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「我に七難八苦を与えたまえ」と神に誓ったら、本当に七難八苦しかなかった件


今年を振り返って


I’llです。
今年の年収は、例年になくやばいです。
10ヵ月かけて描いた「インモラルスタディ」も大して売れてません。一年かけていくつか案件をやったギャラでやりくりしてきましたが、今年の総収入額は笑っちゃうレベルです。

振り返れば、今年の大半は悩みと向き合うことがテーマでした。人生の悩み、自分への悩み、作家としての悩み、作品に対する悩み、そういった内面性を誤魔化して通ることができませんでした。だからといって、正面からぶち当たってしまった感はあります。
戦国武将の山中鹿之助のように「我に七難八苦を与えたまえ」と神様に願ったわけではないですが、真の実力を手に入れるためなら、あらゆる苦労を覚悟したつもりです。しかし、こんなに七難八苦ばかりというのは想像以上で、人生の大半を怠けてきたツケをここで支払わされているな、という感じがします。

私が「売れない」理由

今年一番の反省点。この理由については、自分でもはっきりしています。

①知名度がゼロ
②突き抜けた実力がない
③作品傾向が凡庸
④販売戦略が皆無

①知名度がゼロ
私はXなどのSNSは一切やっていません。この屋号にしたのも2年ほど前です。名前はおろか、作風すら認知されていません。それもそのはず、私はほとんど自分のイラストをネット上に上げていません。
なぜ蕎麦屋がお客さんに蕎麦を食べさせないような方法を取っていたかと言うと、まだ自分の作風が確立していなかったからです。
今現在においても、模索中の部分はあります。今まで作風が確立していなかったのも側から見れば驚きでしょうが、自分のスタイルがしっくりくるまでは試行錯誤するしかなかったのです。
そんな状態でプロ名乗ってんなよ、と思われるかもしれませんが、それだけなあなあでやってこれた数年が、ただ単に運が良かったのでしょう。

②突き抜けた実力があるわけではない
知名度がないなら実力で殴るしかない、と私は考えていたわけですが、仕上がったものは客観的に見て、とりわけ画力が高いわけでないのは認めます。
ポッと出のクリエイターが出すには、あまりにインパクトに欠けるのです。だから品質だけを見て「おっ」と思わせられなければ、拡散されることがありません。

③作品傾向が凡庸
これは描いている最中も強く感じていたことで、ネームの段階で「こんなもんだろ」と思ってやり始めてしまいました。その企画に甘さがあったのは確かですし、何回か描き直す段階で趣旨を変更できなかったのもまずいです。
今の私ならもうちょっと尖った企画を立てると思いますが、描き始めがあまりに軽いところから始まった感覚があります。

④販売戦略が皆無
私は以前から無策でDL作品を出しても、コストに見合う分のリターンはあるため、戦略面でかなり軽く考えていました。
しかし、この2年くらいでだいぶ業界の雰囲気が変わったのか、脳死状態では箸にも掛からなくなったことを認識できていませんでした。
①と関連しますが、知名度やフォロワーからのブーストがあれば、初動でランクインしピックアップされ、勝ち筋に乗れる確率も上がります。しかし、ポッと出のよくわからない作品が注目を浴びるにはかなりの実力と運が必要で、その部分を甘く見た私の負けです。

総論として「見通しが甘かった」の一言に尽きます。自分がやりたくないことを避けた結果、戦略的に全く妥当なことをひとつもやってこなかったわけです。それではうまくいかなくてもしょうがないな、という話です。

反省はする、後悔はない。

ここまで反省点を挙げてきましたが、私にとって今の現状は「やっぱりそうだよなあ」という気持ちです。おおよそ予想通りというか、ちょっとは奇跡が起きたらな、というスケベ心はありましたが、掴めていない感覚はやはり正しかったな、と思います。
甘いところから入ったせいで、最後まで突き抜けたことができなかったのは最大の反省点です。ただ、足りなかったのは認めますが、私が根本的に間違っているとは思えません。

この一年は、私が人間としての成長にかけた時間だったように思います。何の作品を作りたいのか、どんな作風でありたいのか、どういう作家になりたいのか、それを見つけるための時間だったと言っても過言ではありません。
だから今、こうして「何が悪かった」と潔く認めることができます。何をするべきかが明確だからこそ、試行錯誤のムダな過程がわかるのです。
確かに結果は振いませんが、逆に言えば課題がはっきり見えたということです。強弁するつもりはないですが、「今のやり方では通用しない」という証明を得ることは、万が一うまくいってしまうよりも幸運であると言えます。

10ヵ月かけた作品がうまく軌道に乗らないのは、早い時期からわかっていました。落ち込みはしましたが、精神衛生のためにすぐ次のことを考えるようにしました。
次回作は今、線画の段階まで進んでいます。ただ、やはり認知度がゼロの状態で立ち回るのはかなり厳しいです。
ここ数年の業界の雰囲気も、SNSから離れたせいで掴めていなかったのは事実です。ただ実際フォロワーと売り上げの比率は5〜10%の連動しかないと私は考えているので、万垢でない限りは誤差の範囲です。時代の流れを見ても、新規の作家がSNSの恩恵に預かれるのはすでに厳しいのではないでしょうか。
これまでのセオリーが通用しなくなっています。だからこそ、新しい戦略が必要なのだと思います。

知名度を甘く見てはいけない

かなり正直な話をしますと、絵描きは特にSNSをやっていないことのハンデは大きいです。フォロワーの購入率ではさほどでもないですが、作風や名前を知られているのと知られていないのでは、かなりの差があります。
私の問題は、その逆張りのタイミングがあまりに早すぎたせいで、まだブームがあるにも関わらず早々に切ってしまったことです。私はこうなると確信したら、すぐに結論を出して行動してしまう性格なので、フライングしやすいのです。結果的に間違っていないことは多いんですが、まだ美味しい段階で捨ててしまうので、一番旨い部分にありつけず終わることもしばしばです。
ただ、それは今から新規参入する若い作家と同じ条件なので、ここからどう立ち回るのかだと思います。
SNSをやらないというのは、ある意味縛りプレイではあるのですが、逆を言えば王道プレイしかできないというのもおかしな話です。
私は、どうすれば知名度を上げられるか、という戦略は作家性と強く結びついていると思いますし、突き抜けた作家性がなければ生き残れない世界でもあると思います。
特に生成AI登場後の人々の価値観の変化を侮ってはいけないと思いますし、クオリティへの水準が跳ね上がる要因は否定できません。ある意味、既存の戦略が地盤レベルで変わり始めたとも言えます。
その中で、無策は致命傷になり得ますし、それに気づけたのは逆に良かったのかもしれません。
いずれにしろ、「この人にしかできない」と思わせるような独自性こそが鍵で、クオリティの面では何十年も第一線で戦ってきたプロや生成AIには敵いませんし、そこをどう掻い潜るかだと思います。
まあ、ここまでは理論の話で「本当にそれができんの?」ってのが肝ですが、私はそのための準備を一年がかりでやってきたというのが本題なのです。
この一年は仮説を立てては実践し、実践して間違えたら理論を立て直し、というのを延々とやってきました。本音を言うともう少し要領良くできると思ってましたが、想像以上につまずきました。
ただ、今の私はこの一年での成長を実感しています。聖闘士ではないですが「同じ技は喰らわん」と言う気持ちです。

2024年をどう生き残るか?

今年、まともにビジネスをしなかった反省や因果応報はそれなりにあるのですが、私が残りの人生を絵描きとして生きるためには、この修行期間はどうしても避けられなかったと思います。
それくらい私は普通に絵を描いても才能の芽はないですし、絵を描かない人生の方が悲惨だと思うので、何とかしがみつく以外の道がないからです。
これから20年30年、生存戦略を逆算して考えた時に、2.3年のスパンで考えていたらたぶん持たないと思いました。だから1年や2年は犠牲にしても、地盤固めの前の基礎を何とかしなければと考えました。
自称プロでありながら、勉強段階に戻ったことが心苦しいのは確かですが、やはり日本はコロナ禍を境に世の中の状況も変わってしまいました。

2024年は、さらに人類史に残るパラダイムシフトが加速すると思います。その中で、エンタメの本質的な脆さや底力が見えてくるはずです。
私はそんな過酷な世界を渡っていこうというのですから、生半可な考えではすぐに溺れます。だからこそ思想や方針を確立し、自分だけの武器を見つける必要がありました。
今の私にはそれがある、と断言できます。
王道のセオリーは確かにあるのですが、私の思想に合うクレバーなやり方が別にあるはずで、その糸口はオウンドメディアの確立ではないかな、というのが私の結論です。
ですから、これからとりあえずそれを実践してみて考える、という風に考えています。
2023年は言ってみれば理論の確立のために費やした一年であり、来年は実践の年にしたいです。そのためには、基本を甘く見ないことだな、というのが今年最大の教訓です。

なんか本当に、今年は自律神経をずっと患ってて苦しかったですし、中学時代を一年に凝縮したくらいの精神的変動がありました。精神と時の部屋にでもいるんじゃないかというくらい長かったです。
来年は楽をしたいとは思いませんが、やはり何とか跳ねたいところです。別に評価はなくてもいいですが、自分の頑張りを認めてほしいというのは、決して煩悩ではないと思います。
今から始める色々なことにワクワクしています。結果が全てではないと思いますし、それでも結果はなくてはなりませんし、どう転がるかに今年一年の成果が出るのかもしれません。

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