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気ままに一首評_003

晩春の怒りは百合の蕾のよう、弾けて世界なんて割ったれ
「この林を抜けると花の名を一つ覚えている」千種創一

晩春にある怒りは百合の蕾のようで、
弾けて世界なんか割れてしまえ。
深読みせずに、そのままの意味をとっても良いだろう。

上の句は、晩春や百合からくる湿度のようなものを感じるが、下の句では、怒りと共にその湿度ある世界を弾き飛ばした先に、初夏のカラッとした気持ち良い風を想像できる。

”晩春”の”ば(b)”
”蕾”の”つ(t)”
”弾けて”の”て(t)”
”なんて”の”て(t)”
”ったれ”の”た(t)”
これらの破裂音が、下の句の"弾ける"・"割れる"の言葉のイメージとマッチしていて、言葉の音でも短歌を補強している。

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