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ずっとマイペース

想像して欲しい。
中学の野球部。新人戦初勝利。
ご褒美にと言って、監督が飯に連れて行ってくれるとのこと。
「焼肉がいいか、すき焼きがいいか?」と尋ねてくるが、自分は肉が好きな方ではない。
別に嫌いでもないんだけど。

さも、男だったら肉が喜ぶだろうとの口ぶりに疑問を抱えながら、
他の部員の圧倒的支持により、焼肉に決まる。
「今日はいくらでも食べていいけえの」と嬉しそうな監督。
嬉々として、もはや生焼けじゃねえか?みたいな肉を取り合うチームメイト。

その中、野菜だけをとり続け、一人で黙々と焼いて食べていたのが俺だった。
友人から言われた「マイペースだなあお前は」
「マイペース」という言葉との本質的な出会いだった。


村上春樹は、何かの本で、
「作品は健全な肉体から生まれる」みたいなことを言っていた。うろ覚え。
彼は、朝早くに起き、ランニングして、執筆し、夕方には仕事を終える。
といった自分のペースを絶対に崩さないらしい。
風邪もひかないんだって。へえ。

あれから10年以上経った今の俺も、朝昼晩を時間通りに食べるといった自分なりのペースを、
できれば守りたい側だ。
だからこそ、予定不調和を起こしたいという欲求が生まれるし、
破茶滅茶したい夜が生まれる。
と信じてる。

もちろん毎日、破茶滅茶やり続けるのも一種のペースだ。
ある時期、バーテンとして働いてたから、バーのマスターの心労ってのは何となく分かる。
どれだけ疲れていても、乗り気じゃなくても、
「流れ」がそうなったら、マスターは毎日ショットを一気に飲んでいた。
ワクワクできる夜を求め続けるために、それは彼なりのペースだったと思う。


世の中のペースと、自分のペースってのがある。
最近なんか、世間のペースがせかせかしてる気がする。
これは、自分のペースが遅いだけなのかもしれないし、
世間のペースが早いのかも。
別に正解はない。

バンドをやっていると色んなペースがあるなと感じる。
人と比べるし、やたらと焦る。
でも、焦ってる時こそ、自分が積み重ねてきたものを信じるようにしている。
あっちいってまた戻ってきて、遠回りしたってたまに思うが、
遠回りしないと、その道が遠回りだということにも気づけない。


「ずっとマイペース」ってのはある種の勇気です。
言い訳かもしれないし、信念かもしれない。
まあ、でもそんなことどうでもよくなるくらい、
マイペースに生きれたらそれが最高。


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