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台湾での仕事の思い出

台湾は、やたらとツタの絡まった街路樹や、セブンイレブンの煮卵の匂い、ドブ臭い川が印象的でしたねえ。台湾をはじめて訪れたのは2006年でありました。私は機械設計の部署にうつったばかりの頃でした。仕事の要領はおろか、図面も読めない、英語も中国語もできない中で、それでもなんとかして仕事をしないといかんという意識も低かったので、随分と数多くの皆様にご迷惑をおかけしてまして、毎日叱られて過ごしておりました。
この出張中、台湾人のお客様から夜に呼び出されて「機械がぶっ壊れているからなんとかしろ!」とものすごい剣幕で怒られたことがありました。故障箇所はおろか、何をするかもわかんない機械に対してなす術もなく、一応考えたフリをしてますと、客の怒りが加速度的に大きくなっていきます。困る私と怯える通訳殿。日本に電話してもみんな帰ってしまっています。頼るツテがない!
やがて意を決した私は、工具箱を取りに行き、「ちょっと調べさせてくれ」と通訳してもらって機械のカバーを開け、10分ほど内部を調整したフリをして再度カバーを取り付け、「もう一度動かしてみてくれないか」と客に伝えました。再起動の段取りに取り掛かる客。通訳殿が心配そうに小声で「竜ちゃん、わかったのか?」と聞くので、「全然わからん」とサッパリ答えると目を見開いて絶句しておった。暫くしますと、猛ダッシュで駆け込んでくる客。もはやこれまでかと腹をくくると、「スゴイぞ!どうやって直した!」と堅い握手をされました。私は素知らぬ顔で「ええ、まあ」といって逃げるように帰ったのであります。奇跡としか言いようがない。
あの時、神様というのは本当にいるのだと心底思いました。翌朝は宿の近くの神社にお参りに行き、これ以上ないくらい長く祈りを捧げて感謝の気持ちをお伝えしました。
6年ぶりの台湾出張でそのときの通訳殿と久しぶりの再開できましたので、この話を思い出したのです。当時を振り返り、通訳殿は「あれは驚いたよ。信じられない。ほんとうにヒドイ」と言ってました。以後、私が仕事を運でなんとかしているのは、ずっと変わってないという気もします。改めて反省。もっと勉強しないといけないですね。

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