見出し画像

南伊豆古道を歩く 〜下田公園ー春日山遊歩道編〜

2022年4月13日。伊豆半島は厚い曇天に覆われているが、太平洋上は晴れ間が見える。南伊豆エリアに入る前には、高確率で展望の良い尾ヶ崎ウイングに立ち寄る。今日も良い天気に恵まれそうだ。

今日は大島、利島、鵜渡根島、新島、式根島、神津島が見える。柔らかな風が吹いて、雲は太平洋に流れ、晴れ間が広がっていく。祝福の一日を受け取った。

本日から南伊豆エリアの古道の調査を開始する。2021年6月から調査を始め、9-10月の2ヶ月で東伊豆エリアは東浦路(ひがしうらじ)と呼ばれる下田まで続く古道を踏破した。東浦路までは先人による調査がいくつか存在するので辿れば良かったのだけど、ここからはいよいよ未開拓の道だ。

前回のゴール地点・下田の海善寺から古道を南下、長楽寺を目指しペリーロードを歩く。

なぜ長楽寺を目指すのか。それは伊豆半島を一周する修行ルートが書かれている『伊豆峯次第』に立ち寄る場所の記載があるからだ。かつて伊豆の修験者たちが祈りを捧げた拝所・行場・修験窟の名称が書かれているのだけど、あくまでわかるのは座標点までだ。道はわからない。

道は目的に合わせて作られてるので、修験者の道と生活の道が必ずしも一致する訳ではないが、座標点を繋げるように伊豆半島を一周する道を令和に蘇らせる。

座標点は國學院大学・深澤太郎先生による『伊豆修験の考古学的研究』の研究成果報告書に基づいて繋げている。

伊豆修験の考古学的研究-基礎的史資料の再検証と「伊豆峯」の踏査-より

下田公園(城山公園)

長楽寺まで歩くと、下田公園へと繋げることができる。かつての下田城だ。下田城は後北条氏が豊臣秀吉との対決に備え、南伊豆防衛の拠点として築城した伊豆半島でも最大規模の山城。道なりに緑の点線の遊歩道を歩くことにした。

下田公園は、春にはツツジ、初夏にはアジサイ、冬にはツバキが満開となる自然公園だ。城址らしく小高い丘の上にあり、下田港が一望できる。

下田公園・遠景下田公園の植物はアジサイやツバキだけではない。約8万坪にも及ぶ広大な敷地には、たくさんの緑が溢れ、多くの植物が自生している。

途中、少し脇道を外れて空堀を見にいく。伊豆半島の城址を巡るようになったので俄然興味がある。

およそ700mの長大な空堀。城址は400年を経過しているが、良好な残存状態。写真では伝わらないな。

寄り道した空堀から戻り少し進むと犬走島が見える展望台へ。更に南下してお茶ヶ崎展望台へ向かうと賑やかな音楽が聞こえてきた。時計を見ると9時。音楽の正体は下田水族館、丁度、開館したようだ。

春日山遊歩道

ここからは緩やかに下り坂。下田海中水族館の駐車場に出てきた。このまま海沿いに和歌の浦遊歩道へと歩こうと思っていたのだが、向かいの山に登っていく石階段が見える。

最初の閃きが大切だ。Googleの地図では道がないけど、この道を歩くことにした。

整備の手を入れ過ぎず、程よい遊歩道だ。緩やかに登っていくとまもなく、視界が開けてきた。

絶景ポイントにベンチが用意されていた。お天気も良くあまりにも気持ちが良いので、ここで休憩を取ることにした。

眼下には海岸線を辿る和歌の浦遊歩道が見える。フランスのミシュラングリーンガイドにも掲載されている風光明媚な2.5Kmだ。残念ながら現在は、落石による通行止めになっている。(2022年4月) 

隣のベンチにやってきた散歩に来ていたご夫婦とご挨拶。道中、出会う人との会話は道歩きの醍醐味の一つだ。Webで検索しても出てこない、地域の歴史や文化を知ったりすることができる。表面的な知識は座学で学べるが、感情揺さぶる生きている情報は人の営みの中にある。

道なりに椿の森を抜け、下に舗装道路が見える橋を渡り、もう一つ先の山へ。

橋を渡ると柵が見えてきた。しまった、通行止めか。柵につけられた看板を見てみると「通行可」となっていた。どうやらこの先は害獣対策の電気柵で覆われているようだ。

Googleマップには掲載がない道の正体は春日山遊歩道だった。旧道に繋げたいので、下田小学校の裏手を通って折戸を目指すことにした。

春日山遊歩道は急峻な道が続く。やや健脚向けの遊歩道だ。

道中、番号のついた観音が現れた。伊豆半島には三十三観音巡れる場所が多いけど春日山遊歩道にも。アップダウンを繰り返し山を登ると、山頂には三十三番観音が待っていた。

また道中には何箇所か、石を切り出した後の穴が残されている。凝灰岩の石丁場跡であり、洞の穴にはやはり石仏が鎮座していた。

山を降って行き、折戸からGoogleマップにも掲載あるアスファルトの道に辿り着いた。ここから南伊豆へ行く生活の道は南街道と呼ばれる。その場合は突き当たりを左折、峠は切り通しとなっていて鍋田へと繋がっている。

しかし、今回は伊豆峯次第にある次に立ち寄る拝所を目指すので右折。二股の分かれ道は、更に細くなる右の道を下る。

風情のある家並みを抜けていく。

下田小学校の前を通り、下田開国博物館の前を通り県道119号線を目指す。

子浦まで繋がっている下田南伊豆線・県道119号線にたどり着いたところで本日はここまで。

続きの道はこちら

__________________________________
ここからはおまけ↓

午後からは南伊豆町史編纂室に立ち寄り、白水城址発掘調査の出土品の確認や、古銭の拓本取りなど。。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?