見出し画像

好きなもんが自分だ【高岩遼対談 part.2】

大好きなボーカリスト高岩遼さんとの対談、2本目。前回は、岩手県宮古と福岡県北九州というそれぞれ、決して都会ではない場所で生まれながら、どうやって色んな文化に触れてきたか、そしてどうやって今の自分が作られていったか、という内容でした。まだ読んでない人はチェックを!

今回は、好きな映画の話、ファッションの話。遼さんの話は、前回の人生と音楽の話もそうだけど、全てが緩やかに繋がっていく。彼は、人生の話も、音楽の話も、映画の話も、ファッションの話も、一つの連なりとして話す。記事を作る上で、こっちが勝手に区切ってるだけだ。

(遼さんが、ジャズ・ブルースに憧れて黒人になりたかったという話を受けて)

・俺たちの大好きな映画

高岩「映画の中では西部劇をずっと観てて。音楽とは別に、白人ヒーローみたいなものに憧れがあったんすけど。その流れで、マフィア物に触れるようになってきた時に、シナトラが俺の前に現れて、そうするとシチリア系とリンクしてくるから。『ゴッド・ファーザー』とか『アンタッチャブル』とかああいう映画を観ながら、このスタイルかっけえなって憧れがまた一つ広がりましたね。」

シチリア系 : イタリア・シチリア島の出身者、またはその末裔のこと。遼さんが大好きなシナトラは、シチリア系アメリカ人として知られている。シチリアは、マフィア発祥の地とも知られており、映画『ゴッド・ファーザー』では、ロケ地としてシチリアが使われてる他、シナトラのエピソードもシナリオに組み込まれている。ちなみに、俺が大好きな俳優アル・パチーノ(後述)もシチリア系アメリカ人。いつか行ってみたい場所の一つです。

岩渕「そっから、ああいうマフィア系の人が憧れのベースになったりしなかったんですか?真似してみたり。」

高岩「いや、真似したよ。その頃から、家族で盛岡のユニクロ行って、ちょっと高いベロアのやつ買って着たりしてたね。

岩渕「ユニクロかあ(笑) 遼さんって、それこそトラッドな格好良さがあるなと思っていて。そういうボーカリストって中々いないから。僕も、アル・パチーノとか憧れて、ジャケット着てオールバックでライブしてた時があったんすよ。でも、ある日、絶対ウケないからそういうのするなって言われて。

当時

高岩「するなって言われたんだ(笑) なんで?」

岩渕「あの頃、Arctic Monkeysのアレックス・ターナーもトラッドに決めるスタイルをやってたから、あれがすげえかっこいいなって思ってやりだしたんすけど、スタッフの中ではカッコいいのに勿体ないって言われましたね。」

みんな大好きArctic Monkeys。俺は『AM』が一番好き。Vo.アレックス・ターナーの新しい髪型は向こうでも賛否両論だった。

高岩「へえ、でもアラン・ドロンっぽいよね。今、俳優で『平成のアラン・ドロン』って言われてるやついるけど、そいつよりよっぽどアラン・ドロンっぽい。」

岩渕「誰だろ(笑) いやーこれからそう書こうかな。僕、70年代のアメリカ映画がピンポイントで好きなんすよ。だから、『真夜中のカーボーイ』とかめっちゃ好きなんすけど。」

『真夜中のカーボーイ』: 1969年のアメリカ映画、主演はジョン・ヴォイトとダスティン・ホフマン。67年『卒業』で坊ちゃん役を演じたダスティン・ホフマンがそのイメージから脱したく出演を決めたというエピソードは有名。これまた、俺の大好きな爆笑問題太田光さんが「大好きな映画」と語っている。この後、ラストシーンネタバレしちゃってるから今から観る人は気をつけて!

高岩「変だね。学生時代に出会いたかったね。

岩渕「マジでそうっすね。いたらめっちゃ話してましたね。あの映画、最後ダスティン・ホフマンが小便漏らして死ぬじゃないすか。あれがすげえカッケーって思うんすよね。」

高岩「そのセンスはかなり老けてるね。めちゃくちゃ素晴らしいと思う。

岩渕「でもなんだろうな、素直に好きなんですよね。多分、シャッター街が好きだから好きなんだと思ってて。あの時代の映画って、始まった瞬間荒廃してるじゃないすか。しかも、ヒーローもバリバリきめてる訳じゃなく、自分だってそこらにいるやつですよって感じで出てくる。で、ハッピーエンドにもならないじゃないすか。あの感じがすげえ人間っぽいなって思って、好きなんすよね。(そこにあった『タクシードライバー』のフィギュアを指差して) 『タクシードライバー』もすげえ好きですけど。あれ、高いんじゃないすか?」

高岩「いや高くないよ。中野にムービー系のおもちゃ集めてるところがあって。もう潰れちゃったんだけど。」

岩渕「へえ、めっちゃいいっすね。僕、ブロードウェイ『観覧舎』って映画のポスター屋さんがあるんすけど、そこでよく、ポスター買って部屋に貼ったりしてますね。」

高岩「知ってる知ってる。めっちゃいいね。これあげるよ。

(遼さん『ゴッド・ファーザー』のVHSを渡してくれる)

岩渕「マジすか!いいんすか。」

高岩「いいよ、思いっきり108円って書いてあるけど。それ剥がして。

岩渕「アルコールでなんとかします(笑) 『ゴッド・ファーザー』めっちゃ好きなんすよね。2が一番好きなんすけど。」

遼さんからいただいた『ゴッド・ファーザー』のVHS、値札は剥がした。

・何着てもいいじゃん

三宅「でも、さっきのトラッドじゃないけどさ、遼って音楽聴いたらそれに付随したファッションに興味持つとか、変化が早いよね。ヒップホップ聴いたらB-BOYの格好するし、ロックンロール聴いたら革ジャン着るしみたいに、全部同列に好きでいいじゃんって考え方じゃん。でも、特に日本のアーティストってさ、一個のスタイルにのめり込まなければダメみたいな固定観念持ってる人多いと思うんだよね。だから、そういうとこも崩してると思う。」

高岩「嬉しいですけどね。そういうこと言ってもらえるのは。でもそこには思想がちょっと絡んでて。日本人って、本来着物を着る民族じゃん。B-BOYやってますって言っても元は黒人だし、マフィアっぽい格好しても元はイタリア系なわけで、ロックやってますつっても元々暴れん坊なわけで、日本ってのは異文化のミクスチャーなわけじゃん。で、俺は多趣味だったので、それを全部表現した方が俺らしいってオチ。

三宅「本当はみんないろんな格好していいと思うんだよね。その日の気分とかさ。でもなんか、ギターロックの人はこういう格好とか、ヒップホップの人はこういう格好ってのがあるよね。」

岩渕「今、自分らの同世代のバンドとか、みんな同じ格好してますもん。すげえ同じ服ばっかり着てるというか。」

高岩「いいじゃんね。好きなの着れば。本当の正装は、山手線に乗ってるおじちゃんのクタクタのスーツか、和服だね。日本人のアイデンティティとしては、それだと思っているから俺は。」

岩渕「昼から引っ掛けてるおっちゃんが着てるやつとか、競艇にいる人が着てる服もそんな感じしますね。どこの球団かわかんない帽子とか(笑)ああいうの見るの好きなんですよね。」

高岩「全然好きじゃないっしょみたいなね。たまにLAの帽子被ってる人とかいるよね。」

三宅「服が回り回ってその人に辿り着いた感じいいよね。岩渕くん、ライブの時の格好とか決めてるの?」

岩渕「僕、ビースティーが好きで、あの時代のヒップホップのダルさみたいのは意識してますね。でも、オシャレに見られたいってのがあるから、自分の好きなものと今の雰囲気を混ぜたりしちゃいますね。好きなものばっかり走る自信もなかなかないというか。」

高岩「いいじゃん。私服で、スリーピースのセットアップ着れば。北九から出てきたんだ俺はつってポケットに手突っ込んで日本橋とか歩いたらいいじゃん。」

岩渕「確かに(笑)」


ということで、今回もお互いの好きなもの、ルーツについて語る回になりました。この対談を始める前に思っていた、「この人は自分と似たものを好きな人なんじゃないか」って話。やっぱりそうだったって思えたのが、映画の話をしてる時でした。遼さんの好きなものには流れがある。音楽や映画やファッションが全て地続きになっている。そして、正一さんも言ってたけど、好きになったものに対しての変化が早い。自分の好きになったものを表現するのに、躊躇がない。だから、一見やってることはバラバラに見えて、服装も音楽もその時々で違っていても、筋が通っているんだろう。「すき!」に勝るものはないから。その格好から、どれだけのバックグラウンドが、「好き」が滲み出てるか、ってのが「お洒落」の本質な気がしている。

俺もそうだ。工場の側の商店街に生まれてなかったら、ヒップホップもUSオルタナも、アメリカンニューシネマもマフィアものも好きにならなかったかもしれない。全ては繋がってんだなーって思うことが何度もある。日本のアーティストは、「ロックバンド」といえばこの格好というような枠に囚われすぎてるという話があったけど、それは実感することが何度もある。もっとみんないろんな格好していいはず。そして、俺も然り「ロックバンド」の呪縛にやられちまってる節がある。この対談を終えてからは、生まれ育ってきた人生のままに、もっと自由に服を着て、もっと自由に表現してやろうと思った。

次回は、遼さん対談最終回。誰でも感じる悔しさとどう向き合うかって話です。お楽しみに。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?