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北伊豆古道を歩く〜西浦江梨ー大瀬崎編〜

2021年10月14日。15時 ゴールの大瀬崎に車を停めて、乗り合いジャンボタクシー「ふじみgo!」に乗って東海バスの終点・西浦江梨へやって来た。

西浦江梨(にしうらえなし)

今回は西浦江梨ー大瀬崎を歩く。まず、今まで時計回りに歩いてきたのに、なぜ反時計回りで歩くのかを説明しなければならない。

現代の地図では、井田から大瀬崎は県道17号線によって道は繋がっているが、西浦江梨への道は存在しない。

Googleマップより

ところが、明治23年の大日本帝国陸地測量部の地図によると、井田から大瀬崎へ繋がる道はない。井田から西浦江梨へ、大瀬崎へ繋がる道を確認することができる。

明治22年大日本帝国測量図より

それを裏付けるように、伊豆峯次第の記述を見ると、井田村(井田)から江梨邑(西浦江梨)を巡り、キャ(梵字)尾瀬大明神(大瀬神社)へと歩いているのだ。

出典:伊豆峯次第

というわけで、今回は西浦江梨ー大瀬崎 、約3.5kmを踏査する。すっかり季節は移ろいで、ススキが秋の風に揺られている。

10月になると西浦、内浦地域では、県道沿いに無人のみかん販売が並びはじめる。この時期、一番早いのは旬の先取り極早生みかん。地元では甘くて評判の、ゆら早生みかんも棚に並びはじめた。

このあたりの山道はほとんどが私道となっていて、勝手に入ることは出来ない。そもそも西浦江梨間は現代地図と古地図を見比べ、現地調査をしても古道を見つける出来なかった。

「静岡県の3次元点群データ『VIRTUAL SHIZUOKA』で探せるのでは。」と助言をいただいていたので、点群データを活用すればこのコースに限らず埋もれてしまった道を発見できるかも。期待が膨らむ。

地元で評判のみかんスタンドはここ。 裏山には大きなみかん園が一面に広がっている。今日は極早生日南という品種。味が濃く、甘く、そして安い!

大瀬崎(おせざき)

神秘と自然と信仰の岬・大瀬崎と駿河湾を見下ろせるビュースポット。お天気に恵まれれば富士山も見えるはずだが、今日は雲に覆われている。駐車場もあるスペースなので、眺望を楽しみながらひと休憩することにした。

500mほど県道を歩くと、右へ下りていくのが大瀬崎へ下りていく道。

道なりに下りると駐車場へたどり着くが、途中を左折する。

ここで西伊豆歩道 大瀬崎コースと合流。

整備された道を案内看板に従って、道なりに峯道を下っていく。大瀬崎には来たことあるけど、遊歩道からのアプローチは初めて。

大瀬崎コースの起終点に到着。駿河湾に800mほど飛び出した大瀬崎は、海岸沿いの海流によって運ばれた岩や土砂が帯状にたまって出来た砂嘴(さし)地形。

天然の堤防のように伸びた砂嘴に守られた穏やかな海は、年間8万人超のダイバーが訪れるという関東屈指のダイビングの聖地だ。

最大水深2500mの日本一深い駿河湾に面しているので、海の世界へ行くと、多種多様な生態に出会うことができるという。

運が良ければ、マンタ、ジンベエザメ、ハンマーヘッド、ザトウクジラなど大型種、最近だとリュウグウノツカイが現れたというから大瀬崎のポテンシャルには驚くばかり。

16時 伊豆峯次第の216番目のチェックポイント・大瀬神社に到着。正式名称は引手力命神社。

拝殿に施された、繊細さと力強さを併せ持つ彫刻が印象的。 現在の社殿は火災により昭和14年(1939)に再建されたのだが、大瀬神社再建に携わった職人の技術の高さが伺える。

拝殿の頭貫上部には、天狗の彫刻を確認することができる。また、屋根の上にはカラス天狗のような造型。大瀬崎には天狗信仰があると聞いたことあるが、定かではない。

御祭神である引手力命(ひきてちから)は、白鳳13年(684)の大地震が起き、土佐国で多くの土地が海中に没し、その後突如として海中より隆起した島々を力づくで引っ張ってきて島を造ったとされる伝説から、その神霊を感じ祀られているそう。

大天狗が持つと言われる羽団扇

天の岩戸をぶん投げたという天手力男命(あめのたぢからお)と名前が似ているが、その関連については触れられていない。

また、毎年4月4日には大漁と海の安全を祈願する例大祭が行われる。男たちが女装して踊る奇祭・大瀬まつりは、天の岩戸で踊った天鈿女命(あめのうずめ)を連想させる。

山を歩くために修験者が履いていたという天狗(一本歯)下駄

伊豆の七不思議にも数えられる大瀬の神池(かみいけ)へ。

岬の先端にある神池は、海に囲まれながら淡水であるという不思議な池。この禊の池になぜ淡水が溜まるのか、未だにわかっていないという。

ビャクシン樹林の遊歩道を歩く。大瀬崎のビャクシン樹林は、現在130本が自生しており、自然のまま群生しているところは他に例がないそうだ。

なかには推定樹齢1000年を超える巨木もあり、厳しい自然環境や何度もの津波に耐えてきたのだろう。御神木に限らず、どのビャクシンも美しくも、力強く、迫力ある表情をしている。

印象的なビャクシンに出会うのは南伊豆の吉田神社以来かな。

御神木の夫婦ビャクシン。周囲7メートル、推定樹齢1500年以上という随一の大木だ。古くから大瀬の岬を航行する漁船の目印となり、海上安全を守護していたのだろう。堂々としたお姿に畏敬の念を抱く。

帰り道になると、いつの間にか富士山は顔を見せはじめていた。

次の道はこちら↓続けて読むと伊豆半島を一周します。


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