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オイディプスとアンジェラ Ⅹ


アン  よくお休みになられましたか?
ディプ ああ 少し夢を視たが・・・深く眠むることができたありがとう
ア ン  さて どうしましょうか?
   これはテーバイを去る時に旅袋に忍ばせておいた異国の打楽器
   <摺鉦>という物です これはこのようにして音を鳴らせます
ア ン  左手に円形の鉦鉢を持ち右手に鹿の角の付いたバチ(撞木)で
             叩く音と擦って出す音をディプに聴かせる
ディプ 舞拍子に良さそうな楽器だな
ア ン  そうですね・・・どうぞ打ってみて下さい

ディプ アンより手渡しされた摺鉦を両手に持って打ち鳴らす
ディプ さほどに重さがないので十分踊りながら打てる
アン  はい
ディプ 笛と鉦と・・・う~むもう一つ楽器が欲しいなぁ
アン  やはり弦楽器ですかね 
ディプ 兎も角もこれで何処まで出来るかやってみよう

果樹園をさらに上へと登るり、鳥の翼のようの形で緩やかな傾斜の岩場を見つけた  そこからは ロードス島からエーゲ海が一望できる処でもあった

アン  ここが宜しかろうと
ディプ 視ることは能わぬが此処は光と風が舞っている・・・踊るには
               良き処だ
アン  では、私が笛を奏でますので・・・自由に舞い踊りて下さい
ディプ わかった 暫し笛を吹き続けてくれ

アンが奏でる笛の旋律をオイディプスは暫し両手を拡げ その場に佇み楽曲の世界に集中して・・・この場の自然が渦を巻き自身の身体の奥底にある感覚が意識を飛び越えて静から動へと至るバイブレーションが発動するのを待った

そして 何かが弾けた 笛の旋律に同調するように軆󠄁はゆっくりと動きだした自身の肉体を鼓舞するように自然と身体が動いた

オイディプス独白:もう少しすれば南中時になる・・・その時わたしの真上に太陽の光が濯ぐ光透波(ことは)は私の心身を浄化してくれる 嗚呼 感謝 
オイディプスは言い知れぬ歓喜のなか踊り続けた・・・やがて 自然と力が脱力され静かに軆󠄁を横たえた・・・その時を待っていたように何処からか楽器リラの奏でる旋律が流れてきた

アンジェラは驚いた・・・この旋律は聴いたことがある・・・まさか遠い妹カリス?
高台の平場に続く小道を一人の少女がリラを奏でながら歩いて来るのをアンジェラは驚きと喜びの入り交じった顔で待った

                           Ⅺに続く


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