岩倉拓

あざみ野心理オフィス共同主宰、臨床心理士、福島支援がライフワーク。レスポンスしてくれた…

岩倉拓

あざみ野心理オフィス共同主宰、臨床心理士、福島支援がライフワーク。レスポンスしてくれたらうれしいです。毎週月曜日更新できたら、、、。

マガジン

  • ジブリで学ぶ心理臨床学

  • 福島のこころの支援 現場ルポ(仮)

  • 新型コロナ(COVID-19)との心理戦

    新型コロナウィルス関連の考察やノウハウです。臨床心理士としての視点で、目に留まったもののマガジン

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ハクはいったい誰なのか? ジブリで学ぶ心理臨床学③−「千と千尋の神隠し」

千尋は無気力で拒食症?!  さて、「千と千尋の神隠し」の続きです。前回は、千尋の不機嫌さと無気力は、親の身勝手への怒りや不本意な引越しへの絶望と読み解きました。千尋は、言わば生きることの希望を見失い、無気力になっています。「となりのトトロ」の冒頭も引越しのシーンからはじまるのですが、さつきとメイは新しい土地や家に希望と好奇心をもって楽しんでいますが、千尋は、新しい街にも学校にもまったく興味がないようです。また、サツキ、メイに比べると千尋の手足が細すぎることも気になります。千

    • アニメーションの精神分析「君たちはどう生きるか」宮崎駿

       第13回日本精神分析的心理療法フォーラムの企画分科会で岩宮恵子先生、太田裕一先生とジブリの最新作「君たちはどう生きるか」について話します。とても楽しみにしています。  興味がある方はぜひご参加ください。オンライン開催もあります。 日時:7月6日(土)16:30 〜 19:00 「アニメーションの精神分析」 シンポジスト:岩宮 恵子、太田 裕一、岩倉拓 指定討論:小林 陵  司会:武藤 誠 大会テーマは「精神分析フイールドへの招待」です。お申し込みは下記より。 「君たち

      • なんにもしないでゲームばかりしている!?−それが解決の糸口です−

         中学1年生のシゲルは学校に行かず、部屋に閉じこもり、1日中スマートフォンを触っている。  シゲルの母は深いため息をつく。「なんにもしないでスマホでずーっとゲームとかやっているんです。もう我慢の限界で、スマホを取り上げようとしたら、今まで見たこともないように怒って、暴れて。どうしたらいいんでしょう。」  シゲルは壁を殴って穴をあけ、スマホを絶対に渡さない、とスゴんだそうだ。彼の豹変に両親は驚き、途方に暮れて面接に訪れた。  ひきこもりや不登校の相談に、スマホはよく登場する。親

        • 追悼−乾吉佑先生

           10年以上前になるが、首のヘルニアによって耐え難い痛みがあり、臨床はもちろん日常生活にも支障をきたした。痛みに耐えかね、乾先生のスーパービジョンの際にそれを伝えると、「実は」と先生自身の痛みとの苦闘の歴史を話していただいた。先生は病のため、関節の間の神経が圧迫され、身体の節々に常に強烈な痛みが走っていることを話してくれた。どのような姿勢が痛くないのか、どのような歩き方がよいのか、こちらをかばうとあちらが痛くなり、と痛みと共存せざるを得ず、さまざまな工夫をしてきたとのことだっ

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        ハクはいったい誰なのか? ジブリで学ぶ心理臨床学③−「千と千尋の神隠し」

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        記事

          講演会のお知らせ「ジブリで 学ぶ “わたし”」〜となりのトトロ、千と千尋の神隠しからみる臨床心理学〜

           記憶に残り、こころをうつ映画というのは、どこかでわたしたちの普遍的なこころをとらえています。スタジオジブリの作品は、今やわたしたちのこころ、原風景、共通の思いをとらえていると考えています。この講演会では、スタジオジブリの作品を臨床心理学の視点で味わいながらわたしたちの「心理的自立」や「働くこと」「愛すること」について考えていきたいと思います。  どうぞお気軽にご参加ください。  特に、「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」を見てくることをお勧めします。 日 時 2023年

          講演会のお知らせ「ジブリで 学ぶ “わたし”」〜となりのトトロ、千と千尋の神隠しからみる臨床心理学〜

          なぜ千尋は豚の中に両親がいないことを見分けられたのか?−「千と千尋の神隠し」にみる自立の心理臨床学−

          <千尋は豚の中に両親がいないことをどうして見分けることができたの?>  映画のクライマックスで、元の世界に戻れるかがかかった問いに自信を持って答えた千尋。意地悪に見えた湯屋の面々も千尋の正解を祝福する印象的なシーンです。それにしても、千尋はなぜあの問いに答えることができたのでしょうか? <千と千尋のリアルさ>  「千と千尋の神隠し」はジブリ作品の中でも人気の高い作品です。主人公の千尋はジブリ作品に見られる真っ直ぐで正しい主人公とは一線を画す、冴えない顔をした都会っ子です

          なぜ千尋は豚の中に両親がいないことを見分けられたのか?−「千と千尋の神隠し」にみる自立の心理臨床学−

          触れることは心地よいこと/痛いこと

          (本原稿はキリスト教保育連盟の「ともに育つ」6月号の依頼原稿です。)  連載の最後は「触れること」の大切さと痛みについてお話しします。  ヒトが子育てなしでは生きられず、しかも生き物で最長の養育期間を持つのはこの「触れる」交流が生きていく上で不可欠だからです。赤ちゃんの時は、抱っこやおんぶ、おっぱいを飲む、おむつの世話、などなど皮膚と皮膚の「触れ合い」によって、赤ちゃんは命の源=愛情を自分の中に取り入れて成長していきます。愛着関係は触れ合いそのものによって伝達されます。な

          触れることは心地よいこと/痛いこと

          話すこと=放すこと・離すこと 

          (本原稿はキリスト教保育連盟の「ともに育つ」5月号の依頼原稿です。)  人と話す機会が減っています。感染対策が緩和され、久しぶりに人といっぱい話したらすっきりした、気持ちよかった、など話すことの大事さを実感した声も聞きます。今回は人と「話す」ことのメリットについて改めて考えてみましょう。  話すことは、人が情報をやりとりし、伝達するためにあります。私の観点では、話すことの重要な機能は「放す」ことです。イライラしたとき、みなさんはそれをどのように解消していますか?運動やカラ

          話すこと=放すこと・離すこと 

          マスクのデメリットを補う(コロナ禍のマスクの子育てのへの影響)

          (本原稿はキリスト教保育連盟の「ともに育つ」4月号の依頼原稿を元 にしています。) 「せんせい、怒ってますか?」  唐突にクライエントにそう尋ねられて私は戸惑いました。私はむしろあたたかい気持ちでいましたから、感情が正反対に伝わっていたのです。 鼻まで覆ったマスクのため、見えているのは私の生まれつきの細い目だけ。少ない情報によって、表情の読みまちがいやズレがコロナ以前より明らかに増えました。私自身もクライエントの表情や雰囲気を読み取ることに、以前より力を割いていること

          マスクのデメリットを補う(コロナ禍のマスクの子育てのへの影響)

          なぜ千尋の両親は豚になったのか?千尋の世界が怖い理由―ジブリで学ぶ心理臨床学②―「千と千尋の神隠し」

          謎の多い「千と千尋の神隠し」  今回のジブリで学ぶ心理臨床学は「千と千尋の神隠し」になります。「千と千尋」はジブリの中でも一番のヒット作で人気が高い作品です。  ですが、実は結構難解で謎も多い作品です。たとえば、「千尋が迷い込んだ世界はどこなのか?」「登場するキャラクターはなにを意味するのか?」などなど考えはじめると、わからないことも多いのです。  私には、この作品は宮崎監督が自分の作りたいことをこころの底から自由に作っていることが伝わってきます。さまざまなテーマが込められ

          なぜ千尋の両親は豚になったのか?千尋の世界が怖い理由―ジブリで学ぶ心理臨床学②―「千と千尋の神隠し」

          なぜサツキとメイにトトロが見えるのか? ジブリで学ぶ心理臨床学①「となりのトトロ」

           この連載では、臨床心理学の視点や理論をもとに、スタジオジブリの映画の「謎」や「疑問」に迫ります。これが正しい解釈です、という訳ではありません。あくまでも臨床心理士の視点ではこう見えるということです。お読みいただいた後でジブリ作品を見ると、新たな見方ができたり、作品をより深く味わうことができるように書いてみようと思います。 子どもたちが大好きな「となりのトトロ」  わたしは「となりのトトロ」を見ている子どもを横で見ているのが好きです。映画の世界に入り込み、口は半開き、指を

          なぜサツキとメイにトトロが見えるのか? ジブリで学ぶ心理臨床学①「となりのトトロ」

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          ジブリで学ぶ心理臨床学「超」入門 千尋が教えてくれる本当の自立とは?

          ジブリで学ぶ心理臨床学「超」入門 千尋が教えてくれる本当の自立とは?

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          「来ないでください」からはじまる被災地支援〜加害性と被害性の絡まりを読み解く〜

          (本稿は「横浜メンタルサービスネットワーク」からの依頼原稿に2021/8に加筆・修正を加えました。)  何も変わっていないのに、決定的に何かが違っている。それは10年前のあの感覚だ。空の抜けるような青さ、屋根に貼り付けられたブルーシート。2011年6月の福島県二本松市は青が眩しかった。そんな風に目を凝らしたのは放射線の不安からだったのだが、もちろん放射線は見えることはなく、風景はやけに青く澄んでいた。何かがおかしい、いつもと違う。間違い探しをするように保健師さんの運転する助

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          あれから10年、2020〜2021楢葉町から

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          こころの穴を覗きこむとき「絶望と死の臨床」−福島のこころの支援 現場ルポ⑨

           人のこころの中にはそれぞれ大なり小なりの「穴」が潜んでいる、と感じる。その穴は危険なため、触れないように、落ちないように、わたしたちは無意識にそれを避けながら生きている。当たり前の日常やお決まりのルーチンは、この穴に陥らないための私たちの努力の一つなのだ。  しかし、あるきっかけでその穴は露わになってしまう。覆いとなる日常が壊れた時、「徐々に」あるいは「ふと」そして「暴力的に否応なく」その穴が口を開ける。一度開いてしまうと、その穴の存在から逃れることは難しくなり、強い吸引

          こころの穴を覗きこむとき「絶望と死の臨床」−福島のこころの支援 現場ルポ⑨

          福島の遺恨と関東の罪悪感−フクシマのこころの支援 現場ルポ⑧−

           コロナで閉園していた東京ディズニーランドがついに再開というニュースが飛び込んできた。「しかし、密を避けるためエレクトリカルパレードなどのイベントは開催しないこととなっています。。。」  私は2011年の東日本大震災の年、まさにこのエレクトリカルパレードが再開したという明るいニュースを福島の住民がどんな思いで聞いたかを思い出す。 わたしらがこんな思いをしているときにエレクトリカルパレード?あの光の電力は福島からきてんだかんね!  放射線の恐怖に晒されていた渦中のA市の「放

          福島の遺恨と関東の罪悪感−フクシマのこころの支援 現場ルポ⑧−