩の力が抜けた気楽なお菓子屋さんがあってもいいんじゃな

          失敗からみえる風景

          同じ方向をみること-藻琴山-

          屈斜路湖の北側に藻琴山という名の山がある。 本来であれば、羅臼岳に挑戦したかったのだが、体力面など準備不足もあり、ガイドブックに「約1時間で気軽に登れる山。観光のついでに立ち寄るのもよい」とあったので登ることにした。 藻琴山の山頂は標高1000m。駐車場から見えていた高台は山頂ではなく、アップダウンの繰り返しや岩場もあり、山頂と思った場所が中継地点であったことが度々あり(笑)、気軽なハイキングというよりは中身がとても濃い1時間の登山であった。ヒグマももちろん出ることもある。

          同じ方向をみること-藻琴山-

          シマフクロウの宿 -知床-

          羅臼に「鷲の宿」という名の民宿がある。ここは鷲が出るわけではなく、民宿前にある川にシマフクロウが現れる。 シマフクロウは、日本では知床に100羽程しかいない絶滅危惧種である。体長約70cm、翼を広げると180cm、体重4kg前後、世界最大クラスのフクロウだ。主食はフクロウにしては珍しく「魚」であるため、"Fish Owl" と呼ばれたりもする。 私は鳥には詳しくないが、フクロウだけはとても好きだ。ガイドブックの羅臼のページには非常に小さくだが一応紹介されている。きっとフク

          シマフクロウの宿 -知床-

          昆布漁 -知床-

          7月末、知床半島を旅行した。北海道へ行くのは3度目だが、知床に行ったのははじめてである。 知床では、半島を挟んでウトロと羅臼の両方から知床岬までいくクルーズに乗った。ウトロと羅臼は色々と違う。 オホーツク海に面するウトロ側は比較的穏やな海に対して、羅臼側は太平洋に面する外洋のため荒れる。実際、羅臼側から出港するヒグマクルーズの午前便には乗船できたが、マッコウクジラやシャチを見る午後便のクルーズは高波のため欠航になってしまった。 ウトロ側では数多くの奇岩や滝、エメラルド色

          昆布漁 -知床-

          ブックマンションでの一日

          先週金曜日、ブックマンションでお店番をした。よく「ブックマンションって何?」と聞かれるので、今回はそのことについて書いてみたい。 ブックマンションとは?吉祥寺の東急デパート裏、ビルの地下1階にブックマンションはある。ブックマンションは、棚ごとに本の売り主が異なる、小さな本屋さんの集合体である。最近は空き物件などを利用し、複数の人達が古本を売る「シェア型古本屋さん」が全国的にも増えてきているようだが、2019年夏にスタートしたブックマンションは「新しい本屋さんの形」として注目

          ブックマンションでの一日

          いちごミルク味と父

          先日、近所にあるカフェでいちごミルク味のかき氷を食べた。 子供の頃、父と福田屋の喫茶店で飲んだいちごミルクを思い出した。 父は私が物心ついたときから単身赴任を繰り返していたため、週末家に帰ってくる人だった。 世の中のお父さんは毎日家に帰ってきて、一緒にご飯を食べたり、お風呂に入ったりするのだろうけど、父は私が一歳の頃から単身赴任をしていたので、普段から家にいないという感覚は当たり前だった。 父の不在による責任感からか母は厳しかったけれど、基本的には優しかったし、兄は頼れ

          いちごミルク味と父

          黄色いカド

          私の自宅近くに「黄色いカド」がある。 そこはごく普通の住宅街にある角で、そのような名前で呼ばれているわけではない。私が勝手にそう呼んでいる。 最寄り駅までの途中にある場所なので、よく通る。いや、私が好きだから通るだけで、そこを通らずとも駅へはたどり着けるから、他の人には特に意味のある場所ではないと思う。 その角にはじめて「黄色」をみつけたのは春先だったと思う。角に小さな黄色い花が咲いていた。おそらくどこにでもあるような花で珍しい花ではない。が、その角にぴったりと合わせた

          黄色いカド